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割り箸訴訟と医療の不確実性 (日々是よろずER診療) 不確実なものを不確実として受け入れない人たち
http://www.asyura2.com/07/iryo01/msg/440.html
投稿者 どっちだ 日時 2008 年 2 月 16 日 13:57:02: Neh0eMBXBwlZk
 

---日々是よろずER診療 から転載-------------------------------------------------
http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/20080216;jsessionid=4A167EF4CCBA365ED672F7C35B2B0931

割り箸訴訟と医療の不確実性 [医療記事]  

2月12日、話題の割り箸死亡事故の賠償訴訟の民事判決がありました。結果は、医師側勝訴でした。刑事事件の無罪判決に引き続き、民事でも、医師無責という裁判官の判断です。

一部のメディアは、相変わらず、こんな遺族寄りの報道をしています。 

===TBSの報道=============================================================
TBSの報道をごらんいただきたい。こちらです。(魚拓)
http://news.tbs.co.jp/20080212/newseye/tbs_newseye3778925.html
http://s01.megalodon.jp/2008-0213-0019-22/news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3778925.html

割り箸死亡事故・賠償訴訟、遺族敗訴

両親の思いは届きませんでした。東京・杉並区で喉に割り箸が刺さり、死亡した男の子の両親が、「診察が不十分だった」などとして病院側に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は両親の訴えを退けました。杉野隼三ちゃん(当時3)。9年前、夏祭りで買ったわたあめの割りばしをくわえたまま転倒、刺さった割り箸は脳に達しました。ところが、隼三ちゃんが運ばれた杏林大病院の担当医師は、消毒薬を塗るなどしただけで帰宅させました。その後、容体が急変。隼三ちゃんは、4歳9か月の短い命を閉じました。担当医師は起訴されました。刑事裁判の一審判決では「診察や検査が十分ではなかった」と医師の過失が認められましたが、死亡との因果関係は認められず、無罪が言い渡されました。「事故の直前の七夕の時に『正義の味方になって悪と戦いたい』と(短冊に)書いて欲しいと言われ、それが私たちに託された願いだと思っているんです」(隼三ちゃんの母・杉野文栄さん)事故から1年余り、両親は「不十分な診察で死亡させた」などとして、病院側と担当医師を相手取り、およそ9000万円を求める民事訴訟を起こしました。そして判決で東京地裁は、両親の訴えを退けました。「当時の医療水準やけがの状態などから医師の過失は認められず、診察と死亡に因果関係は認められない」という理由でした。無罪だったものの医師の過失は認めた刑事裁判から後退したとも言える判断。「隼三にかける言葉さえ思い浮かびませんでした」(母・杉野文栄さん)両親は控訴を決めました。病院側は「主張が認められ、ほっとしています。しかし、改めてご冥福をお祈り致します」とコメントしています。(12日20:46)

 注)  青字 事実関係  赤字 遺族側  緑字 病院側
================================================================================


なぜ、一部のメディアは、こんな遺族側に一方的に寄り添った感情的な報道をいまだに垂れ流すのでしょうか? 確かに商業主義があるのかもしれません。それだけでしょうか?

小松秀樹先生の、医療の限界より一文を引用します。(P34〜36)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106102188/sr=8-1/qid=1203121383/ref=olp_product_details?ie=UTF8&me=&qid=1203121383&sr=8-1&seller=
=====医療の限界===============================================================

不確実性をめぐる専門家と非専門家の齟齬は、医療に限らず、多くの分野で認められます。慶応大学商学部教授の権丈善一氏によると、例えば年金問題でも、不確実なものを不確実として受け入れない人たちが適切な議論の妨げになっているということです。
(中略)
人は不確実なものを不確実なまま引き受ける際に不安を感じます。この不安に耐えられないことが、攻撃行動の原因になっているのではないでしょうか。
===============================================================================


報道を作成する人たちの多くは、今働き盛りの健康な人たちでしょう。自分達の親も子どもも元気でいらしている方がきっと多いことでしょう。そんな中、自分達の日常生活においては、医療とは無縁の人が多いのではないでしょうか?

便利な日常生活、高収入、そして、自分達が世間を動かせるという万能感・・・・ 
メディア業界の中で、ある程度の権限を有する立場の人は、こんな感じかな?と私はイメージします。

つまり、彼らは、物事の不確実性を経験し、自覚する機会に乏しい環境にあるのではないかということです。

だから、自分達の生活の中に不確実なものがあるという認識の違いにおいて、私達医療者と一部の報道関係者との間には、天と地ほどの大きな開きがあるのでしょうね。

それは、物事の不確実性を世間に訴えようとする報道に私達は殆んど出会わないという事実からも推定できることです。

こういう背景にある人たちであるからこそ、上記のような報道が自然と出来上がってしまうのであろうと私は思います。

私は、このブログを通して、「報道が伝えないこと」を伝えたいという思いがあります。

この割り箸訴訟を通して、皆さん方に、改めて、「医療の不確実性」というものを、一人一人に自ら考えてほしいと思います。

医療の不確実性を考えるに当たり、

「私達の医療は、天気予報のようなもの、台風の進路を予測したり、雨の確率を考えたり・・・・

とイメージしてみたらどうでしょうか? 私が日常診療でよく言っている台詞です。

さらに、具体的に考えやすくするために症例を提示しましょう。 まったくのフィクションであり、自分の経験症例ではありません

症例 6歳 男児 

夏休みにある避暑地へ家族旅行した。そばの湖で水泳をして楽しんだという。その4日後、この子は頭痛と発熱を訴えた。「風邪と疲れでしょう」といって小児科開業医は様子をみるように親に言った。この子は、その後昏睡状態となり死亡した。 発症からわずか一週間後の出来事であった。 両親は、小児科医の初期対応が悪かったのではないかと思い、不信で不信でどうしようもなくなり、弁護士事務所を訪れるに至った。

さあ、皆さんは、どんなことを考えますか?
医者は医者の立場から、一般の方は、一般の立場から、それぞれの立場で考えてみてください。
病名を考えるだけじゃないんです。もし、これが現実だったら、自分はあきらめられるかな?とかそんなことでもいいのです。


(2月16日 記)
2008-02-16 08:39


コメント

まったくのフィクションとなると、答えが無いんでアレですが、ウイルスか細菌による髄膜炎・脳症や、ライ症候群をまずは考えますか。
そのほか、意識障害をきたす疾患はすべて鑑別に上がりますね。小児の場合でも、アイウエオチップスを唱えればいいのかな?

先日PALSを受講して、すこしだけ、小児の診察がどんな感じか触れることができました。コミュニケーションが取りにくい点、先入観にとらわれず、JATECのように全身を系統的に診るのが大切っぽいですね。
by moto (2008-02-16 10:45)


まったくのフィクションですが、具体的な疾患を想定を出来るように仕込んではありますよ。

・・・・であるから・・・・という疾患を想定し対処すべきであったのに、それをなしていない以上、医師は謝罪し、賠償すべきだ

といわれるかな。
by なんちゃって救急医 (2008-02-16 11:04)
case-report-by-ERP

私の言いたいことは、今回の割り箸事例は、この想定疾患を的確に診断し、救命できなかたことと同列じゃないですかということです。

そのことを多くの人にわかってほしいし、メディアは、その大量情報伝達能力を、そういうことを分からせるために使ってほしいという切に願う次第です。
by なんちゃって救急医 (2008-02-16 11:18)

おいら元コメなので一般人と医師の中間みたいなもんですが、「髄膜炎や脳炎起こしてあっと言う間に亡くなりました」っていう経過なら、頭ではまあ理解できます。ただ感情的なところまで含めて納得できるかは自信なし。

推測ではない死因をきちんと知りたいとは思うけど、担当医もしょげてるだろう状況で、剖検とか自分からお願いできるもんかなあ。当然親戚一同からは止められるだろうし。
(ちなみにおいらは独身・子無)

でも
>不信で不信でどうしようもなくなり、弁護士事務所を訪れるに至った。
これだけはありえん。まずは担当医・初診医の意見聞いてからですよね。最初からケンカ腰はいかん。
by ななし (2008-02-16 11:19)

連投ですいませんが、先生のコメント見てたら想定疾患は超レアケースの感染症のような気がしてきました。と言っても具体的なものは全然思いつきませんけど。
by ななし (2008-02-16 11:28)

はじめまして。私は親側の立場での意見なのですが、
子供が体調悪い、いつもと違うなどのときは親自身、ちゃんと説明がおこなえる状態でない場合が多いと思います。医師側からの質問で気づかされることが多いと思います。
このケースの場合、「時には・・・な場合もあるので子供の状態を観察して(観察するポイントを教える)変化があるようだったら・・・のように対応するように。」といっていただけたら、親も何らかの対応ができたかもしれない。
そして、死に至った病状に対しての理解も早くできるのではないでしょうか。
by フーパパ (2008-02-16 12:22)

普段なら、ウイルス性髄膜炎とか、ウイルス性心筋炎あたり考えますが、今日は難問のようです。キーワードは、“湖で水泳を楽しんだ” ですね。小児・熱発・淡水 で検索かけると、いろいろ珍しい感染症がでてきます。世界各国、いろいろ、あるようです。避暑地は、日本国内 とすると、(わたしは診たこともありませんが)小児レプトスピラ症 っていうのがあります。いかがでしょう? こうした疾患まで想定しろと言われても、一般的な医療者には到底無理です。また、“湖で水泳を楽しんだ” という病歴も後だしジャンケンではじめて意味をもちますから。
by 防衛医療隊 (2008-02-16 12:54)

とびきり珍しい地雷疾患なら、アメーバ性髄膜脳炎かな。
http://homepage2.ni fty.com/treknz/amoeb a_2.html
検索して発見しましたが、この疾患の存在は全く知りませんでした。
by starpoint (2008-02-16 13:44)

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