★阿修羅♪ > ホリエモン・ライブドア事件とその裏1 > 225.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
(回答先: 誰かは、闇か。 【岸田 徹 】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 2 月 17 日 19:27:41)
TOP 【岸田コラム】 http://www.kishida.biz/column/index.html
ライブドアの堀江前社長は他の3人の容疑者とともに2月14日起訴された。起訴したのは東京地検の特捜部だ。容疑の内容は、2004年10月にライブドアがライブドアマーケティング社を買収する際に、実際にはすでに支配下にあったのに、「株式交換で買収する」と嘘の情報を流した上に、ライブドアマーケティング社の売上げを1億円水増ししたというもの。これにより、株式を100分割した際ライブドアマーケティング社の株価が高騰し、新株を8億円で売り抜けたライブドア傘下の投資組合が大儲けし、その金はライブドアに入ったとされた。(日経新聞)
堀江前社長は、この容疑内容を認めていない。しかし、東京地検特捜部はこればかりでなく、ライブドア本体の粉飾決算を追及する構えをみせているという(日経、読売各紙)。また、テレビ局の報道によれば、資金の流れは海外にも及び、マネーロンダリングの疑いがあるという。
「起訴」とは、検察が裁判所に公訴をすることで、「公訴」とは刑事事件について刑の適用を求めることだ。つまり、検察が堀江前社長は犯罪者だから有罪にしてくれと裁判所に訴えることを起訴という。こういう権利は、日本では検察だけが持つ。一般市民がいくら訴えても刑事事件では訴えが認められない。
ホリエモンは起訴されたことに対し「起訴するならすればいい。自分の主張は早く裁判できちんと話したい」(読売新聞)と話したという。しかし、日本の刑事裁判の99%は有罪の判決が出る。この事実は実に特異だ。裁判にかけられればほぼ有罪は間違いないという事で、起訴イコール有罪と言える。
日本の裁判の基本は、検察の上げた犯罪容疑を弁護士と検事が裁判官の前で論戦し、証拠に基づいてどちらの言い分が正しいかを裁判官が判断する形式だ。そのため、裁判官は起訴状が上がるとその罪状を認識するために起訴状は読むが、その起訴状に関してどれだけの根拠があるかとか自分の考えをまとめるためにあらかじめその事件についての記録を読むとかという事はしない。まして、独自に関係者からヒアリングを行うなどというこは絶対にしてはならない事になっている。裁判官はまっさらな状態で裁判に臨む。
弁護士はほとんどが逮捕された時点で弁護活動を始める。今回のホリエモン逮捕の場合は逮捕から起訴までは21日間だ。
一方の検察側はいつから捜査を始めたかは不明だが、特捜部長の大鶴氏が就任の会見で「国民や公正な経済活動をしている企業が、『こんなことがまかり通っていいのか』と憤りを感じる事案をきちんと摘発したい」と抱負を語った(読売新聞)ことを考えると、この会見が行なわれた2005年4月8日の時点で捜査が行われていた可能性が高い。
半年以上も綿密な調査を国権を使って行なっている検察と起訴の21日前から弁護活動を始めた弁護士が何も知らない裁判官の前で議論を行なえば、どちらが勝つかは明らかだ。
遠山の金さんや水戸黄門は事件の渦中に遭遇し、嘘を暴き庶民のために胸がすく判決を下すが、今の裁判はそんなことはない。裁判官は中立公正を建前に事件に深く入り込むことはない。判断はあくまでも「証拠」によるものだ。証拠は心象ではないので、集める時間が多い方が有力な証拠が集まる。
検察は、その点を十分に承知して証拠を集める。逆に言えば十分な証拠があるから起訴に持ち込めるわけだ。だから、起訴すればほぼ100%有罪になる。
検察は、自分たちが起訴すれば有罪になると思っているので、有罪になった場合、あるいは起訴した場合どのような影響があるかを十分察して容疑者逮捕に踏み切るのが通例だ。今回の場合も、会社の社長を逮捕し犯罪者にするわけだから、その影響を考えずに逮捕することはありえない。「アフター・ケア」もちゃんとしている。
アフター・ケアの第一は、次の社長を誰にするかだ。偶然にもホリエモン事件が発覚する前に平和相互銀行事件を【岸コラ】では取り上げたが、この時は、大蔵省のOBが新社長になる準備がちゃんとされていた。また、【岸コラ】で取り上げた長銀事件の場合も、外資が乗り込んでくるわけだが、八城さんという日本人がちゃんと準備されていたと受取れる流れだ。
今回も堀江前社長逮捕の翌日には、平松庚三執行役員上級副社長が執行役員社長に就任した。こういう事を「感じ」で書くのには躊躇するのだが、私の感じでは平松氏は事前にかなりの事を特捜部から知らされていたのではないかと思う。ナベツネの「俺の子分だ」との発言はさらにその疑いを助長させる。
どこの会社にも主流派がいれば反主流派ができるものだ。特捜部はそれらの情報をしっかりと掴んでいる。
さらに、ホリエモン逮捕の衝撃は、ライブドアの株価に影響する事は十分承知していたはずだ。ライブドアの株価は昨年末には800円に近付く勢いだったが、今日の終値は72円だ。ライブドアの株主は22万人いると言われている。日本の15歳以上の人口は約1億人だ。22万人という事は、500人に一人。その多くの人がライブドアの株を売りたくても買ってくれる人がいないため大損を目の前に何もできないでいる。いくらで買ったかにもよるが、例えば500円で買った人が5千株持っていたとすれば、214万円の損だ。株の専門家はライブドアの資産価値は株価を大きく下回っていたと言い、今回の事件が明るみに出る前から危ない株だと認識していたと言う。
しかし、ライブドアの株主は単純に企業業績に対する投資のために株を買ったのではなく、ホリエモンに対する期待感やどんどん上がる株価に対する期待感で株を保有していた。
株は自己責任で購入しなくてはならないことは当り前だ。特捜部もライブドアの株価下落の予想に対してはその認識で対処したはずだ。しかし、ライブドアばかりではなく株式市場全体に影響を及ぼした。そのため、事情聴取から早めに逮捕に踏み切ったとされ、逮捕後は一時的に株価は持ち直した。ところが、いまだにその後遺症が後を引きずり、日本の株式市場は軟調だ。
昨年末以来、株式相場は日本の経済に対する堅調な期待感で上がったとされていたが、ライブドア事件以降、IT関連ばかりではなく新興企業を中心に株価の持ち直しが今一歩だ。
こんな時期に日銀は量的規制緩和策を見直すとの見解が報じられ、資金が潤沢に出ていたマーケットに終わりが告げられた。しかも、アメリカでは金利が上昇する観測。企業の決算情報も出尽くし、日本の株式市場はホリエモンショックから抜け出すきっかけがなくなってしまった。
日本の株価を上げていたのは外国資本だと言われていた。株式市場は何よりも自由主義を大切にしている。自由な経済原理の下で株価が動くのが健全だからだ。ところが、地検特捜部のライブドア捜索で、国家権力が株式市場に現れたことに外国資本が強い反発を示した形だ。日本の経済活動は堅調なのにもかかわらず、海外マネーが一挙に逃げ出し株式市場を軟調にしている。
これは、恐らく特捜部の想定外だったはずだ。
ホリエモンの心境や言動などはすべて小菅の「報道官」からの情報だ。塀の中でのことなので、それ以外の情報が入らないのは当り前だ。そんな検察情報をそのまま取り扱うのがマスコミで、検察とマスコミはここでも共同歩調を取っている。これは、検察のいつもの手で「ホリエモンは悪者」という世論操作をしている。
しかし、庶民の感覚は必ずしもそうではない。ホリエモンに対する「期待」がいまだに高いのだ。ホリエモンがライブドアに戻って会社を再建してくれるだろうと期待している訳ではない。ホリエモンに対する期待は、小泉さんに対する期待と同じで、既存勢力を壊し、若者でも能力があれば世の中で認められるという世界の実現にある。これが根強いのだ。これらの声はマスコミには載らず、人々の心の中でくすぶっている。【岸コラ】の「ホリエモン逮捕は、やはり『反小泉の反撃』」が短期間で5千件のアクセスを数えたのは何よりもそれを示している。これも、特捜部の想定外のはずだ。
やり切れないのは人の死だ。平和相銀事件の時は、後に起きたリクルート事件で竹下氏の秘書だった青木伊平氏が自殺した。リクルート事件が絡んで自殺したと思われているが、青木氏は親しい人に「絵の件」で特捜部から調べられていると漏らしていた。これは平和相銀の金屏風事件を意味するもので、政界に流れた金が闇資金と繋がっていたために「自殺」したと疑われている。
長銀事件の際は、上原隆元副頭取と福田一憲大阪支店長、さらに長銀からそごうの副社長になった阿部泰治氏が相次いで首吊り自殺をした。その後そうごうでは元副社長も自殺した。
今回もキーマンと見られる野口氏が「自殺」した。特捜部はショックを受けていると報じられたが、自殺者が出るといつも特捜部は衝撃を受けたと報じられるのが常になってしまった。自殺者が出るのは異常ではないのだ。常にありうることなのだ。特捜部はこれに対する警戒がないのではないかと疑いたくなってしまう。
恐らく、ホリエモンとライブドアは違法行為をし蓄財をしたのだろう。これは、日本の庶民にとっては何らかの被害があったのかもしれない。しかし、それより大きな被害は別なところにある。それは、こうした悪いことは、必ず検察が上げて成敗してくれるという感覚を国民に植えつけることだ。
捜査の矛先は政治家にも及ぶ。本来、ホリエモンが行なったとされる違法行為は、二度と起こらないために法整備をしなくてはならない問題に発展するはずだ。その法律を作るのは国会議員、つまり政治家だ。しかし、現在の状況ではホリエモン事件は自民党の主流派の関与が取りざたされている。この事から、悪事を裁き、日本をよくするのは検察を中心とする官僚だという事を証明する材料になってしまっている。
この事実を突きつけられると、日本国民はますます声を大にして市民の権利を主張できなくなるのだ。本来、証券取引で損をしたのは取引に関与した市民だ。その市民がホリエモンの行動に疑問を抱き糾弾するのが民主主義だ。その民主主義をリードするのが言論界で、官僚が出る幕ではないのだ。
検察は一種の見せしめのためにこの種の事件を上げる。捜査に踏み切る前は秘密裏に捜索するが、いざ捜査に踏み切ると手のひらを返したようにマスコミを仲間に引き入れ一方的に宣伝するのだ。これで、国民の多くはその報道を信じ込んでしまう。
メディアも検察と一緒になって報道している場合ではないのだが、なかなかこの仕組みが変わらない。ホリエモンを応援する勢力は、この旧態社会に対するもって行き所のない不満なのだ。これが、特捜部の「想定」には入っていない。
今回の一件は、まず証券取引委員会がライブドアに対して警告し、それでも法違反があるようなら告訴すると公にアナウンスした後に特捜部の捜査が入るべきだった。特捜部は完全に市場のあるべき姿を無視し、国民の間にうっ積する旧態国家への批判に耳を傾けることなく捜査に入ってしまった。この行為は、時計の針を逆戻ししたことに他ならない。特捜部をそんなにはしゃがせたのはやはり反小泉勢力の台頭だが、同時に検察国家の顔が現れた恐ろしい事件でもある。
http://www.kishida.biz/column/2006/20060215.html
▲このページのTOPへ HOME > ホリエモン・ライブドア事件とその裏1掲示板