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http://www.tokyo-np.co.jp/sha/より転載。
8/29付社説
ビラ配り無罪 取り締まりに偏りが
政党ビラを配り、逮捕・起訴された男性に無罪の判決が出た。いわゆる「左翼」や「反体制」の活動だけに目を光らせては、警察の取り締まりに偏向があると言われてもやむを得ない。
まるで「ビラを配っただけで有罪」という流れができつつあっただけに、今回の無罪判決はそれにクギを刺したといえる。今後は警察当局により慎重な捜査が求められよう。
ビラ配布が有罪となった一例目は、昨年十二月。自衛隊宿舎でビラを配った市民団体の三人に、東京高裁が「逆転有罪」を言い渡した。二例目は今年六月で、共産党機関紙などを配った社会保険庁職員が、国家公務員法違反で「罰金十万円・執行猶予二年」という判決を受けた。
いずれも「イラク派兵反対」や「憲法を守ろう」などという政治的な主張が書かれたビラが対象となっていたため、左翼や「反体制」を旗印にした団体を“ねらい撃ち”にする印象を世間に与えた。
同様の事件が続いただけに、警察当局による一連の取り締まりは、微罪に形を変えた「言論封じ」ではないかという声まで上がっていた。
今回の事件も構図は同じだ。二〇〇四年暮れ、男性が東京都葛飾区のマンションに共産党のビラ配布のために立ち入ったとして、住居侵入罪で起訴されたのである。
だが、男性はこれまで四十年以上にわたってビラを投函(とうかん)し続けていたが、出入りをとがめられたりはしなかったという。滞在時間もせいぜい七、八分程度だった。しかも、商業ビラが集合住宅に配布されるのは日常茶飯事であるし、配布業者がいるのも、公知の事実である。
東京地裁が「ビラ配布の目的だけであれば、共用部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするという社会通念は、いまだ確立していない」と判断したのは理解できる。
プライバシーや防犯への意識は高まっているし、住民が平穏に暮らす権利はもちろんある。
だが、仮にそれを“口実”にして、警察が特定の団体だけを狙い、法を適用したのなら、あまりに政治的に不公平と言わざるを得ない。また、無罪になったとはいえ、この男性が二十三日間も身柄拘束されたことは、取り返しがつかない。
ビラはお金や組織を持たない人にとって、自分の主張を世間に訴える大切な表現方法である。来年には統一地方選や参院選が控える。むしろ国民が言論・表現の自由を生かし、多様な主張を述べ合うことが民主主義の根っこを強くするはずだ。
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