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医療現場に影響力を持つ診療指針の策定に携わる医学部教授らの多くが、治療薬メーカーから多額の寄付金を受け取っていることがわかった。研究者として中立性や公正さは保てるのか。(医療情報部 田村良彦、館林牧子、科学部 高田真之、増田弘治、本文記事1面)
寄付金額が特に多かったのは、メタポリックシンドロームや、高コレステロールなどの診療指針を作成した医師たち。これらの診療指針には「基準値が低く、健康な人も病人扱いされて薬物治療の対象になる可能性がある」など、妥当性に疑問の声が上がっている。
高コレステロールの診断基準値は、日本動脈硬化学会の指針で従来、「総コレステロール値220以上」と、米国の「240以上」より低く設定されていた。240以上の場合に比べ、220以上では患者数が2倍になり、浜崎智仁・富山大医学部教授は「中高年女性は半数が該当する。不必要に患者を増やし、薬の使い過ぎを招いている」と指摘する。学会は昨年、指針を改定し、総コレステロール値を診断基準から外し、「悪玉コレステロール」とも言われるLDLコレステロール値による基準を発表した。だが、浜崎教授は「総コレステロールの水準を置き換えた数値で、米国より基準が厳しい事情は変わっていない」と言う。
内臓に脂肪がたまるメタポリックシンドロームの診断基準も、基準の一つである腹囲が男性で「85cm以上」と、米国の「102cm超」などに比べて厳しい。
大柿博一・東海大医学部教授は「腹囲85cmは日本人男性のほぼ平均値で、腹囲85〜90cmの男性が最も死亡率が低い、とのデータがある。この基準で健診が行われると、多くの人が医療機関の受診を勧められ、健康な人に薬物治療が行われる危険が高い」と話す。
これに対し、メタポリックシンドロームの診断基準をまとめた松沢佑次・大阪大名誉教授は「基準は、生活習慣の改善によって健康状態を良くするためのもので、むしろ薬漬けの人を減らせる」と反論する。
企業から大学への寄付金は、大学の研究成果の実用化を促す「大学等技術移転促進法」が施行された1998年以降、増加した。
文部科学省と厚生労働省の医学分野への科学研究費のうち、2006年度に国公立大学に配分されたのは約380億円。これに対し、企業などからの寄付金総額は約262億円(本紙調査)にのぼる。
医師と製薬企業の金銭関係が問題になったのは、インフルェンザ治療薬「タミフル」を巡ってだ。
タミフルの服用後、転落死などの異常行動が相次ぎ、厚労省研究班が薬との因果関係を調査した。ところが、研究班の教授のうち3人が、製造販売元の企業から計7600万円の寄付金を受け取っていたことが分かり、調査の公正さを保つため、厚労省は3人を研究班から外した。
厚労省はその後、新薬の安全性を検討する国の審議会の委員について、今年5月から関係企業1社当たり500万円超の寄付を受けた場合、審議と議決に参加できないことを決めた。
だが、薬害を監視する医薬ビジランスセンターの浜六郎理事長は「金額などの判断基準が甘く、情報公開も不十分」と批判する。
文科省は、寄付金の受領額を教官が大学に届け出るなどの対応を求めたが、指針を作った国立大学・研究機関は65%(昨年4月)にとどまる。