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岡田 克敏(2007-07-26 05:00)
新潟県の観光業界が風評被害を受けている。
「キャンセルの動きは柏崎市から北に約115キロも離れた瀬波温泉(同県村上市)にも及ぶ」
「県観光協会には『魚も放射能汚染されて食べられないんでしょ』という誤解した問い合わせすらあるという」(7月21日の東京新聞夕刊web)
「深刻なのは柏崎市から30キロほど離れた長岡市寺泊。関東や長野からも海水浴客が訪れる日本海側有数の海水浴場だが、7月の予約の8〜9割がキャンセル」
「寺泊にある4つの臨海学校用施設のうち、群馬県の吾妻広域町村圏、伊勢崎市、前橋市が臨海学校の中止を決めた」
「この中止で約7000人の宿泊が消える」(22日の産経新聞web)
「新潟県中越沖地震の発生直後から県内のホテルや旅館で、予約客のキャンセルが相次いでいる。その理由の多くが、東京電力柏崎刈羽原子力発電所のトラブルによるものだ」
「放射能が海に流れて心配」
「柏崎市から約140キロ離れた村上市瀬波温泉。旅館「汐美荘」では7、8月で1000人がキャンセルした。その際、複数の予約客が原発のトラブルを理由にあげた」(19日asahi.com)
この風評被害はメディアにとって、果たして「想定外」であったがどうか、主に朝日新聞の報道を例にとって検討してみたい。
7月17日朝日新聞第1面(撮影:岡田克敏) 地震の翌日の17日、朝日の朝刊1面に「放射能含む水、海へ」の見出しが載った。18日1面にも「放射性物質 大気中へも」という見出しがある。見出しだけ読むと、不安になること間違いなしだ。
いずれも記事を詳細に読まないと漏れた量は微量というのは分からない仕組みになっている。その後もトップ記事で「放射能含む水、電線ケーブル伝い漏出か」(23日)と続くからよほど重大な放射能漏れだと思わせる。海水浴に行く気などうせてしまう。
NHKも原発被災を連日トップで報じ、黒煙を上げる変圧器火災の映像を繰り返し流して、重大事故のイメージを強調している姿勢を感じた。民放は見ていないので想像だが、旅館のキャンセル率の高さなどから考えると同様な報道がなされたのではないだろうか。
風評被害とは実際は危険がないのにもかかわらず、みんなが危険があると思うから生じる。そこにはたいていセンセーショナルな報道がある。宿の予約の7〜9割がキャンセルされたのであるなら、旅行予定者の7〜9割が旅行は危険だと考えたということだ。
彼らはメディアが伝える情報によって決断したと思われる。現地に問い合わせていれば、「問題ありません」と言われるに違いないからだ。
旅行予定者は特別な人々ではないから、一般の人々も7〜9割が「危険だ」と判断した、と考えてもそれほどはずれてはいないだろう。その誤解を与えたのはメディア情報以外にはない。にもかかわらず、朝日の風評被害の記事では、キャンセルの理由の多くが原発トラブルによるものだ、と憶面もなく書いている。風評の原因を報道ではなく原発の存在そのものにしているわけだ。
報道にも責任があるという気持ちはまったく感じられない。
「放射能含む水、海へ」という見出しを出すのなら、「環境には影響なし」とでも書いて、不要な恐怖心を与えないように配慮すべきであった。読者の受け取り方に差があるのは仕方がないかもしれない。しかし、7〜9割の人に誤解を与えたのであれば弁解の余地はないだろう。さらに7〜9割のなかには過敏な人もいて、不要な恐怖を感じているかもしれない。
メディアはこれだけやれば、風評被害が起こると予想できただろう。過去に学習の機会は何度もあったのだ。
観光業界などが現実に経済的な損害を受けた場合、メディア、あるいは特に「危機感」をあおるような発言をした人物に対して、損害賠償を請求するような対応策をそろそろ考える必要もあるのではないだろうか。そうすれば今後の報道に注意するようになるだろう。
商品の欠陥に対して徹底して追及される世の中で、風評被害だけは誰も責任をとらなくてよいのだろうか。
いま、風評被害が目立つのは観光業界である。だが、農業や漁業に及ぶかもしれない。そして最もひどい被害を受けるのはいつも業界内の弱者である。失業も出るかもしれない。
被害の拡大を防ぐことができるのも、またメディアである。それが被害を作り出した者の義務であろう。天災なら仕方がないと、あきらめもつく。しかし風評被害は人災である。わざわざ作り出すものであるだけにやりきれない。
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