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小泉信三 【神奈川県立図書館】
小泉信三 （こいずみ・しんぞう） 1888〜1966
経済学者・教育家 〜慶應義塾とともに生きた名文家〜
出生 1888 年（明治21）５月４日（戸籍は10 日）、東京市芝区三田（現・港
区三田）に生まれる。父信吉は、旧紀州和歌山藩士で当時慶應義塾塾長。母
は千賀。1894 年６歳のとき父が死去し、福沢諭吉の邸内に一時住む。
履歴 福沢諭吉死去翌年の1902 年、慶應義塾普通部に編入学、大学部政治科
に進み経済学を学ぶ。1910 年卒業とともに教員に採用され、1912 年から英・
独・仏に留学し、1916 年帰国後教授に就任。1933 年から1947 年まで塾長。
1943 年帝国学士院会員。1945 年5 月25 日空襲で大火傷を負うが再起。戦後、
東宮御学問参与等を務め、現天皇の皇太子時代の教育にあたる。1959 年文化
勲章を受賞。妻とみは、信三の親友だった作家水上瀧太郎の妹。
事績 経済学者として、「古典経済学の完成者」リカード研究に力を注ぐとと
もに、マルクス経済学も深く研究し、保守的リベラリズムの立場からマルク
ス主義を批判した。労働価値説批判はマルクシスト河上肇、櫛田民蔵、山川
均等との論争を引き起こし、当時は護身用の意味もこめてステッキを持ち歩いたという。慶應義塾大
学で多年にわたり学生の教育にあたるとともに、戦後の新しい皇室のあり方にも影響を及ぼした。民
間から皇室に入った美智子妃との「実質的な仲人」ともいわれる。
評価 学者・教育者としての事績にとどまらず、福沢精神の継承者として慶應義塾のシンボル的存在
である。塾長を退任した後の幅広い文筆活動は多くの読者を獲得し、名文家といわれた。仁知勇の知
識人として皇太子（当時）の教育にあたったことは、今日も人々の記憶にとどめられている。
代表作
『福沢諭吉』 福沢諭吉の伝記。岩波新書のロングセラー。全集21 に収録。
『共産主義批判の常識』 一般の人々もわかりやすい表現で、共産主義批判やマルクシズムの本質を
論じた本。原本は1949 年のベストセラーで、当館のベストセラーズ文庫にもある。全集10 に収録。
『海軍主計大尉小泉信吉』 1942 年24 歳で戦死した長男信吉を偲んで、1946 年私家版として作成し
親戚知友に配布。公刊を望む声は多かったが、生前は再び読み返すことが悲しいとこれを許さず、信
三の死後刊行された。長男の名前信吉（しんきち）は、信三が幼くして死別した父信吉（のぶきち）と読み
だけ変えて名づけられた。子への哀惜の念は今も人の心を打つ。全集11 に収録。
ｷｰﾜｰﾄﾞ 秩序ある進歩 「くり返し進歩を願う、しかし『秩序ある進歩』を願う」（全集17 の同名著
作の言葉） スベテ練習ハ不可能ヲ可能ニス 信三はスポーツマンで慶應義塾普通部２年のとき庭球
（テニス）部に入り大学時代には主将として活躍し、教授となった後には庭球部長にも就任している。
生前好んで口にしたこの言葉を刻んだ碑が慶應義塾大学日吉キャンパスにある。
神奈川 1891 年父が横浜正金銀行支配人となり横浜市桜木町に移り住む。1894 年横浜小学校に入学し
たが、父の死により1895 年東京に戻った。後年「東京に生まれて、ずっと東京で暮らしましたから、
故郷というものがない。強いていえば初めて物心のついたこの横浜がそれで、（略）用もないのに横浜
に来て海岸を散歩し、ホテル・ニューグランドで茶を飲んで帰るというようなことをよくしました。」
（『私の履歴書』）と記している。当館に自筆原稿『横濱』＜K98.1／3＞がある。また、1916 年結婚し
て鎌倉小町に住み、長男信吉・長女加代はこの時代に生まれたが、関東大震災に遭い東京に移転した。
最期 1966 年５月11 日、心筋梗塞のため自宅で死去。享年78 歳。
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/denshi/g_works/gw26_koizumi.pdf
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