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[ワシントン 19日 ロイター] 19日ワシントンで開催された7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は共同声明で、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン) に端を発した世界的な金融市場の混乱が世界経済の成長を減速させるとの見通しに言及して閉幕した。
市場機能回復のバラつきは続くとして注視の必要性を指摘したが、新興国経済の好調もあり世界経済の堅調な拡大は崩れず、危機は乗り越えられるとの期待感が示された。為替に関する記述は前回会合と変わらなかったが、人民元相場上昇のペースをはやめる必要性を指摘した。
会合後の会見では米国から強いドルを支持する発言があったが、欧州からはドル安ユーロ高への懸念の声はなかった。
<金融市場混乱・原油高・米住宅減速の3点を指摘、中央銀行は流動性対策継続>
共同声明では前回G7でうたわれた「過去30年超で最も力強い持続的拡大」との楽観的な景気認識は影をひそめて、「最近の金融市場の混乱、原油価格の高騰、米国の住宅部門の弱さは成長を減速させるだろう」と懸念を示した。
2月のエッセンでの会合以来、G7では円キャリー取引を含めて一方向に偏った金融取引や行き過ぎたリスクテイクの動きに警鐘を鳴らしてきたが、懸念が現実化した上に「そのスピードや規模については予想を超えており、ここまで広がった要因についてG7各国の関心は強い」(国際金融筋)という。
もっとも今回の声明では、新興国の経済成長に支えられ「経済全体のファンダメンタルズは引き続き強力」との文言も添えた。会合後の会見で額賀福志郎財務相は「危機は乗り越えられるだろうとの共通認識だった」と語った。
金融市場の混乱について声明は「市場によりバラつきのある状況は今後しばらく続くとみられ、注視が必要」と指摘。ポールソン米財務長官も「金融市場が正常化に向かう動きは出ているが、非政府機関の住宅ローン担保証券やABCPの流通市場といった一部の市場は正常に機能していないとの認識で各国が一致した」と述べた。
その上で声明は、金融市場の混乱への対応について「要因の十分な分析に基づいて行われなけらばならない」として拙速な対応は避けるべきとの方針を明確にし、金融安定化フォーラム(FSF)に対して、要因分析やリスク管理、会計処理、価格評価、格付け機関の手法や活用などの提案を行うよう要請した。
福井俊彦日銀総裁は「中央銀行としては、市場の安定、機能をよりよく発揮させるための流動性供給を続けていく。タイムリーに適切な金融政策を行うとの認識を共有した」と述べ、引き続き流動性不安に対して主要中銀が対応する余地があることを示した。
<米国は強いドルが国益と確認、ECB総裁はインフレ懸念に言及>
今回のG7では国際金融市場の不安が主要テーマとなり、為替に関してそれほど突っ込んだ議論は行われなかったもよう。共同声明の為替に関する部分は「過度な変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくない」との基本的な方針は前回と全く変わらずに踏襲された。
ただ人民元相場の調整については前回の「必要な調整が進むように変動することが望ましい」との表現が変更され、「人民元の柔軟性を向上させるとの中国の方針を歓迎するが、経常収支黒字が増加し、国内インフレが上昇していることに鑑みれば、よりはやいペースでの増価を許容することが必要と強調する」と踏み込んだ表現に変わった。ポールソン米財務長官はこの点が最大のポイントだと指摘した。
一方で声明には、ドル、ユーロ、円に関する記述はなかった。このところドルの全面安の展開が続いていたが、会合後ポールソン長官は「私の立場は非常にはっきりしていた。強いドルが米国の利益であり、為替レートは経済のファンダメンタルズに基づき競争原理の働く市場で決定されるべき」と述べた。
欧州からはドル安/ユーロ高に関する発言はなかった。トリシェECB総裁は「インフレに対処するために警戒を続ける必要がある」と発言し、為替よりもインフレ懸念の方が念頭にあることを示した。
ユーロ高/円安傾向については、シュタインブリュック独財務相が「日本は良好な景気動向が円に反映されるべき」と発言したほか、ユンケル・ユーログループ議長も同様の発言を行った。これに対し額賀財務相は「日本の経済ファンダメンタルズを確実に反映すべきだと言った」ことを明らかにした。
バンク・オブ・アメリカの日本チーフエコノミスト・藤井知子氏は「今回の人民元に関する声明により、円や韓国ウォンなどアジア通貨に上昇圧力がかかりやすくなる」と指摘。また焦点だったユーロ/ドル相場に関して発言が少なく、ユーロ高/ドル安地合いが続くと予想している。
<NY株大幅下落、福井総裁はリスク再評価は難しいと指摘>
G7が開催された19日のニューヨーク株式市場では、米住宅市場低迷の影響が米経済全体に波及しているとの見方からダウ工業株終値は300ドルを超える下落となった。
福井総裁はこの点について会見で「リスクの再評価は難しい。市場は多少行ったり来たりしながら均衡点を探って行くというプロセスをたどっていくと思う。今日の相場はそうした動きの一つと理解してもらえればと思う」と述べた。
福井総裁は今回の金融市場の混乱について「市場参加者のリスク評価が甘くなり、その後の自律的機能による巻き戻しが生じたもの」との見方を示した。その上で「金融イノベーションは市場の効率性を高める効果をもたらし、流れを止めることは望ましくない」として、各国に、市場自身がリスク評価を行うインセンティブが働く枠組みを考える必要があると述べたという。
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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-28444820071020