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撤退後のサマワ:
自衛隊の残したもの/1(その1)
「贈り物」野ざらし
陸上自衛隊が2年半駐留したイラク南部ムサンナ県サマワで、日本政府から贈られた大型のアスファルト製造機器類が野ざらしになっている。組み立てられないまま放置された機器は、関係者間の行き違いから復興支援の一部が「空回り」している実態を象徴的に示している。サマワでは、改善しない生活環境に対する住民の不満を吸い上げる形でイスラム教シーア派強硬派が勢力を拡大している。復興支援を通じて自衛隊が刻むはずだった友好の記憶は遠のきつつある。【サマワで小倉孝保、社会部・反田昌平、外信部・草野和彦】
◇契約手違い受け取り拒否−−1億円の「アスファルト工場」
サマワ中心部から車で約10分の砂漠に真新しい機械が姿を現す。長さ十数メートルの金属の塊が酷暑の陽光を照り返す。外務省が「草の根無償資金協力」でサマワ市に提供した機器類だ。契約額約1億円。組み立てれば「アスファルト工場」になる。だが、同市が機種違いを理由に受け取りを拒否し、10カ月間、一度も使われたことがない。
サマワ市は昨年8月、「イタリア製または他の欧米諸国製の提供」との内容で日本外務省、地元請負業者と契約した。しかし、同年11月に到着したのはアルメニア製だった。「現物を見て驚いた。約束と違うとは思いもよらなかった」。同市のハイダル・アベド・ジャベル民生局長が語る。
請負業者のナウィール・アムラス社長(35)はアルメニア製への変更を外務省に相談したと主張、「イタリア製だと8カ月も輸入が遅れ、価格も予算を超える」と釈明する。製造機到着の数日後、外務省側は「日本からの贈り物だから受け取ってほしい」と市に説明、契約書の修正を提案した。だが、ジャベル局長は「市は受け取るわけにはいかないとつっぱねた」と話す。
外務省は業者に契約金全額を支払い済みだ。現場で調整にあたった同省国際協力局無償資金・技術協力課の近藤茂課長補佐は「業者には契約通り納入するよう指導した。欧米製でないアスファルト製造機が届いて市が受け取りを拒んでいるのは不幸だが、イラク人の現地スタッフを通じて受け取るよう働きかけを続けている」と説明している。
◇ ◇ ◇
「宿営地の引き継ぎ式典を準備していたが、私たちにも知らせずに姿を消した。4時間前に裏門から逃げていた」。7月16日の陸自撤退をイラク陸軍幹部が振り返る。地元住民による空調機器などの備品略奪も起きる中、宿営地がイラク陸軍に渡ることに反対する部族関係者ら約30人が同日早朝から正面ゲート前に座り込んでいたため、陸自は裏門を選んだのだ。
陸自幹部は「混乱を避け安全に出るためだった。式典は行えなかったが、イラク陸軍部隊の到着を待って出発した」と説明する。だが地元住民に祝福されるはずの任務完了は隠密下での引き揚げという結果になった。
宿営地には高性能の浄水設備や空調機器などの高価な備品があった。生活・社会基盤の再建途上にあるイラクで宿営地は「高根の花」で、現在、「跡地の使用権をイラク陸軍、ムサンナ県、部族が主張している」(イラク陸軍幹部)状態だという。
ロケット砲の攻撃にも耐える施設を持つ宿営地の特性に配慮し、陸自は譲渡先にはイラク陸軍が適当と判断。ムサンナ県一帯を担当するイラク陸軍部隊が使用することで同県知事の了解を得て引き渡したという。しかし、県知事の秘書は「県は宿営地の使用や備品引き渡しを協議する委員会の設置を自衛隊に求めていたが、突然の撤退で十分に協議することができなかった。撤退は混乱を招いた」と主張する。
◇ ◇ ◇
陸自がサマワ撤退を完了して2カ月半。学校修復、給水活動、道路補修など日本による復興支援の現場を歩いた。住民には一定の評価を得ているものの、課題も残した。サマワの今を報告する。<2面につづく>=次回から2面に掲載
毎日新聞 2006年10月3日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2006/10/03/20061003ddm001010005000c.html
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