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(回答先: 北九州市生活保護問題メールニュース 【日本自治体労働組合】 投稿者 hou 日時 2007 年 3 月 04 日 11:32:53)
http://homepage3.nifty.com/civilsocietyforum/page056.html
日本の所得保障
安心して生活できるナショナル・ミニマムとは?
岡林信一
0.報告の趣旨
・新自由主義的構造改革により階層格差がいっそう拡大する日本社会
所得格差の拡大(ジニ係数0・4983)
増え続ける生保受給者(兵庫県の保護率・人口千人あたり13人)
派遣労働の増大(95年61万人→02年213万人)
非正規雇用400万人そのうち「請負」100万人
ワーキングプア(生保水準以下の賃金労働者)
ニート(Not in Education,Employment or Traning)60万人
・さらなる社会保障大改悪 定率減税廃止
・不安定な雇用・賃金を改善することともに、すべての市民が安心して生活できるナショナル・ミ
ニマムとして、今こそ社会保障の充実もますます重要となっている。
・社会保障運動にとって必要なこと
ひとつひとつの制度改悪に抗する運動と同時に、社会保障構造改革全体に立ち向かうため
に、どのような視点で、どのような運動をつくり、どのような世論形成をはかっていくかを検討す
る場を位置づけること。そのような議論経過の中で、「ナショナルミニマム(国民生活の最低保
障)」という視点から、各制度を横断的に学び、議論する。日本国憲法第25条の「生存権」を足
場にした運動を構築していく必要がある。
※本報告では、「健康で文化的な最低限の生活」(憲法25条)を保障すべき所得保障、とくに生
活保護制度と最低賃金制度、ならびに公的年金制度の現状とその改善の展望を考察する。
1.所得保障の法的根拠・指針・制度
・ナショナル・ミニマム論の発展(イギリス)
・「第1次ナショナル・ミニマム」=「貧民に対する生活の最低限保障」 ウェッブ夫妻
・「第2次ナショナル・ミニマム」=「飢餓線上を彷徨する水準」 ベヴァリッジプラン
・「第3次ナショナル・ミニマム」論 ウェッブ夫妻『大英社会主義社会の構成』(1920年)
「営利企業に対する過渡的統制」→「社会化」
法定最低賃金、「非自発的な失業者に対する政策の適正化」、生存・余暇・住宅・公衆衛生・教
育水準・生活環境のナショナル・ミニマム
+α 年金・医療・介護・福祉・保育などのナショナル・ミニマム論
・憲法25条生存権
憲法25条が定める国民の生活権保障は、11条(基本的人権の保障)、18条(奴隷的拘束・苦
役からの自由)、26条(教育権)、27条(勤労権)、28条(労働基本権)を「全体として構造的にとら
える必要がある。とくに、教育を受ける権利(第26条)と勤労権(第27条)の保障がナショナル・ミ
ニマムの確立にとって不可欠であり、ついで、ナショナル・ミニマム保障は労働基本権(第28条)
を軸に労働者・国民が主体的に獲得していくべきものであり、それゆえ人権と自由の保障が絶
対的条件である。(大木一訓日福大教授)
・社会保障審議会の「50年勧告」−戦後日本の社会保障制度の指針となった文書
社会保障制度の中心を「自らをしてそれに必要な経費を拠出せしめるところの社会保障制
度」=社会保険に置いたが、「戦後の特殊事情で、保険制度のみをもってしては救済し得ない
困窮者は不幸にして決して少なくない」から、そうした人々に対しては国家が直接、最低限度の
生活を保障するとした。ただし、生活保護制度は、「国民の生活を保障する最後の施策である
から、社会保障制度の拡充にしたがってこの扶助制度には補完的制度としての機能をもた
しむべきである」としていた。
・社会保障制度審議会の『95年勧告』
社会保障を「みんなのために、みんなでつくり、みんなで支える」ものであると、「権利と
しての社会保障」ではなく、自助や国民同士の助け合い(=社会連帯)を強調し、国家責
任と企業責任を欠落。
■日本の所得保障制度
日本の社会保障制度の中で、所得保障の機能をはたすものとして、@公的扶助制度(生活保
護、児童扶養手当、特別児童扶養手当、災害救助法)A社会保険制度(公的年金、失業給
付等諸手当、育児・介護休業手当、傷病手当、休業補償・年金)B損害補償的な所得保障(公
害、原爆、交通事故、医薬品副作用被害者、戦傷病者遺族などの公的保障制度)C稼働所得
の保障手当(最低賃金、未払い賃金確保法、業者や農漁民等の生活を保障する包括的な自
家労賃制度はない)がある。
2.生活保護基準:ナショナル・ミニマムを捉える基点
日本では、生活保護基準が労働者・国民の最低保障年金要求、最低賃金の引き上げ、最近
では労働組合の賃金要求の根拠とされ、市場原理主義を鼓吹する政府・財界、研究者たち
も、基礎年金(最低保障年金)も含めて、セフティーネットとして所得保障の目安に持ち出されて
いる。
生活保護制度は、日本国憲法第25条を具体化したもの(生活保護法第1条)であり、国民生
活の下支え、安心ネットであるばかりでなく、生活保護基準が最低保障年金制度、全国一律最
低賃金制度、課税最低限(生活費非課税原則)の課題と密接にかかわるものであり、また、就
学援助をはじめ、国保など各種減免制度の「基」となっている。生活保護基準の切り下げは、
支配層が「賃金も年金も切り下げる」と宣言したに等しいものである。
・その理由
@ナショナル・ミニマムの基軸となる生活費を基準とする全国一律最低賃金制度が確立してな
い(最賃は地域別)。他の明示的指標がない中で、生活保護基準が事実上、日本の「貧困ライ
ン」を示す指標になっている。
A「権利としての社会保障」を掲げた社会保障運動が生存のミニマムを生活保護基準に求
め、「国民の権利か」「政府の裁量による決定か」が争点となり、そこに社会の関心が向いた。
・朝日訴訟、堀木訴訟→「プログラム規定説」
憲法25条解釈をめぐり法廷内外での憲法論争を呼び起こす。
※日本ではナショナル・ミニマムの確立運動は、労働運動ではなく、生活に困窮している国民
が訴訟を通じて、国の施策の是正を求めるという形で展開。
※政府は生活保障のミニマムを国に請求する権利は国民にはないとしつつ、社会保障給付の
金額の引き上げについては一定の配慮をするという対応を行った。生活保護基準は1961年以
降、勤労者世帯の消費生活水準との格差の縮小をはかるという考えのもと、漸次引き上げら
れてきた。
■国際比較(OECD24カ国)
@GDPに占める公的扶助手当支出額
ギリシャ、アイスランド、ポルトガル、トルコと並んで最も低いグループ
A80〜92年における対GDP対比での公的扶助現金支給総額 :唯一割合低下
B総人口に占める受給者の割合(92年) スイス、ポルトガル、ギリシャに並んで低い
C所得調査、資産調査、ワークテストにおいていずれも「厳しい国」
※生活保護行政において、「補足性の原理」が濫用され、生活の自助努力の強制を前提とし
た所得・資産調査、申請者・受給者とその家族、親族へ-のスティグマ(恥辱)の押し付けなど、
最低限度の生活保障を請求する権利が著しく狭められた結果
Cf.最低賃金 一般労働者の賃金水準の36% オランダ50%、アメリカ37%
オカビアの泉@
ハリーポッターの作者は、生活保護を受けながら作品を書いた。(70ビー)
「自己実現」が国民の権利であることが認められているのがイギリス。
ドイツの生活保護制度:ある保護世帯の方が、「スペインにバカンスへ行きたい」から、「その
介護費用を支給してほしい」と申請。最初、申請は却下となったが、裁判を起こし勝訴。
■日本ではなぜ餓死・凍死・孤独死などが起きるのか?
→保護世帯を減らすために、違法・不当な保護行政が横行
「申請をさせずに追い返す」「申請書の取り下げをさせる(保護はできないと思い込ませる)」「違
法な保護廃止」「保護の辞退届を書かせる」など
保護率を低めるため「適正化政策」として、1981年に出された「123号通知」以来、申請者
に対して、家族の資産などの調査を一括して同意する「包括同意書」「扶養の強要」など、締め
付けを強めてきた。
1985年 受給者143万→1995年 88万人と激減 (最近は、不況の長期化・深刻化により増、03
年で約130万人) 。
■申請自体をさせない窓口対応は「申請権」を侵害する違法行為
行政手続法は、住民の「申請」に対し、行政側が「本申請を受理する」「本申請を受理しない」
というような権限・規定を設けていない。「申請」は、行政側のもとに「到達」した時になされたと
みなされるべきものであって、その方法については、書面・口頭の別を問わない。このことか
ら、窓口で申請自体をさせない行政側の対応は「違法」であり、「生存権否定」にほかな
らない。
申請権・受給権と並んで重要な権利として「争う権利(審査請求権や訴訟)」があり、国や
自治体の決定に服従するのではなく、不服がある場合には争うことができる。この3つの権利
が守られてこそ、真に民主的な制度として成り立つ。
※生活保護に関する行政訴訟は、原告勝訴率が約7割(一般の行政訴訟は8%)
いかに違法な生活保護行政が為されているのかを証左している。
■さらなる改悪
歴史上初めての生活扶助基準の0.9%カット、老齢加算の廃止。
さらに、母子加算の廃止や、国庫負担の引き下げ、一般財源化による地方への負担押し付
けが日程に。
3.地域別最低賃金:勤労者にとってどういう意味があるか
オカビアの泉A 最低賃金では生活保護水準の収入も得ることができない。(80ビー)
■地域別最低賃金と生活保護基準の「逆転関係」
生活保護基準は国のレベルで決定する賃金(失対賃金、地域別最低賃金)の基準になってい
るが、70年代から、生活保護基準>失対賃金>地域別最低賃金という「逆転関係」に。
EX.単身者の若者が東京23区で生活保護を受ける場合
住宅扶助上限5万3,700円
保護基準1,70万2,548円
この水準を賃金収入で実現するのに必要な額
280万〜290万円
地域別最低賃金・東京 708円
708×1日8時間×月23日×12ヵ月=156万3264円
生活保護1,70万2,548円>最賃基準の収入156万3264円
※現役労働者の所得のミニマムより、生活保護の受給者=社会保障給付で生活する者のミ
ニマムの方が上ならば、働く者の労働に対するインセンティブは削がれる。
※賃金と社会保障をあわせて生活するというヨーロッパ福祉国家の常識とは異なり、日本は賃
金依存度の高い社会
しかも男女格差・企業別格差が大きく、「最低賃金制度」もほとんど機能していない。
※「最低賃金は労動者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の支払能力を考慮し
て定める」(最低賃金法3条)
※労働者の生計費を無視し、生保基準以下の不当な低さにしているため、これが初任給を規
制し、女性や不安定雇用の低賃金に連動し、底辺層を独立生活のできない家族もたれあいの
世帯単位の生活にしている。
◎賃金と社会保障との関係(工藤恒夫)
@(資本制社会での)社会保障は、本来、就業している労働者の「最低生活」以下の賃金所得
の不足分を埋め合わすという機能を全く持っていない。
Aその論理的帰結として就業時の「最低生活」を確保するのに十分な賃金水準が成立し得な
いところでは、"生存権"の名に値する内容を具えた真の社会保障を実現することは不可能
→効果的な最低賃金制度の確立は社会保障が機能しうるための前提条件
B労働者階級が生産力の発展に応じてその生活を維持・改善していくためには、社会保
障闘争と同時に、不断の最低賃金闘争が不可欠であり、その成果を前提にしなけれ
ば、社会保障の前進はありえない。
4.貧困な公的年金
オカビアの泉B 西欧ではタダで年金がもらえる (100ビー)
オカビアの泉C国民年金は40年間保険料を払っても、生保水準の半分である (90ビー)
■生活保護より低い国民年金
・40年間保険料を払い続けても月6万6,400円。住宅扶助を除いた生活保護の平均水準8万4
千円より低い
・受給額は月平均4万5千円
・国民年金だけしか受給していない高齢者は900万人
※さらに「マクロ経済スライド」(経済状況や少子化の進行を理由に年金の給付水準を引き下
げるやり方)で実質15%給付水準引き下げ。「現役世代の収入の5割の給付水準を保障」どこ
ろではない
■無年金障害者は12万人以上
■04年金大改悪
@厚生年金保険料を毎年値上げし、18.30%に
A国民年金の保険料は毎年月額280円ずつ引き上げ、厚生年金と同じく17年度に月1万69
00円(現在1万3300円)に
B給付については「マクロ経済スライド」を導入し、給付の自動切り下げを可能に
C国庫負担を1/2に引き上げる名目で、高齢者年金課税の強化、各種控除の廃止、消費税の
増税を行う
5.現状打開の展望―他国の経験も参照に
■応能負担原則を徹底し、大企業の社会的責任を果たせ
オカビアの泉D ヨーロッパでは社会保険料は労使折半ではない (60ビー)
・労働者と使用者の社会保障収入の負担割合
スウェーデン1:14 イタリア1:3 フランス1:2倍強
日本の財界も企業負担少ないと認めている
■逆立ち財政を転換し、国の負担を増やせ
EX.最低保障年金7万円を実現するための財源(全労連試算)
全年金受給者約2500万人×7万円(月)×12月=年間21兆円
国庫負担2分の1にすれば10兆5000億円を確保
+
最低保障年金部分の保険料の使用者負担分を「年金拠出金」に=約5兆2000億円
+
積立金195兆円÷約40年=5兆円取り崩し
消費税の増税は必要なし!!
無駄な公共事業・軍事費の削減、大企業の優遇税制の是正(年3兆8000億円)、完全失業者
400万人の雇用確保による保険料収入増(月30万円の賃金×12月×400万人で2兆円増収)
■非正規労働者も、フルタイム労働で単身者が暮らせる賃金額を(後藤道夫)
生計費原則→最低賃金の大幅引き上げと賃金底上げ
社会保障闘争の諸領域でワーキングプア問題を軸に結合
労働組合は「代理戦争」できる状態じゃない??
■フランスの社会保障から何を学ぶか−労働を軸にした総合的ミニマム保障
日本では、国民生活の「最低保障」は、その成立過程の違いもあって、現在、各制度でバラ
バラとなっているが…
労働組合運動を基礎とした労働者階級の獲得物として「下から」制度の骨格を作り上げた。
@「統一的な単一の組織による一般化」原則A企業負担原則B「民主化」(社会保障の各金庫
の管理運営権を労働者、被保険者に属させる原則)C社会保障は労働無能力者の生存最低
限と区別された不活動の社会的賃金(代替所得)を補償するという原則
■ブレアも最初はいいことをした−英国でのナショナル・ミニマムウエッジの成立
97年総選挙で労働党はナショナル・ミニマムの確立を宣言、その一環として全国一律最賃制
を掲げ、ブレア政権が誕生。ブレア政権はEU社会憲章を承認し、TUCが全国最賃の確立を運
動の重点とする中で、98年に立法化。
地域格差、ジェンダー・ギャップの縮小、「働くものへの援助」
■米国の学生運動は、日本の労働運動よりまじめ?―リビングウエッジ(生活賃金)運動
自治体に対して、自治体が発注する仕事の契約業者や下請け業者を適用対象にした「生活
賃金を支払う条例」を制定させる運動。94年、ボルチモア市で条約成立。ハーバードの学生も
運動の担い手。
「生活賃金」は、生活費の総額を時間あたりの賃金に換算して示したものとなり、「最低
賃金」は法律で定められた最低限度額よりも高くなる。
自治体に対して、それとサービス提供その他の事業契約を結んでいる企業で働く労働者の
世帯が貧困線に落ちないような、一定の時間賃率以上の賃金支払いを義務づける条例の制
定を要求しているのであり、貧しい人々の生存権を守ろうとする「社会正義」を大義として、労
働組合だけでなく、コミュニティ組織、NPOなどとの連携が図られ、民衆の相互刺激、相互啓発
の場として組織されており、「生活可能な仕事口」を創造する都市政策、「全国的な生活賃金政
策」を構想している(戸塚秀夫)。
→日本でも自治労連、自治労、全建総連などが運動
■談合の温床となっている指名競争入札を、総合評価型入札に転換させる
Conf.武藤博己『入札改革 談合社会を変える』(岩波新書)
入札を金額基準から社会的価値基準に変え、最終的には政策入札を導入する。
入札に取り組むべき社会的価値として、@環境への配慮、A福祉(障害者雇用等)、B男女共
同参画、C公正労働基準。「公正労働基準」としてリビングウエッジを盛り込む。
■さらにつきすすんで:「個人化」問題をどう考えるか
全労連の提案は傾聴に値する
ワークフェア(就労のための福祉)からベーシックインカム(基本所得構想)へ