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「原油一バレル=一〇〇ドル台乗せ」をめぐり関係者が激烈な攻防を演じている。ヘッジファンドなどの投機筋や産油国の一部が大台突破を狙っているのに対し、米国政府や国際エネルギー機関(IEA)は、行きすぎた相場を冷やそうと懸命だ。原油価格はやや落ち着きを見せたとはいえ、予断を許さない。消費者の生活にも大いに関係ある攻防戦の行方は−。 (ニューヨーク・池尾伸一)
二〇〇一年の「9・11」テロで崩壊した世界貿易センター跡地のすぐ西隣にあるニューヨーク・マーカンタイル取引所。連日ディーラーたちの叫び声が飛び交い、大にぎわいが続く。
「最近はヘッジファンドや投機筋の資金が流入、取引量がすごい勢いで膨らんでいる」。売買を仲介する大手ブローカー、エリア・インターナショナルのエクステイン社長はこう指摘する。
関係者によると先週、原油先物が一バレル=九三ドルから一気に九八ドルを超え、一〇〇ドル寸前まで急伸したのもこうした投機筋が仕掛けた。ヘッジファンドや投資銀行は原油先物相場が一〇〇ドルを超えると予想し、一〇〇ドルで原油を買える権利を大量に取得。大台を超えて価格がさらに上がれば、権利を行使し、一〇〇ドルで買った原油を売って大もうけできるため、「大台乗せを狙い大量の買いを入れた」(業界筋)。
結局、今週初めにIEAが来年の世界の石油消費の見通しの下方修正を発表。相場は崩れ、投機筋のもくろみはいったんは外れ、十五日午前の時点では九二ドル台で推移している。
投機筋の「強気」の見通しの根本には、伸び続ける需要に、生産が追いつかなくなるとの予測がある。現在、世界中の原油の消費量は日量八千五百万バレル。しかし、IEAの推計では中国、インドなどの新興国の需要急増を背景に、消費は三〇年までに35%以上も増え、一億一千六百万バレルに達する。
足元をみても、先進国の石油の民間在庫は過去五年の平均を下回る水準に落ち込んでおり、市場の高値観測に拍車を掛けている。
原油価格の高騰に頭を抱える日欧や中国などの意を受け、ボドマン米エネルギー長官は今週初め、産油国で構成する石油輸出国機構(OPEC)に対し増産を要求した。
しかし、OPECのエルバドリ事務局長は「われわれが価格をつり上げているようにいわれるのは心外。需要に見合う供給はしている」と拒否。十七、十八日に開かれるOPEC首脳会議では増産を議題にしない方針だ。
米国は、親米路線をとり増産余力の大きいサウジアラビアに期待をかけるものの、OPEC加盟国で、反米主義を掲げるベネズエラのチャベス大統領が「数年間は一〇〇ドルを維持すべきだ」と強く主張。イランも高値を支持している。
このため「サウジが各国を説得できる保証はない」と世界の市場分析をしているエナジー・インテリジェンス社のデビッド・ナップ編集主任は楽観視していない。
エリア社のエクステイン社長は「相場のエネルギーはすぐにたまり、リベンジ戦のように一〇〇ドルを目指す動きになる」と読む。
投機筋の思惑もからみ原油価格は神経戦の様相も見せている。