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August 12, 2005
「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」というデマ
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508121326.html
郵政民営化に関するコメント欄が熱すぎ!確かに現状の郵政民営化法案は100%穴の無い法案だとは思わない、今後修正を加える必要もあると思うし、その為にも3年毎の見直しが約束されている。活発な議論の中でいろんな考え方を知るのは一般人にとってもとても重要。
とは言え、デマで民営化に対する不安を煽るのはやめて欲しいもんだ。
例えば
「民営化すると国民の350兆円がアメリカに奪い取られてしまう」
これ嘘っ八。
「奪い取られる」という語感が恐怖心を煽るけど、不可能。そもそも「奪い取る」って何?って感じ。郵貯に預けた預金がアメリカのものになって預金者の手元に戻ってこないなんて事があるわけないだろ。
【ワヤクチャ】運用に失敗して倒産したらそうなりますねえ〜。アメリカ国債を大量に買って戦費を賄い、アメリカ国債が暴落する可能性は充分にあります。
それでも「鬼畜米英のやることは信用ならない」という人の為に具体的な根拠を挙げれば、2004年に閣議決定された郵政民営化の基本方針にある通り
郵政民営化の基本方針
2. 最終的な民営化時点における組織形態の枠組み
(4) 公社承継法人
・ 郵貯と簡保の旧契約とそれに見合う資産勘定(以下、「公社勘定」と言う。)を保有する法人を、郵政公社を承継する法人として設立する。
・ 公社勘定の資産・負債の管理・運用は、郵便貯金会社及び郵便保険会社に委託する。
3. 最終的な民営化時点における各事業会社等のあり方
(5) 公社承継法人
(ア) 業務の内容
・ 郵貯・簡保の既契約を引継ぎ、既契約を履行する。
・ 郵貯・簡保の既契約に係る資産の運用は、それぞれ郵便貯金会社及び郵便保険会社に行わせる。
(イ) 公社勘定の運用
・ 公社勘定に関する実際の業務は郵便貯金会社及び郵便保険会社に委託し、それぞれ新契約分と一括して運用する。
・ 公社勘定の運用に際しては、安全性を重視する。
・ 公社勘定については、政府保証、その他の特典を維持する。
・ 公社勘定から生じた損益は、新会社に帰属させる。
つまり
===
郵貯と保険の旧契約は(郵政公社の期間に集めた郵貯・保険の約340兆円は)、政府保証を付けたまま公社継承法人に引き継ぐ。運用は郵貯・保険の新会社が行うが、公社勘定の運用から生じた損益は新会社に帰属させる。
===
例えば郵政公社が民営化されて、その民営化後の会社を丸ごと外資が買ったとしよう(←この前提自体為替の問題やらなんやらでかなり無理があるけど)、でもその会社の手元に340兆円は無い。これをどうやってアメリカが奪い取るの?公社継承法人に強盗でもしに行くか?そんなの無理だろ。
一方、この公社継承法人が保有する340兆円は郵貯・保険の新会社が運用する。しかしこの運用から生じた損益は新会社に帰属するので、例えば新会社を買い取った外資がデタラメな運用をしたとしても、公社継承法人の勘定にある340兆円が霧のように消えることは有りえない。それどころか、デタラメな運用によって生じた損は新会社に帰属するので、新会社を買収した外資は自分で自分の首を締める事になる。こんな自殺行為誰もやらない。逆にちゃんと運用して利益を出して税金を納めてくれるなら日本にとっても全くマイナスじゃない。
この議論をするとすぐ「長銀がハゲタカ外資からどんな目に合わされたか!」と恐怖心を煽る人がいるが、長銀は破綻していて誰も買い手がつかない状況だった訳で、今の郵政三事業と比較する事がナンセンス。逆に言えば「買い叩かれるような状況」まで放置しようとしている郵政民営化反対派の方がよっぽど外資を利する可能性が高い。
にもかかわらず、郵政民営化反対派議員やそのシンパの方々は田舎のじいちゃんばあちゃんには「小泉は田舎の郵便局を無くそうとしている悪い奴だ」と恐怖を煽り、そのウソが通じない人には「ポチ小泉は350兆円をアメリカに差し出そうとしている!」とこれまた的外れな陰謀論でか弱き子羊のような一般人の恐怖心を煽ってる。
その典型が↓森田実という政治評論家
森田実の時代を斬る(2005/8/10)
(前略) 米国通の友人H氏から、『ウォールストリート・ジャーナル』2005年8月8日号のインターネット版記事の一部が送られてきた。
『ウォールストリート・ジャーナル』は「郵政民営化法案は廃案となったが、これは手取りの時期が少し延びたに過ぎない。ほんの少し待てば、われわれは3兆ドルを手に入れることができる」との見方を述べている。
3兆ドルとは、国民が郵政公社に預けている350兆円のことである。ウォール街は、9月11日の総選挙で小泉首相が勝利し、総選挙後の特別国会で郵政法案を再提出し、成立させると信じているようである。
H氏によると、これを確実にするため、ウォール街は、多額の広告費を日本に投入し、日本のテレビを動員して、日本国民をマインドコントロールして、小泉首相を大勝利させる方向に動いている。
「多額の広告費はどのくらいか?」と聞くと、「とにかくケタ違いの金額のようだ。いままで投入した広告費の10倍を投入してもかまわない、と考えている。350兆円を得るために、その1〜2%を使ってもよいと考えているようです。すでにテレビ朝日とテレビ東京は、小泉勝利のためにテレビ局の総力をあげることになった、といわれています。これに日本テレビ、TBS、フジテレビがつづく。NHK以外の在京の全地上波キー局が小泉自民党の宣伝機関になり、小泉ヨイショ報道に狂奔している。これにより日本国民をして小泉を支持させて、小泉を英雄にし、独裁者にしようと狙っている。独裁者になった小泉が郵政を民営化し、350兆円の郵貯・簡保の金をウォール街に流してくれると考えている」とのことだ。ウォール街は日本国民をモルモット程度にしか考えていないのだろうか。
欲の深いブッシュ政権とウォール街が、巨額の広告費で日本のテレビを丸ごと支配し、NHK以外の民間テレビ局を動員してすべての日本国民を洗脳し、小泉を勝者に独裁者にしようとしている。郵貯・簡保の350兆円を米国にプレゼントすることは日本国民にとっては地獄への道である。(後略)
外国の新聞記事を持ち出せば無知な国民はコロっと騙されるとでも思ったら大きな間違いだ。森田氏こそちゃんとした論拠を記しもせずに「ウォールストリートジャーナル(WSJ)に書いてあった」という「外圧」を利用して自分のでっち上げた「350兆円を郵政民営化でアメリカに差し出すポチ小泉」というデマを信用させようと必死だな。
ちなみに実際この記事はWSJではなくファイナンシャルタイムス(FT)に掲載されていたのだが、原文はこう↓
A contemporary dilemma haunted by history
Junichiro Koizumi, Japan’s prime minister, has lost the vote on his grand scheme to privatise the country’s post office with its vast savings pool and will go to the polls. For now, the village-pump communitarian face of Japanese conservatism has won out over anti-bureaucratic, privatising radicalism. The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings.
But the snap election next month is likely to focus as much on the dire state of Japan’s relations with China and Korea as on privatisation. Here at issue is the other face of Japanese conservatism: the reluctance to feel guilty about the war. The key symbol of that reluctance has been Mr Koizumi’s visits to the Yasukuni shrine in Tokyo to pay respects to Japan’s war dead. There is speculation he might open his election campaign with such a visit on the 60th anniversary of the war’s end next Monday. Opinion polls show a bare majority think it “wiser” not to go. Mr Koizumi may think bravado and talking tough to the Chinese will win more votes than wisdom.
恐らく森田氏は「The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings.」の部分だけを抜き出して「郵政民営化法案は廃案となったが、これは手取りの時期が少し延びたに過ぎない。ほんの少し待てば、われわれは3兆ドルを手に入れることができる」と自分に都合の良いデタラメな和訳で郵政民営化をアメリカと小泉の陰謀としたいようだ。
とんでもないデマ野郎だな。森田氏のオカルトも選挙予想くらいにしておいて欲しいもんだ。
「For now, the village-pump communitarian face of Japanese conservatism has won out over anti-bureaucratic, privatising radicalism. The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings.」
↓
これは直訳すると
↓
「(参議院で郵政民営化法案が否決される事により)現時点では、日本保守主義における 井戸端共同体的側面村社会の共産主義的な側面(2005/8/25修正) がアンチ官僚的・民営化改革主義に勝利を収めることが出来た。世界の金融業界が3兆ドルの日本の預金を手に入れるにはもうしばらく待たねばならないだろう」
↓
さらに超訳すると
↓
「郵政民営化法案否決のおかげで、今まで財政投融資や国債という非常にクローズドな『井戸端共同体的村社会の共産主義的(2005/8/25修正)』運用をされていた3兆ドルといわれる郵貯・簡保の金融資産が『開かれた資本主義的世界の金融市場』に流れ込むにはもうしばらく時間がかかるだろう」
って事だよ。
厳密に言えば郵政民営化の基本方針にある通り「郵貯・簡保の340兆円の運用に際しては、安全性を重視する」と書いてあり、基本的に国債で運用される見通しなのでFTの記事もちょっとズレているが、森田実氏の陰謀論はぶっ飛びすぎだろ。
こんなオカルトチックな陰謀論なのに自分でソースに触れようとしない英語アレルギーの人はコロっと騙されちゃうのかな?田舎のおじいちゃんおばあちゃんが「民営化で田舎から郵便局が無くなる!」と恐れおののいているように。
郵政民営化反対するのは構わないけど、ウソで人を扇動するようなやり方は許し難いね。だったら正直に「郵政利権が大事です!」とか「デマを利用してでも反小泉です!」とか本音を言えよ。
で追い込まれると、
郵政民営化必要…黙殺できず 苦悩の民主
(前略) 自民党造反組の小林興起前衆院議員と小池百合子環境相が激突する方向となった東京10区から出馬する鮫島宗明前衆院議員は十日、国会内で急遽(きゅうきょ)、記者会見し「郵貯・簡保は二年後から民営化のプロセスに入っていくのが妥当だ。(民主党内の)八割がそう思っている」と発言。マニフェスト(政権公約)に民営化の方針を盛り込むよう求める考えを表明した。(後略)
(産経新聞) - 8月11日3時1分
なんだそりゃ?だったら最初から対案を出すべきだろう?
ハッキリいえるのは、そういう場当たり的にコロコロ発言を変える奴に改革なんて絶対出来ない。特に公務員削減みたいな具体的な抵抗勢力がいる改革は絶対に不可能。
今、このチャンスを逃したら日本は小さな政府に舵を切る事は永遠に出来ないかもしれない。
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郵政民営化についてきちんと議論されるのは大歓迎だが、今の民営化反対派(マスゴミ含む)は根拠に乏しいデマまがいの反対論や印象操作でこの問題の本質をズラしている事が多い。それはネットでも然り。ネットの掲示板等で何度論破されてもゾンビのように繰り返される、知識不足の人の恐怖心を煽る事を目的としたデタラメのコピペで、民営化論争の本質がブレる事を避ける為に下記の関連エントリーをテンプレ代わりにご利用いただければ幸甚です。
[関連エントリー]
やはりマスコミがひた隠しにする郵政解散の理由と争点
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508091144.html
「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」というデマ
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508121326.html
民主党の郵政改革案のデタラメっぷりを検証
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508151308.html
「過疎地の郵便局が無くなる」という脅しに騙されるな!
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508231302.html
[参考URL]
特定郵便局−辛抱治郎
http://shinsho.shueisha.co.jp/toranomaki/010821/
郵便局はいかさま天国? 「自民党と歩んだ相互膨張の半世紀(前半)」
http://nb.nikkeibp.co.jp/free/YUSEI/20020116/101648/
なぜ選挙に走るのか 「自民党と歩んだ相互膨張の半世紀(後半)」
http://nb.nikkeibp.co.jp/free/YUSEI/20020116/101649/
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Posted by gori at August 12, 2005 1:26 PM | コメント - 400件 | TrackBack - 26件