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(回答先: 元毎日新聞記者 西山太吉(3)―「朝日新聞」be on Saturday「逆風満帆」 投稿者 天木ファン 日時 2006 年 8 月 12 日 19:56:09)
「逆風満帆」
元毎日新聞記者 西山太吉(4)
「これでうちの猫も全国デビューだな」。猫の話になると顔がほころぶ=北九州市の自宅で、溝越賢撮影
■「コンチクショウだよ」
その朝、空は澄んでいた。
05年4月25日。静岡市の弁護士、藤森克美(61)は新幹線に乗り、東京・霞が関の東京地裁に出向いた。
沖縄密約をめぐる事件が起きたのは、弁護士1年目を終えたころだった。記者の逮捕と問題のすり替え。密約そのものは問われなかった。
「国家がこんな恐ろしいことを実際にするのか、と驚きました」
00年の米公文書報道で、その思いがよみがえった。
訴状には、ベトナム戦争をめぐる極秘文書を報じた米紙をめぐる裁判で、米連邦最高裁が示した判決文を引いた。
〈政府の秘密は政治の誤りを永続化させる〉
兵庫では、死者107人を出したJR宝塚線の脱線事故が起きていた。
西山太吉(74)は地元の北九州にいた。裁判所でメディアにさらされたくなかった。
「都合がいいときに、都合のいいところだけ報じる」
起訴後、男女スキャンダルに染まった報道に裏切られたとの思いは深い。
それだけに、提訴に踏み切るまで迷い抜いた。
裁判に訴えれば、男女関係を蒸し返されるのは避けられない。でも、このままでは密約という、国が国民をだまして協定に嘘(うそ)を書いた事実が消されてしまう。
西山は、かつての裁判で弁護人をつとめた大野正男にも相談した。
返ってきた手紙の文面は冷ややかだった。00年に米公文書が出たときも反応は薄かった。まして、02年の文書については存在さえ知らないようだった。
04年12月、藤森から3通目の手紙が届いた。
〈だれも手を挙げる人がいなければ、挑戦したい気持ちがあります〉
密約を明記した米公文書が発見された02年を基点とすると、民事訴訟の訴えを起こせる期限の3年が迫っていた。決断を迫るものだった。
確かに、自分が表に出なければ、だれかが汚名を晴らしてくれるわけではない。なにより、西山を動かしたのは単純な思いだった。
「民主主義より前に、コンチクショウだよ」
男女問題という時限爆弾を抱えているため牙をむけるわけがない。否定を続ける政府から、そう見下されているようで許せなかった。
当時から、尊大ともとられかねない言動が誤解や反発を招いてきた。でも、そうするしかできなかった。そうしなければ崩れてしまいそうだった。虚勢を張ることで自分を支えてきた。
しかし、そのかたくなさが抵抗のバネになった、と言うこともできる。
「負の遺産を引きずり、生き恥をさらしたとしても、(政府と)刺し違える」
有罪確定から27年。揺れ続けた天秤(てんびん)は止まった。
■民主主義みせかけか
いまも、妻(71)にはよく当たる。
「おい、あの資料どこだ」
3分と待てずに、声を荒らげる。講演会に呼ばれても、うまく笑顔をつくることができない。それでも以前と比べれば、ずっと穏やかになったという。
ある日、自宅近くの駐車場で猫の死体を見つけた。姿が見えなくなっていた飼い猫だと思いこみ、戻ってくるなり玄関で号泣した。
「『ギョロ太』が死んだ」
実際は別の猫だった。
いらだち以外の感情を表に出すようになったのは、米公文書が発見された以降のことだという。不思議なことに最近、白髪に黒いものがまじるようにもなった。
〈問題は実質ではなくAPPEARANCEである〉
沖縄返還にともなう土地の原状回復補償費は日本が負担し、アメリカが支払ったようにみせかけておけばいい。西山が手に入れた外務省の秘密電信文には、米政府高官の本音が記されていた。
事件の発端となった言葉はまた、沖縄返還の本質を象徴するものでもあった。
密約を裏づける米公文書に加え、交渉当事者が証言したにもかかわらず、政府は根拠なく否定を重ね、メディアは追及しきれていない。結局、日本はみせかけの民主主義しか手に入れられなかったのではないか。
「ブンヤがしっかりしなきゃ、だめなんだ」
密約が認められなければ、西山もまた「みせかけ」だったという後半生から抜け出すことはできない。
8月29日に開かれる口頭弁論を前に、意見陳述書の草稿を書き上げた。原稿用紙で45枚になった。
敬称略(おわり)
(諸永裕司)
http://www.be.asahi.com/20060805/W14/20060725TTOH0004A.html
☆西山太吉(元毎日新聞記者)国賠訴訟
次回期日のお知らせ
第7回口頭弁論期日は,2006年8月29日(火)14:00,東京地裁722号法廷(傍聴席52席)です。
次回期日も是非傍聴席を埋め尽くすほどのご参加・ご支援をお願いします。
http://plaza.across.or.jp/~fujimori/nt01.html#裁判報告第6回