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旧東独の監視社会の残酷さ描く映画、日本でもヒット中
http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200703140224.html
2007年03月14日
世界各地で30以上の映画賞を獲得し、先月末に米アカデミー賞外国語映画賞も受賞したドイツ映画「善き人のためのソナタ」が日本でもヒットしている。盗聴や密告が横行した冷戦末期の東ベルリン社会を生々しく描く。監督・脚本は33歳のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。5年間温めた野心作で鮮烈なデビューを飾った。
国家保安省(シュタージ)による監視網が張り巡らされた旧東ドイツ。反体制活動を監視する主人公は、人気劇作家と女優のカップルの自宅を盗聴するよう命じられる。芸術論や恋人たちの睦言(むつごと)、ピアノの調べ、ブレヒトの詩……盗聴器から伝わる別世界が、党への忠誠だけで生きてきた男の心を静かに揺さぶる。
「ベートーベンの『熱情』を聴くと優しい気持ちになるから、革命家には向かない」。レーニンが語ったという言葉が創作のヒント。盗聴者の耳に突然美しい音楽が流れる図が頭に浮かび、冷徹な男の人間性回復のドラマに発展した。
「母親が東ドイツ出身なので、当時の緊張感はよくおぼえている。冷戦時代を外から描くのではなく、そこに生きた人間の感情を再現したかった」
身長2メートル5センチの「大型新人」は、滑らかな英語でこう語る。少年期を米国で過ごし、ロシア留学を経てオックスフォード大で政治学などを専攻。在学中にリチャード・アッテンボロー監督の薫陶を受け、名門ミュンヘン映像大学に進んだ。自ら認める完全主義者。当時の模様を徹底的に調べ、監視社会の残酷さを多面的に描いた。
「証言者には事欠かなかった。主人公を演じたウルリッヒ・ミューエは学生時代からシュタージに監視され、前妻からも密告された。でも、別に珍しいことではない。そんな社会だったのです」
ドイツでは昨春公開。「グッバイ、レーニン!」のヒットなどで広がった東ドイツ回顧ムードが、この作品の登場で一気に冷めたという。
「社会の変化に疲れた人が、失われたものを懐かしむ気持ちはわからないでもない。だが、本当に『東ドイツ時代はよかった』のか。現実から目をそらすために過去を美化するほど愚かなことはない」
ベルリンの壁崩壊前夜の物語だが、「核心部分はどの時代、どの社会にも共通する」と語る。
「最も伝えたかったのは、権力構造を持するために個人の感情を犠牲にする“心理的拷問”の残酷さ。家庭、学校、企業……身近なところにも危険が潜んでいるかもしれない。そう考えるきっかけになれば本望です」
東京・渋谷のシネマライズなどで上映中。
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