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経済も人権も“一人負け”の日本 2007/05/17
一人当たりGDPの国際比較
(クリックすると大きくなります)
ノルウエーの国会議事堂前で5時には既に普段着でデートを楽しむ人々。日本ではデートより残業と言う若者が多いから少子化も当然か。
「貧乏暇なし」の日本の若者が多用するようになったインスタント食品。一食を200円で済ませる人も多く背筋がぞっとする。
グラフを見てください。
一人当たりGDPの推移です(内閣府発表の国民経済計算年報から作成しました)。
比較対象は、世界一の大国であるアメリカ、欧州のリーダーであるドイツ、そして、北欧から筆者の先般訪問したノルウエー、そして隣国のスウエーデンを選びました。
1993年、世界でも日本はこの段階では、世界でもダントツでトップでした。まさに世界の「横綱」でした。
しかし、次の年から、アメリカへの従属が強化されることになり(年次改革要望書)、グローバリズムが強化されていきます。
そして、日本経済の世界における位置は急降下することになるのです。1994年は、日本の庶民の生活水準も低迷していく転機となる年です。
1997年には、橋本総理の六大改革が発動される年です。この年にノルウエーに逆転されます。
この年にはまた、日米安保の新ガイドラインも同時に策定されます。これは自衛隊を米軍とともにアジア太平洋中で行動させるもので、グローバリズムを軍事面で補完し、今の「新憲法制定」の動きの下敷きとなりました。
翌年に日本は金融恐慌を引き起こし、アメリカにも逆転されました。その後、小渕政権により積極財政が行われますが、一方で、労働者に対しては労働者派遣の原則自由化などのグローバリズムが強化されます。
小泉さんが総理になった2001年に、グローバリズムはさらに強化されます。この年に皮肉にも、日本は、ノルウエーに引き離され、アメリカにも完全に再逆転されます。
2002年以降は、景気は回復に転じたといわれます。とくに、2003年度以降は多くの企業で最高益を出すようになります。
しかし、掲げたグラフの一人当たりGDPで見ると、2003年にはスウエーデンにまで逆転されました。
ネオコンの経済政策をアメリカのいいなりで最も忠実に実行したのは、この12年間では日本だったといえます。
そのうえ、日本のネオコンは、強権的な傾向が見受けられます。小泉前総理の9.11総選挙における政治手法。また、共謀罪を強行しようとしたり、国民が国を縛る憲法から国が国民を縛る憲法への逆転を狙う安倍総理などが好例です。
あるいは、クールビズだとか食育とか、教師が悪いとか、その場受けしそうなイデオロギーなどを振り回すことで、有権者の目を釘付けにし、経済の後退から目を逸らそうとしてきたのです。
日本経済の後退
そうした中で、日本の経済的地位は、音を立てて世界の中で後退しているのです。
たしかに、日本企業は4年連続で過去最高益です。しかし、それは、為替をここ数年強引に円安に誘導した結果、すなわち、お金を大量に海外へ流出させた結果でしょう。
国内では中小企業への融資を締め上げつつ、また、労働者に賃金は払わずに、大手企業は利益を上げ、借金を返し、貯金を増やし、その分、銀行は、アメリカ国債などの購入を増やしたのです。
しかし、それは、日本自身の、日本人自身の生活水準を、世界の中で沈めつつ、企業だけ儲かっているようにする、いわば「タコが自分の足を食う」にも近い状態なのです。そして、アメリカ経済への依存はリスクを抱え込むことになります。
そして、いわゆるネオコンの方々の言説の誤りが明らかになります。ネオコンで鳴らす方々の言説をネット上などで観察し要約すると以下です。
・北欧は福祉国家などといわれるが、経済は停滞している。
別のタイプのネオコンの方々もいます。このタイプのネオコンの方々は、北欧の賃金が高いことを認め、また経済力の男女格差が少ないことを認めつつも、「金だけが基準ではない」「家庭が大事」といい、北欧を貶めています。
しかし、前者については、このグラフから完全な誤りであることが分かります。「ネオコン」の方々は、ご自分の誤りを認めるべきです。北欧は全然停滞していない。停滞しているのは日本のほうです。
日本だけが1993年から全く前進していないのです。
日本 35008→35605ドル
アメリカ 25374→41574ドル
ドイツ 24691→33703ドル
ノルウエー 27147→63961ドル
スウエーデン 22994→39535ドル
(グラフには掲げませんでしたが:フランス 21897→35150ドル)
いまや日本の一人当たりGDPは、世界第14位(2005年)です。
これは1981年、いわゆる「土光臨調行革」路線が始まった年の数値です。ここに逆戻りしたのです。その後、外需に活路を求めた日本はアメリカに円高を仕掛けられ、結果として、日本は世界一に躍り出たと思った。が、その後の経済政策を誤り、内需を冷やし、元の木阿弥になってしまいました。
「大相撲参院選場所」を前に考える
はっきり申し上げてしまえば、ドイツやフランスが失業が深刻だとか、暴動が起きているとか、サルコジがどうの、ロワイヤルがどうのと、日本人が偉そうに評論している場合ではないのです。「北欧が停滞」、などはもはや笑止千万です。停滞、いや後退しているのは我らが日本です。
日本で行われる欧州批判の多くは、格差が大きい社会を維持し続けたいが為のネオコンの方々の「ためにする」議論ではないでしょうか?
アメリカも1.6倍程度に経済が成長しているのは、まさにクリントン政権が、それなりに「効率的で大きな政府」に勤めた成果です。クリントンはグローバリズムもやりましたが、国内ではそれなりに、積極財政も行い、経済成長のための投資もしました。お金持ちへの課税も強化し所得再分配をしたのです。
その結果、2000年には財政黒字に転じています。ブッシュの戦争で台無しですが、最近議会の力関係変化により、最低賃金引き上げなどが行われています。アメリカだって、実際には、日本人が思うほど「ネオコン」路線をやっているわけではないのです。
なお、「家庭が大事」と言うタイプのネオコンに対して、また、「環境」やロハスを強調する勢いあまって経済を軽視しがちなリベラル派の一部に、こう申し上げたい。
北欧の場合は、教育も、雇用も、福祉も個人単位でセーフティネットが張られています。すなわち「個人でメシが食える」状態に近いので、家庭状態に少々の変更があってもダメージは少ないでしょう。その分却って家庭生活を安心して楽しめるということもあるのではないでしょうか。
そもそも、労働時間が短く、4時で仕事が終わりで、5時には既にデートや親子で散歩客で国会議事堂前も占拠されてしまう、そんな国と、夫婦二人でやっと300万、あるいは、貯金さえない人も多くて、結婚さえ選択肢に入らないという国を比べてどうですか?
北欧のほうが内需も相対的に大きい。また、男女平等賃金に近いので実は意外と製造業部門に多い、男性の賃金も押さえられ、コストが(統計に現れるよりは)意外と高くない。人生のやり直しも元々、日本よりはしやすいから、人的資源の効率的な移動もしやすい。
日本は高齢者にとって医療や介護負担がどこまでかかるか「読めない」。これでは安心してお金を使えない。
また、北欧では、日本のように長時間で非効率ではなく、効率よく仕事を片付けるので生産性も(ふつうの統計では図りにくいですが)悪くはないのでしょう。日本はこのまま非正規雇用ばかりを続けていたら、生産性が却って落ちていくことも懸念されます。
さすがに、最近は、ネオコンの政治家やネット上の論者よりは企業経営者のほうが先見の明がある方々も多く、正社員化を図るところも多いですが、就職氷河期の人々をどうするかという課題が残ります。
他国を批判している暇は日本にはありません。いまや日本はアメリカの策略、そして投機で儲ける様な、一部の「えらい人」の利益のためにはじめられた「改革」という名の「平成版 第二次世界大戦」に敗北しつつあるのです。
小泉さんは、「軍艦マーチ」に乗って「改革」という名の「戦争」を始めたとすれば、安倍さんのBGMは、「海行かば」になり、「敗色濃厚」であることが大分人々にも広まり、大分人気が低迷ということは最近いえますが。
とにかく、デフォルメすれば、共産主義(北朝鮮)の強権主義(共謀罪的なもの)と資本主義(アメリカ)の冷酷さ(格差拡大・戦争しまくり)を組み合わせたような、あるいは、日本の古臭さ(バックラッシュ)とアメリカの弱肉強食(新自由主義)を組み合わせたような、最悪の方向へ向かいつつある日本をどうするのか。人権状態も、経済状態も政治状態も最悪の方向へベクトルとしては向かいつつある日本をどう反転させるのか。
むろん、そうはいっても北朝鮮とは違い、日本にはまだまだ「体力」はあります。処方箋を誤らなければ、日本は経済でも人権でも大国になることは不可能ではない、と私は確信しています。
「小さな政府」とか「美しい国」とかそういうことではない。まず、憲法25条を完全実施するにはどうすれば良いか。「人権なくして成長なし」という考え方を徹底すれば、私は、日本が「横綱に返り咲く」ことも可能だと思います。
今はちょうど大相撲夏場所ですが「大相撲参院選場所」を前に、私たちはしっかり考えねばなりません。
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(さとうしゅういち)