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(回答先: 1.老婆殺害の社会思想(酒場での若い学生と士官の会話) 【ドストエフスキ−『罪と罰』研究ノート】 投稿者 hou 日時 2007 年 6 月 10 日 09:36:31)
2007/02/24, 日本経済新聞 朝刊, 1ページ, 有, 1751文字
「長生きするほど得する保険をつくれませんか」。経済産業事務次官の北畑隆生(57)が大手保険会社に声をかけて回っている。
そんな保険の概念は実際にある。掛け金の運用益を生きている人だけで分ける。長生きするほど受取額は増える。細る若者世代に頼らず、同世代でリスクに備えられる。考案したイタリア人の名をとって「トンチン年金」という。
若いころ、高齢者の海外移住計画を提唱したこともある北畑は思う。「老後の不安を解消しないと高齢者はお金を使えない。経済活性化のチャンスも逃す」
高齢者に800兆円
日本の家計の金融資産は千五百兆円。経済の血流となるべきお金。うち八百兆円は六十歳以上の高齢者がもつ。単身の高齢女性だけでも百兆円を超え、八割は預貯金とされる。
高度成長の高金利時代は預金が比較的効率のいい資産運用だった。今は違う。日銀は二十一日に利上げをしたが、普通預金の金利は年〇・二%程度にすぎず、お金を生かす発想から日本の家計を遠ざける。
自宅に現金を置いたままのタンス預金。第一生命経済研究所の熊野英生(39)の試算では二十兆円を超す。持ち主は「運用より資産の保全が大切と思う人たち。ほとんどが高齢者」。
「低金利こそお金が消費に向かわない原因」とセブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文(74)は言う。超低金利で家計部門の利子の支払いが受け取りを上回った十年前から、消費は下降カーブを描き始めている。
取材班は五百人にきいてみた。「死ぬ瞬間にどのくらい資産を持っていたいか」。六十歳以上の男性の平均は三千二百万円。欧米では働いてためたお金を、死ぬまでに使うという人が多い。逆に死ぬときに多くの資産を残すことを経済学で「ダイナスティ(王朝)仮説」と呼ぶ。日本には王朝仮説が生きている。
「子孫に美田を残さず」。西郷隆盛は説いた。ただ弟の従道は東京の目黒から渋谷にかけて十四万坪に及ぶ広大な土地を残した。従道のひ孫で、大正大教授の西郷泰之(52)はその相続に最近まで苦しんだ。数億円に上る相続税が発生、物納だけでは足りず借金を余儀なくされた。
西郷隆盛が死んでから百三十年。「大相続時代がやってくる」。銀行や証券会社はそんな見当をつけ動いている。野村総合研究所の宮本弘之(41)は高齢化で滞っていた相続マネーの環流が一気に始まるとみる。ひとつひとつの規模は小ぶりだが、二〇二〇年の遺産総額は土地など実物資産を含めて推計百九兆円。〇六年から五割増える。
量的な変化だけではない。「五十代以下と六十代以上の間には遺産や資産運用の考え方に大きな断層がある」と宮本。「情」より「理」の資産運用を志向する下の世代が遺産を受け取れば、眠っていたお金の流れは変わるかもしれない。
都内の越谷和史(32)は親から援助の約束を取り付けた。本で知った「相続時精算課税制度」で二千万円の贈与を受けるつもりだ。贈与を「生前の相続」とみなすしくみで、累計二千五百万円まで税金がかからない。〇三年の導入以降、二十四万人以上が利用した。美容師の越谷はそのお金で店を持とうと計画している。
世代間に不均衡
豊かな高齢世代と働く世代の間にある不均衡。高齢者たちも考える。次の世代にどう残すか。公証役場で作られた遺言は七万件と十年で五割増。遺言状を信託銀行が管理し執行する遺言信託は、五年で二倍の四万四千件に増えた。
高知県香美市。人口三万人の山あいに毎年二十万人が訪れる。お目当てはアンパンマンミュージアム。生みの親のやなせたかし(88)が十年前に一億円寄付して建てた。道路やバス停も私費でつくった。やなせには子供がいない。「孝行息子のアンパンマンが稼いだお金。死んだら財産は地域とファンの子供のために使ってもらう」と決めている。
お金が動く条件は使い道を自ら決める意思が働くことだ。漫然と遺(のこ)すか、寄付や生前贈与など違った道を見いだすかは、それぞれの選択。意識の変革とそれを許す新しい手法が、イエコノミーの潜在力を生かす。=敬称略
(イエコノミー取材班)
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【図・写真】「タンス預金」はなお高止まりしている