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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070204/ftu_____kur_____000.shtml
昨年六月、財政破たんが明らかになった北海道夕張市は、厳しい冬を迎えている。炭鉱の閉山処理や相次いだ観光施設建設、市の不正な決算処理で膨らんだ赤字は約三百五十三億円。市民には“負の遺産”がずっしりとのしかかる。寒さと募る不安に耐える現地を訪れた。
(鈴木久美子)
「灯油代がかからないように、セーターを一枚余分に重ね着して、ストーブの強さを『小』から『微小』に弱めた。夜は早く床に就き、朝もゆっくり起きる」
先月十四日、市営住宅の一角にあるコミュニティー施設「宮前清栄生活館」で、地元町内会が開いた新年会。楽しそうなカラオケの歌声の一方、生活ぶりを聞くと参加者の広瀬文子さん(72)はこう打ち明けた。集まったのは六十−八十代を中心に四十人ほど。人が集まれば自然と今後の生活の話に関心が向く。
広瀬さんは「毎年、ここには新しい服で来るんだけど、ことしは去年と同じ」と言う。炭鉱に勤めた夫(78)と二人暮らしの橋田正子さん(65)は、これまで購読していた新聞二紙のうちスポーツ紙をやめた。さらに生命線の食事も何か一品減らせるか考えたが「やっぱり食べ慣れた物は、やめられなかった。元気でいるには譲れない」と話す。
橋田さんは神奈川出身だが、長年暮らす夕張の「人の温かさ」が気に入って友達も多い。年金とメロン農家での夏のアルバイト代で、夜、仲間と近所に繰り出すのがささやかな楽しみだ。
だが「近くの飲み屋街も人がいなくなっちゃった。やめて出て行った店もあるし、今月で閉まる店もある」。「なんとなく住みにくくなるね。だんだんと」
夫はがんを患い自宅療養中。診察は、バスで迎えに来てくれる隣町の病院で受けている。急変のときは市立病院が頼りだが、十九床程度の診療所になることが決まり、入院できなくなる。
夕張市では今後、小中学校の統廃合、市民会館の廃止のほか、ごみ収集の有料化、保育料や七十歳以上のバス料金の値上げなど、公共料金や市民税が引き上げられる。それに備え、生活を切りつめざるを得ない。
さらに深刻な問題もある。広瀬さん宅の除雪は、夫(77)と二人がかりで「何とかなる。近所の分も手伝えるくらい」だ。だが、市道の除雪がされなくなったら困る。民生委員などの活動で出かけることの多い広瀬さんは「うちの車は四駆じゃないから、除雪してないと身動きできなくなる」。
隣の地区にある共同浴場、リフレッシュセンター清陵。かつて内風呂のなかった炭鉱住宅を市が買い取り市営住宅とした。そのため共同浴場は炭鉱閉山後も重宝されてきた。
「生活に欠かせない場所。みんな顔を分かってるから、元気かな、と確認もできる」と長年、番台をしてきた大崎利津子さん(65)は言う。それが最近、一日おきから二日おきに入浴を減らしたお客さんもいる。
除雪不足などの行政サービスの低下は外出の機会を奪う。公共施設の廃止で憩いの場も消える。そこに経済負担増が加わり、人々は身動きがとれない。「何とかみんなで元気を出してがんばるしかない」と町内会の海沼栄一会長は話すが、ある女性(59)は「真綿でしめられてるみたい」とつぶやいた。