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(回答先: ニッポン放送株 時間外で２００万株売却 村上代表、ライブドア利用 【産経新聞】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 6 月 06 日 18:49:02)
【暴かれたヒルズ至上主義】フジ照準 堀江被告を鼓舞
「人生で初めて戦うのをやめた」
逮捕約６時間前の５日午前１１時、村上世彰は「モノ言う株主」として何度もアピールの場にしてきた東京証券取引所で、最後の記者会見に臨んだ。
「悔しいもん。聞いちゃったってことで、これまで築いたものが、すべて失われるんだから」。ライブドア側からニッポン放送株の大量買い付けの意向を聞いたこと、そしてその後も同株の売買を続けたことを「ミス」と認め、白旗を揚げた。法を犯しているという感覚はなかったと強調した。だが、その言葉は逆に、扱う銘柄がことごとく高騰し、連戦連勝で２０００億円を稼ぎ出したと言われる村上ファンドの根底に“インサイダー体質”があったことを意味しないだろうか。
「過失犯のように彼は言うが、まったく違う。彼が主体的にライブドアを誘い入れた」。村上の会見を見た検察幹部は言った。
盟友、ライブドア前社長、堀江貴文（３３）との系譜をたどると、実像がみえてくる。
◆◇◆
堀江との出会いは平成１５年５月。当時エッジという社名で売り出し中だった青年、堀江は「これからの『勝ち組』経営者へ贈る」と題するセミナーを開き、村上を講師に招いた。堀江が「ぜひ会いたいから」と懇請したという。
２人はその場で意気投合した。村上は学生時代からパーティー好きで知られる。東京の夜景が一望できる六本木ヒルズ住宅棟。広さ２０畳ほどのダイニングルームで、ベンチャー経営者らをホームパーティーによく招いた。女性同伴が多かったが、出席者にとってそれは情報収集と人脈作りの場でもあったという。
翌月、堀江が招かれた。出前のすしと村上の妻の手料理が振る舞われた。「ヒルズにおいでよ」。打ち解けた会話の中で村上が誘い、堀江は住居と会社をヒルズに移転。村上の「情報サークル」に加わった。
村上は得意客などへの年賀に、「宝壼」というブランドのかめ入り麦焼酎を何本かずつ贈った。「あれ１本で１０億もうけさせるという意味だと言われてます」。ヒルズ族の会社社長が言う。この社長が翌年１月、堀江の自宅を訪ねたとき、宝壼のかめが５、６本あったという。
堀江も村上をまねるように、自室で証券会社の若手ファンドマネジャーやタレントらを呼び、パーティーを開いた。２人は同じスポーツクラブで汗を流し、「週に１度は食事か電話をする」（堀江）間柄になった。
「堀江は村上を水先案内人と思っていた。村上も堀江の気質を気に入り、得難いパートナーと考えていた。単独で大企業と渡り合うことに限界を感じていたからだ」。村上と堀江を知る関係者はこう語る。
◆◇◆
村上ファンドがニッポン放送の株主に登場したのは１５年夏だ。当初から「狙いはフジテレビ」と語っていた。
同年９月、筆頭株主になり、ニッポン放送に自らを含む３人の社外取締役就任や持ち株会社設立の提案を突きつける。
翌年の株主総会。「ニッポン放送は上場すべきではなかった」。村上は厳しい批判と要求を唱えたが、聞き入れられなかった。
プライドを傷つけられた村上は、１６年９月、東京・青山で開かれた若手起業家の親睦（しんぼく）団体で講演した。「ニッポン放送株をやります。皆さんも買ってください」
「年商１億円以上、４０歳未満の創業者」がこの団体の会員資格。若手起業家たちの指南役のような存在になっていた村上の影響力は絶大だった。
村上は堀江にも同年９月１５日、「ニッポン放送はいいよ。あなたも少し買ってくれるとうれしいな」とささやいたという。
逮捕前の記者会見で村上は、ライブドア側が１６年秋以降、村上にニッポン放送の株取得に協力をしきりに要請してきたと語った。
だが、関係者によると、堀江の気持ちは揺れていた。一度は前向きな返事をしたが、「やはりやめる」と漏らしたこともあった。弱気な堀江を、役員の宮内亮治（３８）が励まし、村上も「僕もバックアップするから」と説いたという。
◇
≪村上神話に自らおぼれ≫
１７年２月８日、ライブドアは時間外取引でニッポン放送株の３５％を購入したと発表した。
巨大なメディアに挑む「時代の寵児（ちょうじ）」として脚光を浴びた堀江は、「これからは金融とメディア。それを制した者が勝ち」「狙いはフジテレビ」と語った。
だが、これらのコメントはどれも、村上が以前、講演などで口にしたせりふとそっくりだった。
この時期、株争奪戦のカギを握るのは、村上ファンドが握る約６００万株（保有比率１８・５７％）の行方とみられていた。
村上は「ノーコメント」を貫いた。村上が持ち株をすべて堀江に譲り渡せば、争奪戦はすぐケリがついてしまう。語らないことで、市場は争奪が続くと読み、株価はつり上がる。この局面で、村上は持ち株の大半を市場で売り抜いたとされる。
村上ファンドの投資会社が保有株数の減少を明かしたのは、２月２８日時点の株の大量保有報告書だった。
３月、村上は投資顧問会社主催の投資セミナーで講演し、「堀江君のやっているのが敵対的かどうかは別として、敵対的Ｍ＆Ａが行われる素地はようやくできました」と擁護した。
ならばなぜ、村上は持ち株を堀江に渡さなかったのか。村上の目的が「株主価値の向上」よりも、利益の追求を優先したことを意味していないだろうか。
ライブドアとフジテレビの株攻防戦をよそに、村上は転戦し、大阪証券取引所、ＴＢＳ、阪神電鉄などの株を次々と手掛けた。メディアに村上の動向が報じられると株価が軒並みアップした。「村上が買う銘柄は値上がりする」という神話が作り上げられていった。
「村上はニッポン放送株の堀江の成功を見て、意外と簡単に有名企業の買収ができると知ったようだ。村上のファンド運用の分岐点といえる」。村上と堀江を知るライブドア関係者は話した。
◆◇◆
１７年秋、都内のホテルにベンチャー起業家らが集まったパーティー会場に、村上の姿があった。
「だめな会社は乗り込んで（社長を）首にする」。その迫力に、多くの出席者が沈黙した。村上は最後、大きな目をまん丸にして付け足した。「皆さんも気をつけて。いつ行くかわからないから」
「村上さんの発想は、会社に土足で入ってかき回すだけ。まともな投資じゃない」。出席者の一人は吐き捨てた。
村上に対する評価は二分した。証券アナリストは「村上ファンドの買い占めを受けた後、業績改善した例もある。資本市場を株主に戻した」と評価する。金融関係者からは「高値で売り抜けるだけのグリーンメーラー」という声もあがった。
東京地検の内偵捜査の足音がライブドア・堀江のもとに迫っていた１７年１２月、堀江は東京・銀座の日本料理店でワインを飲みながら、知人に打ち明けていた。
「ニッポン放送は村上さんにずっと『やらないか』と言われていたからやったんだ。既存のメディアを持つ必要はないと思っていたが、村上さんに言われて、じゃあやるかと…」
今年１月１６日、東京地検特捜部はライブドア本社を強制捜査。続いて堀江が逮捕されると、村上の心は揺れ始めた。
堀江の逮捕後、ベンチャー企業の起業家らの講演会に招かれた村上は、婦人服大手「東京スタイル」株主総会の委任状争奪戦の裏話に熱弁をふるったが、最後まで堀江のことに触れなかった。
２月４日、兵庫県で開かれた講演会では、堀江について「法治国家として悪い部分があれば、償わないといけない」と前置きした上で、「愛すべき性格や、ひらめきをこの国がもう一度活用するチャンスもある」と述べた。「ちまたでは『次は村上が逮捕される』と言われるが、よう言うわ、と思う」と反発した。
６月５日の最後の記者会見。独演会の後、報道陣から厳しい質問を浴びせられた村上はぽつりと漏らした。「僕は嫌われ者だったんだなあ」
＝敬称・呼称略
（村上ファンド取材班）
http://www.sankei.co.jp/news/morning/06iti002.htm
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