★阿修羅♪ > 社会問題3 > 259.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
(回答先: Re: 社会保障と新自由主義 /ブログ「医療制度改革批判と社会保障と憲法」より 投稿者 ubazakura 日時 2006 年 7 月 09 日 23:44:40)
社会保障と新自由主義 2
http://blog.goo.ne.jp/harayosi-2/e/d0ffc4157ce348478adff9dbf492c40c
■日本の社会保障の変遷
*社会保障制度の変遷を、年代ごとに整理
☆1950年代 憲法25条をふまえた関係諸法の整備をはかり、社会保障制度審議会の答申にもとづき、諸制度の整備がすすめられた。
☆1960年代 社会保障関係諸法にもとづき、社会保障制度の整備を進め、国民健康保険・国民年金の創設により、国民皆保険・皆年金が発足した。高度経済成長に支えられ、福祉施策が拡充されていった。
☆1970年代 社会保障制度のさらなる拡充を求める運動が高揚し、年金制度の改善、老人医療無料化をはじめ福祉医療制度などの充実が進んだ。
☆1980年代 第2臨調・行革攻撃が開始され、老人保健法を梃子に老人医療の改悪、さらに健康保険制度改悪へ、年金制度の改悪も開始された。(中曽根第2臨調・行政改革)
☆1990年代 年金の支給水準を下げ、支給開始年齢を繰り下げ、掛け金の引き上げ、また、老人医療、医療制度、健康保険の改悪など、社会保障制度のさらなる後退となる。(橋本構造改革・規制緩和)
☆2000年代 02年、06年と2度にわたる医療制度改革関連法の成立、それにもとづく改悪が、また、その他諸制度改悪も進み、社会保障制度破壊の局面にいたる。(小泉構造改革)
以上のような、整理になるのではないか。
*新自由主義による社会保障への攻撃
1、年代ごとの整理から、1980年代以降の展開が、当時、新古典主義とか新保守主義と呼ばれ、現在では新自由主義と呼ばれている理論を踏まえての、攻撃であったといえる。福祉国家政策を攻撃し、社会保障制度を後退させ、破壊するという、資本主義の先祖返りのような、攻撃が展開された。
それは、福祉国家の基本である、国民の福祉のために、経済に国家が介入する政策、これを、構造改革・規制緩和と称して、デマ宣伝を先導役にして攻撃したのである。しかし、それは単に先祖返り、反動的改革というだけではなく、社会保障制度を後退させ、財政支出を削減すると同時に、そのことを通して、資本のさらなる利潤拡大のため、それらを営利の対象として、資本に献上したのである。
2、中曽根第2臨調・行政改革以来の、国営企業の民(私)営化攻撃の本質は、国民の共有財産を独占資本が掠め取るということであり、小泉内閣の郵政民営化で、かつて公労協と呼ばれ強力な労働組合が存在した、その公営企業の民(私)営化は、すべて完了した。
行政改革は、数次にわたる公務員攻撃・行革攻撃をへて、現在なお公務員制度改革という名で、現在進行形である。
もうひとつの柱であった老人(医療)攻撃は、年金制度の改悪、介護保険制度の創設、老人医療制度の改悪を梃子に、公費医療、福祉医療、一般医療制度の改悪がくり返された、社会保障制度改悪のひとつのモデルとして、高齢者施策の変遷を検証する。
*高齢者施策の変遷 老人医療制度を軸に検証
1980年代からの、老人(医療)攻撃や高齢者いじめの実態を、高齢者施策の変遷として、年表にまとめた。
高齢者施策の変遷 <老人医療制度を軸に検証>
1969.12 革新美濃部知事の下、東京都で全国初の「老人医療無料化」を実現
1970年代初 老人医療無料化、革新自治体を中心に全国に波及
1973.10 福祉元年 「老人福祉法の改正」で老人医療無料化の法制化
自治体は、「老人医療費助成制度」で所得制限緩和と年齢前倒し実施
健康保険に「高額療養費制度」発足 公費医療制度充実
1970年代中 老人医療に続き、乳児医療、障害者医療無料に
母子家庭医療無料化など、福祉医療制度充実
1981.4 第二臨調・行政改革 土光会長・中曽根長官
1982.11 中曽根内閣発足 サッチャー・レーガン・中曽根路線
マスメディアを臨調側に取り込み、プロパガンダ機関として活用
老人(医療)攻撃のデマ宣伝キャンペーン 国労・公務員攻撃なども展開
1983.2 老人保健法施行 一部負担金の導入 この法で老人医療をコントロール
1984.10 健保本人1割負担導入(健保本人10割給付崩される)
少子高齢化、高齢者医療費の増高、老人の社会的入院などのキャンペーン
1990年代通 老人医療の一部負担金のさらなる増額
1996.1 橋本内閣発足 橋本行革 構造改革・規制緩和
介護問題の深刻化など、介護保険導入のためのキャンペーン
1997.9 健保本人2割負担
2000.4 介護保険制度スタート
公費による措置から保険に 社会保障制度改悪のための雛型
医療事故など医師・医療機関不信を煽るキャンペーン
2001.1 老人医療に一部定率負担が導入される
2001.4 小泉内閣発足 小泉構造改革「骨太の方針」 医療制度改革大綱
2002.4 『診療報酬』 史上初のマイナス改定が実施される
2002.7 医療制度改革関連法案一括成立
2002.10 老人医療に定率負担導入 健康保険法・老人保健法などの改悪が実施される
6ヶ月超の入院患者に特別負担導入
福祉医療・公費医療制度の後退が進む
2003.4 健保本人・家族ともすべて原則3割負担に
介護保険料(第二期)引き上げ
2004.1 16年税制改悪実施 配偶者特別控除の上乗せ分廃止
(所得税は現年に、住民税は翌年に反映)
2004.4 6ヶ月超の入院患者の特別料金全面実施
2005.1 17年税制改悪実施 公的年金控除切下げ 老年者控除の廃止
老年者非課税枠の廃止 定率減税半減・廃止
2005.10 介護保険利用者負担増 食事負担1380円〜・居住費負担320円(多)
1970円(個)〜 厚生労働省「医療制度構造改革試案」発表
2005.12 政府・与党医療改革協議会「医療制度改革大綱」決定
2006.4 介護保険料(第三期)引き上げ 一期2900円、二期3300円、三期4300円基準額
2006.6 医療制度改革関連法成立 17年税制改悪が、地方税、国保・介護保険料に反映、
負担増が高齢者を襲う
2006.10 70歳以上の現役なみ所得者の3割負担先行実施介護保険負担増とみあいで、
療養病床の食事費負担増と居住費負担導入
2007.10 老人保健法75歳移行終了(5年の経過措置終了)
2008.4 新高齢者医療制度スタート 後期高齢者だけの健康保険が発足 平均年
7.4万円保険料 原則1割負担
前期高齢者の窓口負担、69歳まで3割負担継続、74歳までは2割負担となる
*デマゴーグ(煽動政治)に奉仕するマスメディア
1、1980年代の中曽根第二臨調・行政改革は、マスメディアを臨調側に取り込み、プロパガンダ機関として活用する、という手法をとったことが、大きな特徴である。福祉国家政策や社会保障制度に対する攻撃は、マスメディアの大量反復デマ宣伝によって、達成することができたのである。
それが、国鉄・国労たたき、公務員攻撃、いわれなき老人(医療)攻撃であり、こうした連日の一大キャンペーンを展開することなくして、このような反動的で、露骨きわまりない政策を、進めることはできなかったといえる。繰り返し、繰り返し、意図的な報道が、集中的に展開されたのであり、そうしたデマ宣伝を通じて、国鉄の分割民営化を強行し、公務員を削減し、老人医療無料を潰してきたのである。
2、マスメディアも、そのすべてが一気に靡いたわけではなく、資本や権力からの、様々な圧力がかけられるなかで、変化していったとみるべきで、その一例を紹介したい。
1990年、厚生省の「医療費が20兆円を突破した、昨年も1兆円増であり、今後毎年1兆円増加する見通しで、このままであれば、大変なことになる」という発表に対して、A新聞の社説は「20兆円という日本の医療費は、決して高くないこと、GDP(国民総生産)に占める医療費の割合が、OECD(経済協力開発機構)29ヶ国中18位であり、平均値をも下回っていること、さらに、その少ない医療費で、WTO(世界保健機構)の医療に対する指標評価(健康寿命・乳児死亡率など)が、世界一の水準にあること」を紹介し、批判を展開していた。
2000年、厚生省の「医療費が30兆円を突破した、1割の老人がその3分の1をつかっている」という発表に対し、A新聞の社説は、まったくの様変わりで、批判どころか提灯記事となっていた。
しかし、GDPに占める医療費の割合も、OECD中の順位も、WTO評価1位も変っていない、変ったのはA新聞の社説だった。
3、この間、ある課題問題について、マスメディアこぞっての集中的なキャンペーンが展開され、その後に来たものは、3度にわたる年金制度の大改悪であり、3回くり返された老人医療の改悪と、それに連動した一般医療保険の制度改悪であった。
また、1990年代半ばから、高齢者介護問題のキャンペーンが、きわめて長期にわたり展開された。それは、社会保障制度改悪の雛型としての、介護保険制度創設のためのものであった。数えきれないほどの問題点を含み、また、社会保障制度の質的転換を意味する介護保険制度を創設するための、総力をあげての宣伝戦であったと、捉えなければならない。
公務員攻撃が数次にわたってかけられ、人員削減から中央省庁の再編へと進められ、また、平成の大合併による自治体の再編統廃合と人員削減が強行されてきた。そして、社会保険庁・社会保険事務所への攻撃が重ねられ、市職員厚遇問題を梃子に、全国の自治体へ攻撃が展開されてきている。
その真の狙いは、社会保障・社会福祉の担い手である、社会保険職員・自治体職員の大幅削減であり、その組織の解体や統廃合であり、福祉国家政策の主軸である、社会保障制度の大幅な後退と、その破壊を企図しているからだと、看破しておくことが必要である。
4、中曽根第二臨調要請改革にはじまり、橋本構造改革・規制緩和、小泉構造改革と、資本主義の先祖返り、反動的な改革が現在進行中である。いまや、すべてのマスメディアが、それに動員され、その先導役をはたしている。マスメディアに接するときは、このことを、肝に銘じておかなければ、繰り返し、繰り返し報道されると、ついつい乗せられてしまうこととなる。
国民年金の満期納入・満額給付が、今年の5月から始まった。しかし、満額支給でも80万円を下回っている。税制改悪で、単身155万円以上の年金受給者は、課税されることとなった。こうしたことから、マスメディアこぞっての、次なる集中的なキャンペーンは、『生活保護たたき』になるのではないかと思われる。
◆医療保障制度のさらなる後退
*医療制度改革関連法の成立
6月14日に成立した、この医療制度改革関連法案には、数え上げればきりがないほど、多くの問題点がある。
1、 この医療制度改革関連法案では、以下の負担増が目白押しである。
☆ 2006年(平成18年)10月から
・70歳以上で一定以上所得者の窓口負担を、3割に引き上げ
・70歳以上の長期入院患者の食費・居住費を自己負担化
・健康保険の高額療養費の自己負担限度額を引き上げ
☆ 2007年(平成19年)4月から
・ 標準報酬月額の見直しという名で、既定の引き上げに加えて、健康保険料をさらに引き上げ
☆ 2008年(平成20年)4月から
・新しい高齢者医療制度の創設として、75歳以上の後期高齢者だけの健康保険制度を作り、その保険料を年金から天引き
・65歳以上の前期高齢者は、現行の健康保険に加入しながら、前期高齢者の新制度を作り、保険者間の費用負担調整制度を導入
・若年者からは、新高齢者医療制度を支えるための、社会連帯的な保険料を徴収
・70歳から74歳の窓口負担を1割から2割へ
・65歳以上の長期入院患者の食費・居住費を自己負担化
医療制度改革という名を冠しているが、要するに、「医療給付費」を抑制することによって、政府の財政負担を縮小する、そのために患者・高齢者・保険者・被保険者に負担増を強いる、「負担増案」でしかない。
2、保険者の再編統合については、政府管掌健保を国から切り離しての公法人(全国保険協会)を設置し、その財政運営は都道府県単位の支部ごとと し、保険料率も1000分の30から1000分の100までの範囲内で、支部ごとにそれぞれ決定できるとしている。また、中小組合健保も企業・業種を超 えて再編統合し、国民健康保険も統合を進め、どちらも、都道府県単位での運営が予定されている。後期高齢者の新高齢者医療制度も、都道府県単位で設置される『広域連合』で運営されることとなっている。
その都道府県ごとに、作成を義務付けされる医療費適正化計画に基づき、競争が強要されることになった。そして、その実績評価や医療給付費の増減によって、拠出負担金額、診療報酬率、地域の保険料が上下変動するという、アメとムチが用意され、競争原理が持ち込まれようとしている。
3、現在38万床とされている療養病床(療養病床25万、介護療養病床13万)その介護療養病床を廃止し、療養病床全体を15万床に削減することが、関連法案のなかに盛り込まれている。
老人保健法の制定、老人(医療)攻撃や「社会的入院」キャンペーンを通じて、患者を若人と老人に分断することによって、医療水準の低い老人病院(医師・看護婦などの配置基準が低い)を作り、高齢者をそこに移してきた。
さらに、介護保険法を梃子に、長期入院の高齢者を、老人保健施設や介護療養病床に、移してきた。そして今回は、その高齢者を介護療養病床からも締め出し、重篤な患者以外は、療養病床からも締め出そうとしているのである。
4、この他にも、混合診療解禁など多くの問題があり、この問題だらけの法案が、審議らしい審議もなく成立してしまった。そうしたなかでも、もっとも注目しなければならないのが、75歳以上の高齢者だけの健康保険が創設されることであり、その意味や背景などを検証する必要がある。
*75歳以上の高齢者だけの健康保険創設
1、2008年(平成20年)4月から、75歳以上の高齢者だけの健康保険が、創設される。75歳以上の高齢者はすべて、この健康保険に強制加入となり、平均年額7,4万円の保険料負担(介護保険と同様の保険料の設定と年金天引き徴収)となる。そして、原則1割の窓口負担となる。(ただし、70歳以上の一定以上所得者は18年10月から、3割負担の先行実施)
75歳以上の高齢者だけの健康保険、リスクの高い高齢者だけを組織する健康保険、これが正常に運営されるということは、絶対にあり得ない。にもかかわらず、創設されることとなった。
したがって、考えられることは、74歳までの健康保険とは一線を画した、独自の制度が導入されるということである。この後期高齢者の健康保険独自の医療給付・診療報酬体系を作ることが、法に明記されているのである。
その独自の医療給付・診療報酬体系よって、治療内容や薬剤が制限され、医療給付費が制限されることが予測される。
2、このことの狙いと、その背後にある意図を考えてみたい。この間の規制緩和と医療制度改悪とが進められるなかで、カタカナ保険会社の医療保険分野への進出は、目を見張るものがある。アメリカやフランスなどを本拠地とする多国籍保険金融資本が、驚異的なスピードで、そのシェアーを拡大してきている。
さらに、「はいれます、はいれます」の宣伝で、高齢者をその医療保険に囲い込んでいる。現在は、入院1日当たり5千円・1万円の現金給付だが、創設される新高齢者医療制度は、医療内容が制限されることが予測され、その制限された医療給付を、肩代わりして給付する私的健康保険に、大化けする可能性がある。
混合診療の解禁は、そのための布石である。介護保険制度は、医療に置き換えれば、すでに混合診療(保険の負担額を超えれば自費負担)となっている。
非営利原則の医療を、自由(自費)診療を拡大することによって、営利医療に変質させようとしている。医療そのもの、医療保険、医療関連業務を、営利の対象にするために、医療制度を改悪しつづけている。病院経営に株式会社の参入、政管健保の民営化、レセプトの保険者審査、電子レセプトの義務化なども、その意図からである。
3、さらに、必然的に生じる新高齢者医療制度の赤字を、ことさらに強調することによって、当該高齢者の負担増、さらに若年者の負担をも増加させ、そして、さらなる消費税の増税につなげることが企図されているのではないか。
マスメディアを動員し、デマゴギーを振り撒いて、日本の医療を営利医療に変質させ、100兆円産業に成長させることによって、多国籍保険金融資本・製薬化学資本などが、さらなる利潤増大を狙っているのではないか。
以上、医療制度を中心に、とりわけ高齢者医療を軸に、新自由主義による社会保障制度への攻撃の、実態と現状を検証してみた。