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(回答先: 文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(4)騙しの構図 {JANJAN] 投稿者 white 日時 2006 年 10 月 29 日 16:23:36)
□文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(5)過熱する賞ビジネス [JANJAN]
http://www.janjan.jp/media/0610/0610243342/1.php
文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(5)過熱する賞ビジネス 2006/10/29
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文芸社と新風舎は、協力・共同型出版の大手として出版点数を競ってきました。2002年から2005年までの出版点数の推移を見ると、文芸社は1797点、1012点、283点、345点、新風舎は573点、1065点、1847点、1673点と、激変しています。業界トップの講談社の年間の出版点数が2000点余りですから、こうした有料出版社が驚くほど多くの点数を発行していることがわかります。
それにしても、わずか数年の間に出版点数が何倍にも減ったり増加したりする状況は異様です。ライバル会社間での競争が激化し、不安定な業界であることが垣間見えてきます。現に、新風舎社長の松崎義行氏は、朝日新聞2006年10月7日のbe on Saturday フロントライナーで、90年代後半にライバル会社が急成長してシェアを奪われて借金が膨らみ、経営に行き詰ったことを吐露しています。
新風舎は以前から出版賞を設けていますが、今年の「新風舎出版賞」(第26回および27回。募集期間は各6ヶ月)では年間の入賞総数は544作品で賞金総額は1,360万円にもなり、そのうち24作品が出版化されます。大賞賞金は100万円です。またこれとは別にいくつものコンテストを設けており、こちらの賞金総額も半年だけで600万円以上です。
一方、この春、文芸社が立ち上げた新出版社「文芸社ビジュアルアート」の「ビジュアルアート文芸賞」では賞金・商品の総額が500万円以上で、2点が出版化とのことです。また「文芸社出版文化賞2006」では、入賞総数は435作品以上で、受賞15作品を出版化。賞金総額は1,890万円以上となっています。大賞賞金は100万円です。
無名の素人を対象に、多額の賞金とあきれるほどの入賞数で応募を煽ることの裏側には、当然のことながら有料出版への勧誘があります。新風舎の新聞広告には「入賞しなかった作品にも、『出版実現プログラム』で本にすることを積極的に提案します」とあります。また文芸社ビジュアルアートの新聞広告には「 応募作品の中で出版をお勧めしたい優れた作品には、文芸社ビジュアルアート独自の出版(有料)をご提案させていただく場合もございます」とあります。こうやって契約数を増やすのです。
ところで新風舎の場合、出版賞の入選者の作品がすべて無料で出版されるわけではなく、賞金だけの賞もあります。ところが、驚いたことに「入賞作品の出版権は新風舎に帰属」となっています。これを素直に解釈すれば、無料で出版化されない賞に入賞した場合は新風舎の有料出版でしか出版できないということになります。入賞しただけで出版権が出版社に帰属してしまうなどという独占が許されるのでしょうか?
出版賞を設けて応募を煽り、有料出版の契約をとるためには、出版賞の賞金や無料で出版する本の経費のほか、新聞広告など多額の費用がかかります。ちなみに、新風舎、文芸社ともに1000点以上出版している2003年の新聞広告費は、新風舎が13億8,690万円、文芸社が27億6,217万円という莫大な金額です。
2003年の文芸社の売上高は佐野眞一氏の著書によると57億円とのこと。収入の半分近くが新聞広告に費やされていることになります。新聞広告のほかに雑誌にも広告を出していますし、出版賞や企画本の経費、販売や在庫管理の費用、営業経費など、かなりの支出をしていると思われます。それが本の販売利益から出されているのであれば問題ありませんが、素人の本を専門に出版し部数も少ないのですから、販売利益は多いとは思えません。売上高の内訳は本の販売利益より著者の負担金が大きな割合を占めていると思われます。
碧天舎の倒産で、はからずも本の売り上げ収入が微々たる額であったことが露呈してしまいました。ジャーナリストの尾崎浩一氏も、協力・共同型出版の出現で書店に並ぶ本が増えたとしながらも、「しかし、出版社の経営自体は、本の売り上げではなく、著者が支払った出版費用が売り上げの大半を占めているという構造は変わっていなかった」(読売ウィークリー、2006年8月13日号)と指摘しています。
著者が支払った負担金の一部が出版社の経営の費用に使われているのであれば、水増し請求だけではなく流用ともいえるでしょう。著者は「自分の書いた本の出版費用」との約束で協賛金を出しているのですから、それ以外の広告や営業に使われていたら不当というものです。
収入の多くを著者からの協賛金に頼る構造である以上、急成長を遂げた会社にとって契約者の減少は死活問題となります、契約数を確保するためには「賞ビジネス」でライバルと競うことになり、多額の費用を投じなければなりません。ライバルに負けじと負担金を引き下げれば、経営悪化を招きます。巨大化した協力・共同型出版社は悪循環の泥沼にはまり込む可能性があり、危ういビジネスの姿が浮かび上がってきます。
(松田まゆみ)
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