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□自滅の仕上げに入った米イラク戦争 [田中宇の国際ニュース解説]
田中宇の国際ニュース解説 2006年12月5日 http://tanakanews.com/
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★自滅の仕上げに入った米イラク戦争
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11月7日にアメリカの中間選挙で民主党が勝ち、ブッシュ大統領の共和党
は米連邦議会の上・下院とも多数派を奪われてしまって以来「アメリカはイラ
クから早く撤退する戦略に転換するのではないか」という見通しが、世界中で
高まっていた。
しかし、それから1カ月が過ぎて、ほぼ確定しつつあることは、米軍はイラ
クから撤退する方向には転換しないということである。アメリカやアラブの政
界では「ブッシュ政権は、イラクに影響力を持っている北隣のイランや西隣の
シリアに対する敵視をやめて、イラクの安定化に向けてイランやシリアにも協
力を仰ぐべきだ」という声も強かったが、その点も変化せず、アメリカはイラ
ンとシリアを敵視したままである。
http://fairuse.100webcustomers.com/fairenough/nyt669.html
11月29日にブッシュがイラク隣国のヨルダンを訪問し、そこでイラクの
マリキ首相と占領政策について話し合ったが、新味のあることは何も出てこな
かった。これと前後して、イラク戦争の作戦変更について検討していたブッシ
ュの顧問的な超党派組織「ベーカー委員会」(イラク研究会)が、イラクから
の撤退は時間をかけて行うというブッシュ政権の従来の方針を踏襲した方針し
か出さないことが、米マスコミで報じられた。
http://fairuse.100webcustomers.com/fairenough/nyt669.html
ベーカー委員会は、イラクの泥沼化を引き起こしたチェイニー副大統領らネ
オコン(タカ派)のやり方に反対する勢力によって構成されており、イラクか
らの早期撤退への方針転換を実現すると米マスコミで予測されていたが、それ
は肩すかしに終わった。
http://www.economist.com/world/na/displaystory.cfm?story_id=8359999
ブッシュは中間選挙の敗北後、ラムズフェルド国防長官を辞任させ、後任に
はベーカー委員会のメンバーであるロバート・ゲイツが指名されたが、ゲイツ
は就任前の議会上院からの質問への返答の中で、ラムズフェルドの方針をほぼ
踏襲すると表明している。この点でも、予測されていた方針転換はなさそうだ。
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/HL01Ak01.html
http://www.antiwar.com/mcgovern/?articleid=10083
イラクは、各派の反米ゲリラが跋扈する状況がひどくなっている。アメリカ
の傀儡色が強いイラク政府が統治するのは、米軍とイラク政府が本拠地として
いるバグダッドのグリーンゾーンのみである。米軍によるゲリラ掃討作戦は、
このところすべて失敗している。状況は今後急速に悪化しそうだと、米軍自身
が予測している。
http://fairuse.100webcustomers.com/sf/nyt11_29_6.htm
http://www.defencetalk.com/news/publish/wars/US_Military_Predicts_Surge_in_Violence_in_Iraq13009209.php
イラク以外のアラブ諸国では、国内の反米世論が強まり、親米の政府が窮地
に陥っている。こんな危機的な状態なのに、ヨルダンまで来て何の新政策も決
められずに帰っていったブッシュ大統領に、アラブ諸国は唖然としている。
ブッシュ政権は、イラクだけでなく中東全域を破壊しつつある。
http://www.nytimes.com/2006/12/01/world/middleeast/01arab.html
▼アメリカの計画的自滅策
イラク戦争は、いくつもの点で、アメリカにとって「計画的な自滅」である。
その一つは、ブッシュ政権がイラクに侵攻する理由となった「サダム・フセイ
ンは大量破壊兵器を開発している」という主張が、ネオコンによる誇張に基づ
いたでっち上げであることが確定し、アメリカは国家犯罪を犯したと世界の人
々が考えるようになったことである。
この問題で重要なのは、フセイン政権は本当に大量破壊兵器の開発をしてい
なかったのかどうか、という最終的な「事実」ではない。でっち上げの理由で
イラクを侵略して破壊したことを、アメリカの中枢や大手マスコミが認め、そ
れが事実として世界の人々の頭の中に定着したという「認識」の問題である。
アメリカの中枢やマスコミは、黒を白と言いくるめるプロパガンダの達人たち
なのだから、自国の国家犯罪を認めず、上手に世界の人々の認識を操作するこ
ともできたはずだ。それがなされず、アメリカの「有罪」を確定させた点で、
大量破壊兵器の問題は「意図的な自滅」である。
自滅の2点目は、イラクを占領した米軍が、イラク人を故意に怒らせ、反米
感情を扇動したことである。反米ゲリラが跋扈して治安が悪化したため、予定
されていた復興も進まず、イラク人の生活は全く良くならず、逆に悪化した。
たとえば、イラクの病院の総数は、米軍侵攻前より減っている。新しい病院を
建てる計画はいくつも米英などの机上で作られたが、一つも実現していない。
イラクの惨状は、衛星放送「アルジャジーラ」などで中東じゅうに伝えられ、
イスラム世界の反米感情を煽った。
アメリカは、国際問題の専門家が世界で最も多い国で、これまでに多くの国
家再建を手がけている。上手にやれば、イラクを親米の国として再建すること
は可能だった。ところがブッシュ政権は、イラク占領を担当する責任者のポス
トに未経験の人ばかりをあてた。その一方で、中東専門家の多くを「アラブや
イスラムに寛容すぎる。テロを容認する傾向がある」として要職から排除した。
もしイラクが世界のメディアによって自由に取材できる地域であり続けたら、
これらの「失策」は暴露され、ブッシュ政権は世論の圧力を受けて、もっとま
ともなやり方に変えていたかもしれない。だが、米軍占領下のイラクでは「ゲ
リラ」による記者の誘拐が頻発し、イラクは危険なので取材できない場所にな
り、実状は外部に伝えられなかった。
記者の誘拐は、すべてアメリカと敵対関係にあるゲリラの犯行とされている
が、ゲリラの素性も確定的には分かっていない。米軍は、イラクに7万人と言
われる下請け的な傭兵組織を持っており、傭兵の多くは米軍特殊部隊の元要員
である。このような非正規の特殊部隊を使えば、ゲリラを扇動して記者の誘拐
をやらせるのは難しくない。
▼世界を騙して多極化する
イラクでの計画的な自滅は、おそらく、チェイニーらブッシュ政権内の「隠
れ多極主義者」による、世界を多極化する戦略の一環である。従来、世界の中
心はアメリカであり、アメリカの傘下に欧州や日本が先進国として存在し、
G7など先進国間の談合で世界が運営されてきた。しかし、先進国はすでに経
済が成熟してこれ以上の経済発展が望めない。それで、先進国以外の勢力にも
世界の覇権を分散し、発展する地域がいくつも新設されるよう、世界を誘導す
るのが多極化戦略である。
(政権内でも、当のブッシュ自身は、何も理解しておらず、側近にうまく言い
くるめられているだけだろう)
多極化戦略は、世界全体としての経済成長を促進するが、先進国の覇権や経
済力を低下させるので、ブッシュ政権が「これから多極化をやります」と明言
して実施したら、アメリカや他の先進国では多極化を阻止しようとする動きが
強まる。特に、アメリカの覇権を利用して国力を拡大してきたイギリスとイス
ラエルは、米政界に強い影響力を持っているので、騙す必要がある。
そこでブッシュ政権は、アメリカの覇権を強化するかのような「単独覇権主
義」を宣言した上で、アメリカが単独覇権主義をやりすぎた結果として覇権を
失う、というシナリオを実行していくことで、途中で阻止されずに多極化を実
現しつつある。
http://tanakanews.com/g0613UKUS.htm
▼テロ戦争をやりすぎて多極化する
話が複雑になって恐縮だが、もう一つ多極化戦略とねじれた関係にあるのは、
911事件をきっかけにした「テロ戦争」である。テロ戦争は、もともと
「アメリカを先頭に世界が結束し、世界的なテロリストの脅威と戦う」という、
アメリカ中心の世界体制を強化する戦略として開始された。1990年に終わ
った冷戦(米ソ対立)のからくりをバージョンアップし「敵」をソ連という実
態のある(潰れ得る)ものから、アルカイダという実態のないもの(米英イス
ラエルの諜報機関が実態を操作できる、潰れることのないもの)へと進化させ
た「50年戦争」である。
http://tanakanews.com/e0914wtc.htm
ブッシュ政権内の多極主義者は、このテロ戦争を止めるのではなく、逆に過
激にやりすぎることで、アメリカを自滅に導き、アメリカの覇権にとりついて
いたイスラエルとイギリスを振り落とし、NATOをアフガンで自滅させ、国
連をロシアや中国が活躍する場所にして、世界を多極化している。テロ戦争と
いう、アメリカ中心主義者による策略を故意に失敗させることで世界を多極化
するという、妙策が行われている。
ブッシュ政権の多極主義者にとって、最も心強い「味方」は、イランのアハ
マディネジャドや、ベネズエラのチャベス、ロシアのプーチンといった、アメ
リカの覇権を嫌う指導者たちである。ブッシュ政権は、彼らを名指しで敵視し
て「反米の英雄」に仕立てた。アメリカが自滅に向かうのに合わせて、チャベ
スは中南米、アハマディネジャドは中東、プーチンはユーラシア西部で、最大
級の指導者になりつつある。
アメリカが敵視しがちな勢力の中でも、たとえば中国の共産党政府(胡錦涛
政権)は、中国の商品をアメリカに売ることで儲けているため、アメリカに敵
視されることを好まず、多極主義者の扇動に乗らないようにしている。中国は、
東アジアでの自国の覇権はある程度拡大したいものの、世界的にアメリカが覇
権や経済力を失うことを望んでおらず、アメリカに頼まれても、中国は人民元
の対ドルペッグを外したがらない。ブッシュが「人民元ペッグ外し屋」として
雇ったポールソン財務長官が、来年にかけて、この行き詰まりをどう打ち破る
かが注目される。
http://www.iht.com/articles/2006/11/29/opinion/edmoeller.php
http://www.atimes.com/atimes/China/HK11Ad01.html
中東でも、イラン(シーア派)のライバルであるサウジアラビアやエジプト
といったスンニ派のアラブ諸国の政府は、中国と同様、アメリカ中心の世界体
制の方が心地よいと思っている。
おそらく多極主義者は、最終的には、イラクを強くて反米の産油国に仕立て、
米軍は決定的な敗北を喫して不名誉な撤退を余儀なくされるというシナリオに
したいだろう。イラクとイランという2つの大産油国が反米の国になったら、
その影響で、サウジやエジプトなども親米をやめざるを得なくなる。
▼民主党もぐるだった
イラク占領の泥沼化は、ブッシュ政権の多極化戦略の最重要の柱として「順
調」に進んでいるが、同時に、アメリカの政界や世論の中からは「イラクの泥
沼を早く何とかすべきだ」という主張が強まっている。その一つの表れが、中
間選挙での共和党の敗北だった。
どうやら、ブッシュ政権の共和党だけでなく、ライバルである民主党も、上
層部は隠れ多極主義者のようで、前回の大統領選挙で民主党候補となったジョ
ン・ケリーも、次回の大統領選挙で民主党候補になりそうなヒラリー・クリン
トンも、隠れ多極主義者の特徴である「過剰な強硬派」という点で、ブッシュ
政権の人々と同様である。
http://tanakanews.com/g0331neocon.htm
民主党も上層部は隠れ多極主義者が席巻している限り、議会の多数派がどち
らの政党になっても、自滅的な強硬策が続けられることには変わりがない。実
際、中間選挙後、議会の多数派になった民主党は、当初はイラクからの早期撤
退を実現しそうな勢いだったが、1カ月経ってみると「無理に撤退するとイラ
クが内戦になってしまう」などという主張が強くなり、しりすぼみになっている。
ブッシュ政権のもう一つの多極主義的な特徴として、軍事費などの予算を過
剰に大盤振る舞いして、財政赤字を野放図に増やし、アメリカを財政破綻に追
い込もうとしていることがある。中間選挙で民主党が勝ったことで、予算の大
盤振る舞いに歯止めがかかるのではないかと選挙直後の米マスコミでは分析さ
れていたが、その後、国防総省が1270億ドルという史上最大級の臨時予算
を要求したところ、民主党は反対する姿勢をとらず、来年1月の議会ですんな
り通ってしまいそうである。この点からも、米政界の中枢では、超党派で隠れ
多極主義が席巻しているように見える。
http://fairuse.100webcustomers.com/fairenough/latimes594.html
http://news.yahoo.com/s/ap/20061130/ap_on_go_co/funding_iraq
▼ベーカー委員会はガス抜き策
アメリカは二大政党制を装った独裁になっているわけだが、それに有権者の
多くが気づくと、3つ目の政党が台頭したりして、隠れ多極化戦略が阻止され
てしまう。それではまずいということで、ベーカー委員会を使った「ガス抜き」
が行われている。
ブッシュ政権では911以前から、政権内に「タカ派」(強硬派、右派)と
「中道派」(穏健派、現実主義者)が対立しているという見方が、米マスコミ
によく出ていた。タカ派は同盟国など要らないという単独の覇権主義、中道派
は国際協調的な隠然とした覇権主義である。911によってタカ派が中道派を
追い出して無茶なイラク侵攻を挙行したが、その後の泥沼化を受け、救世主と
して中道派のベーカー元国務長官がブッシュの顧問として戻り、ベーカー委員
会を作ってアメリカをイラクの泥沼から救うという筋書きの話が、今年9月ご
ろから米マスコミに載るようになった。
http://www.antiwar.com/lobe/?articleid=9845
しかし、ベーカー委員会は、ブッシュ政権の方針を何も変えそうもない。ベ
ーカーらは「現実主義」なので、事態をゆっくり変えるソフトランディングの
方針で、いずれブッシュ政権は方針転換するという見方も可能だが、もうアメ
リカはイラク占領をゆっくり続けている時間的な余裕がない。早くイラクから
撤退しないと、中東で反米イスラム主義が拡大し、レバノンやパレスチナなど
で反米親イランの政権が確立され、取り返しがつかなくなる。為替市場でドル
が売られ、住宅バブルの崩壊で景気も悪化し始め、アメリカは経済的な覇権も
陰り出している。もうアメリカの方向転換は、時間切れになりつつある。
ベーカー委員会は、中道派としてタカ派がやった無茶苦茶からアメリカを救
うのではなく、むしろ最初から、タカ派と中道派の対立の方が演出されたもの
であり、アメリカを自滅させて世界を多極化するという、ブッシュ政権の隠れ
た目的を人々に分からせないようにするための煙幕として機能しているのでは
ないか、と疑われる。
▼イラク内戦説は疑問
「米軍が撤退したら、その後のイラクは内戦になるので、軽々に撤退できない」
という説もあるが、イラクが本当に内戦になりつつあるのかどうかは疑問であ
る。最近、アメリカのマスコミで「イラクは内戦になっている」と指摘する分
析がたくさん出されているのは確かである。
しかし、イラクの各武装勢力間の関係は、殺し合うときもあるが、基本的に
は日本の暴力団どうしの関係や、昔の戦国大名どうしの関係に似ており、どち
らかが完全に潰れるまで戦う徹底内戦ではない。ゲリラは各派とも、同じ宗派
の地縁血縁のネットワークの上に成り立っており、自派の勢力範囲の地域に住
む人々(領民、一族)の生活を守ることが、各派の存在基盤である。利権争い
はあるが、できる限り交渉とか脅しによって解決し、流血は避けようとする。
報じられている「内戦」は、相互の憎しみを煽るようなものばかりだが、そ
れは地縁血縁をベースにしたゲリラの行動としては理解しにくい。イラクは、
長い歴史を持った文明社会で、人々は社会内部の問題を解決するための気配り
や社会規範を持っている。組織間で対立する場合は、白昼に通行人を殺すので
はなく、もっと巧妙で目立たない暗闘を行うはずである。
最近「シーア派がスンニ派のモスク参拝者にガソリンをかけて火をつけ、6
人を殺害した」という事件をアメリカのAP通信が報じたが、この報道は架空
のイラク人警察幹部を情報源に見立てて書いた、でっち上げ報道だった可能性
が指摘されている。イラクは記者が誘拐されたりして危険なのでマスコミ他社
が報道の検証をできず、扇動的なウソ報道がまかり通る状況にある。
http://www.editorandpublisher.com/eandp/news/article_display.jsp?vnu_content_id=1003466311
すでに述べたように、イラクにはアメリカ国防総省傘下の傭兵軍団が7万人
も存在しており、彼らがスンニ対シーアの「内戦」を扇動する殺害作戦を続け
ているのではないか、という指摘もある。
http://www.aljazeera.com/cgi-bin/review/article_full_story.asp?service_ID=12592
▼アメリカとゲリラの板挟みで弱るイラク首相
イラクでは今後、シーア派の中の最大勢力であるサドル師の派閥が、スンニ
派など他の勢力に呼びかけて、反米の連合戦線を組織し、イラク議会を席巻し
ようとする動きが強まりそうである。サドル派によると、275議席のイラク
議会のうち、すでに100人の議員が、反米連合戦線に参加する意向を表明し
たという。
http://news.yahoo.com/s/afp/20061130/wl_mideast_afp/iraqpoliticssadr
http://www.cnn.com/2006/WORLD/meast/11/30/iraq.politics/index.html
イラクのマリキ首相は、アメリカの認知のもとに首相になったが、政治基盤
が弱いので、シーア派の最大勢力であるサドル師の一派に頼らざるを得ないが、
イラン寄りのサドルは最近、アメリカの敗色が濃くなり、イランのアハマディ
ネジャド政権が強気になっているのに合わせて、反米の傾向を強めている。
11月29日にブッシュがヨルダンでイラクのマリキ首相と会う予定が出て
きた時、サドルは「マリキがヨルダンまでブッシュに会いに行くのなら、もう
マリキには協力しない」と表明した。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/29/AR2006112901624_pf.html
サドルに離反されたら、マリキ政権は崩壊してしまう。マリキは、11月29日
から2日間の日程で予定されていたブッシュとのイラク対策会議(ヨルダン
国王との3者会議)を、土壇場でキャンセルした。その後、マリキはアメリカ
から圧力をかけられ、結局会談は1日遅れで始まり、2日間の日程が1日に短
縮された。
http://www.nytimes.com/2006/11/30/world/middleeast/30prexy.html
マリキは、サドルとアメリカの両方の顔を立てようとしたがうまくいかず、
サドル派はイラク政府への支持をやめ、マリキ政権に送り込んでいた6人の閣
僚を辞任させた。
http://news.yahoo.com/s/nm/20061129/ts_nm/iraq_dc
アメリカは、イラクの政府軍や警察を訓練して強くして、彼らに反米ゲリラ
を掃討させることでイラクを安定させ、米軍を撤退させる戦略を採っている。
アメリカは、首相のマリキに資金とアドバイスを与えて、サドル派や、スンニ
派のゲリラを退治させようとしてきた。
しかし現実的には、サドルやスンニ派は、イラクのほとんどの地域で、地元
の人々に支持されて行政権を握っており、マリキのイラク政府は、実際の統治
権を持っていない。マリキがイラクを統治しようと思ったら、サドル派などの
ゲリラとの敵対を避けねばならない。アメリカがマリキにサドル派を退治させ
ようとしているのは、実現不可能な夢物語である。ブッシュ政権のイラク撤退
案は、この夢物語を前提にしており、実現性が薄い。
アメリカがイラク占領を長引かせているうちに、イラク人は宗派を超えて反
米で結束し、いずれイラク議会の過半数が反米連合戦線に入って、米軍撤退要
求を決議する展開になりそうである。
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/g1205iraq.htm