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ダイヤモンド・オンライン「週刊・上杉隆」
NHKインサイダー疑惑は氷山の一角。他にも“大物犯人”が!
http://diamond.jp/series/uesugi/10014/
2008年01月24日 上杉隆(ジャーナリスト)
NHKインサイダー疑惑は氷山の一角。他にも“大物犯人”が!
「私の後輩たちがとんでもないことをしてしまいました。本当に申し訳ありません」
経済評論家の水城武彦氏は、生放送の冒頭でこう語ると深々と頭を下げた。筆者のキャスターを務める生放送番組、『ニュースの深層』(朝日ニュースター)でのことだった。
水城氏は、NHK経済部記者から解説委員(経済担当)、そして退職後は、証券取引等監視委員会委員などを経て、今年4月から松本大学の学長に就任する。困難な時期にあえて生番組への出演を快諾してくれた潔さは、さすがに局内でも評判の「人格者」として通っていただけのことはある。橋本元一NHK会長以下、多くの理事が謝罪会見から逃げようとし、恋々としてその地位にしがみつこうとしたのとは対照的だ。かえって部外者である水城氏の方が、謙虚に「謝罪」を行い、説明責任を果たそうとしているようにすらみえる。
「他にもいるのでは」と
疑われるのも無理はない
残念ながらこうした傾向は、2004年に始まった不祥事以降、NHKでの不変の法則となりつつある。どんなにまともな職員でも、NHK内での出世の階段を上がれば上がるほど、謙虚さが失われ、与えられた地位に恋々とするようになる。巨大組織の構造がそうさせるのだろうか。あるいは経営者個人の資質の問題なのだろうか。
いずれにせよ、90年代半ばの約2年間、NHK報道局の一員として働き、2000年以降は海老沢勝二前会長を中心とするNHK取材を続けてきた筆者が、率直に抱く感想がそうである。
さて、今回のNHK記者らによるインサイダー取引疑惑は、またしてもそうしたNHKの「正体」を世間に晒すことになってしまった。
だが、2004年以降続く一連の不祥事と比べても、今回のそれはNHKにとって極めて深刻である。なぜなら、これまでの窃盗や痴漢などの個人的な犯罪と違って、NHKという組織全体を傷つける不正行為に値するからだ。公共放送の財産でもある公平性はもはや完全に吹き飛んだ。NHKの魂ともいうべき報道は、少なくとも3人の愚か者によって傷つけられた。大多数の健全な記者たちが育んできたNHKの信頼は地に堕ちた。まさしく万死に値する。
今回の不祥事が深刻である理由のひとつに、3人が共謀したわけではなく、個別にインサイダー取引を行ったという経緯があることだ。これは座視できない事実である。主管大臣である増田寛也総務大臣が、「他にもいるのでは」と語ったのも無理はないだろう。
部下に情報を上げさせ
大儲けした元海外支局長も
実際、筆者の取材でも、インサイダー紛いの行為を繰り返していたNHK職員は複数いる。東京、岐阜、茨城の3人だけの「犯行」だとは到底信じられない。現在、取材の最中なので詳細は伏せるが、例をいくつか挙げてみよう。
ある海外支局長は、部下に上げさせた情報を元に株の売買を繰り返していた。現在はNHKを辞めているその人物は、株で儲けた小さくない額のカネを自らの資産形成と趣味のギャンブルに投じていることを誇らしげに周囲に語っているのみならず、文章にも残している。さらに情報を上げてきた部下にも株の取引を盛んに勧めていた。
また、あるプロデューサーは、番組制作中に、某一部上場企業の新製品開発情報を知った。その情報を元に同社株を購入し、約500万円の利益を得たという。そしてそれを元金に新車を購入したうえで、自らの株式運用を部下に自慢している。
また、ある記者は、勤務時間中の株取引を頻繁に行っていた。常に個人用パソコンを持ち歩き、記者クラブなどでも堂々と売買を行っている。学生時代からの趣味が嵩じて、“デイトレ中毒”の様相を呈していたと同僚が語っている。
ところが、22日、NHKが発表した職員5470人に対する緊急の聞き取り調査の結果では、こうした人物の行為が報告された形跡はない。少なくとも、現在も働いている記者の中には、“デイトレ”を趣味と公言して、勤務時間中に記者クラブで売買している者が複数いる。だが、調査結果ではわずか2人だけが勤務中の取引を認めたにすぎない。筆者が取材で得た感触とはあまりに異なっている。
隠蔽体質と上層部の責任逃れで
不祥事は繰り返される
21日に記者会見をした橋本会長は、任期直前での辞意を表明した。さらに、総務省、自民党、民主党と足を運び、謝罪と事情説明を行ったという。だが、そもそも謝罪する相手を間違っていないだろうか。
NHKは受信料収入で成り立っている。その受信料を払っているのは私たちひとりひとりの視聴者だ。まずは会長自ら番組に出て、直接スポンサーである視聴者に謝るべきではないか。すでに記者会見を開いたと言うかもしれない。だが、NHKは記者会見の様子を放映していない。しかも、その記者会見も、放送記者会のメンバーしか参加できないクローズなものである。
2004年以来、NHKでは不祥事が起こる度に同じ過ちが繰り返されてきた。それは決まって次のような感じだ。
まずは、不正の事実を隠蔽しようと企てる。それが不可能だと知ると、上層部は何も知らなかったということにし、責任から逃れようと考える。だがそれも叶わない段になると、ようやく記者会見を開くのだが、あくまでも渋々と、可能な限り最小限の「謝罪」で済むよう、目立たないということに心が砕かれる。その後はひたすら「批判の嵐」が過ぎ去るのを待ち、内部ではスケープゴートに全責任を押し付け、外部には形ばかりの反省の姿勢をみせる。そして頃合いを見計らって、組織を裏切った「犯人」探しを行い、NHKに独特な「処分」が下されるのだ。
こうして不祥事が繰り返され、健全なNHK職員は駆逐されてきた。
今回の不祥事を受けて、NHKは、職員の株売買に関する規程を見直すという。だが、そもそも、報道に携わる記者たちが株の売買を自慢するような風潮を許してきたこと自体がおかしいのだ。
記者の株取引を許すばかりか
率先して売買を勧める上司
報道の仕事をしていれば、企業の内部情報には頻繁に当然に触れる機会がある。それは部署を問わない。経済部、政治部は言わずもがな、社会部、文化科学部、国際部、運動部ですら未公開情報は入ってくる。よって、その種の情報の取り扱いには慎重であるべきだし、報道目的以外の使用に関しては厳に慎まなければならない。
だが、前出の調査では、522人のNHK報道局員が1年以内に株売買をしたことを認めている。それはあまりに非常識な数字ではないか。取材を許してくれた情報提供者たちは、NHKの報道のためだからこそ、話をしたり、事実を知らせたりしてくれているのだ。たとえインサイダーではなくとも、それを疑わせる行為である限り、ジャーナリストの株売買は自粛するのが当然だ。だいたい取材で知り得た情報を自らの経済利益のために使おうとしている記者などいったい誰が信用できるというのか。
NHKは、記者の株売買を許すばかりか、一部の上司は率先してそれを部下に薦めてきた。そうした一部の不心得者による行為が、今回のような「事件」の下地を作り、NHKの看板に深い傷をつけたのだ。
記者によるインサイダー取引――。
報道機関において、それは、万死に値する行為だ。大部分の健全な職員には同情を禁じえないが、NHKは、もはやジャーナリズムを放棄したとしか思えない。
残された道は唯一だ。今回の「容疑者」を懲戒免職し、幹部と上司、そして隠れた「インサイダー予備軍」を徹底調査し、「罪」に対しては厳正な懲戒処分を下す。その上で、ジャーナリストしての当然のモラルを示し、視聴者に詫びる。
そうでなければ、NHKの大部分の健全な記者たちが救われない。そしてNHKの報道の魂も救われないだろう。
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