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(回答先: 多くの産科診療所を営業停止に : 全国的に『お産難民』だらけになって、全く収拾がつかなくなってしまう 投稿者 どっちだ 日時 2006 年 8 月 31 日 02:59:01)
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20060830
(新小児科医のつぶやき)
2006-08-30 一夜にして不戦敗
昨日は「今こそ戦うべし」と張り切ったのですが、一夜にしてテンションはしぼまざるを得なくなりました。簡単に昨日の「今こそ戦うべし」のポイントを書いておきますと、
1. 保健師助産師看護師法第3条にある助産行為について、厚生労働省は産婦の出産前の内診を含めると2002年、2004年に通達した。
2. この時期の看護師による内診は、それまで診察の補助行為として看護師が行なっていた。
3. 厚生労働省の通達と産科の実情は相当乖離しており、この通達について日本産婦人科医会は繰り返し撤廃を申し込んでいたが、厚生労働省の返事は「No」であった。
4. 通達と現場の実情が乖離しており、なおかつ協議してもその溝が埋らないのなら、その判定を第3者の司法府に求めて戦うべしだ。
これについてan_accusedさまから二度にわたる丁寧なコメントを頂き、また元検弁護士のつぶやきさまのコメント欄をROMすると、ほとんど抗戦は不能としか考えられなくなってしまいました。それほど司法と行政の壁は途方も無く厚いと言うことです。無念の繰り言を今日は並べます。
1. 行政機関の通達の重みはどの程度のものか。
行政機関の通達に司法府は縛られないのは間違いないそうです。ただし行政内部の法解釈の統一を保持するため、ある法解釈についての通達は他の行政機関もこれに従うものだそうです。これは検察、警察も同様であるそうです。もちろん立法府の承認も司法府の正式の判断も受けていないので、通達の元になる法律の解釈に異議があるときは、司法府に公式の判断を求めるのは可能だそうです。言い換えれば、通達に文句があるのなら訴訟で争えと言う事のようです。
2. 通達違反は法律違反に直結するか。
今回の事件での容疑は保健師助産師看護師法違反です。この法律には助産行為がどの範囲まで指すかは明示していません。法律では明示していませんが、通達で範囲を示せばこれは立派な法律違反となるそうです。もちろん通達より法律の方が上位に来ますので、訴訟となれば助産行為の範囲が改めて争われる事になりますが、通達違反を法律違反と見なし嫌疑をかけ捜査を行う事自体は、検察、警察にとって正当な行為となるそうです。
3. 通達に異議があるとき、これを司法府に訴えれる資格とはどんなものか。
この資格があるのは通達により具体的な被害を蒙った人間に限られるそうです。通達により一夜にして違法状態に置かれ、被害を蒙りそうだと言うだけでは資格は無いそうです。看護師内診問題で言うと、実際に看護師に内診をさせ、これが発覚して警察の操作を受け、法律違反に問われた人間にのみ資格があると言う事です。他の産院で、看護師に内診をさせ、もし捜査を受けると法律違反に問われそうだと言うだけでは、司法府に通達の違法性を問う資格すらないとの事です。
4. 訴訟を行なうリスクは。
とてつもなく高いようです。行政府は一旦出した通達を変更することを非常に忌み嫌うそうです。たとえ訴訟となってもバックは国ですから、個人レベルから見れば無尽蔵の豊富な資金をバックに徹底抗戦するのは確実です。また検察も「被疑者が事実関係や法律解釈を争えば争うほど、検察は強硬になり、起訴猶予ですむものが起訴に、略式で済むものが公判請求に、罰金で済むものが懲役刑求刑になっていきがちです」となるとan_accusedさまもコメントしていただいています。つまり日本最強の被告を相手に回して、勝ち目の薄い勝負を身の破滅と引き換えにして戦う必要があると言う事です。
今回の看護師内診問題で司法府に疑義を訴える資格のあるのは、捜査を受けた堀病院関係者のみであり、もし徹底抗戦をすれば身の破滅を招く事は確実だと言う事です。訴訟を行なえば相手は国ですから最終審まで長期間の時間がかかるのは必至で、なおかつ監督官庁の不興を買っていますから、あらゆる合法的手段で原告である堀病院を締め上げるのもまた必然です。
これは不戦敗にせざるを得ませんね。どこをどう突付いても徹底抗戦できるだけの戦力がありません。それにしてもまるで出来の悪い法廷推理劇を見るようで、かえって法律論を知らなかった方が幸せだったような気がします。
最近なぜか警察は産婦人科叩きに異常に熱心です。この看護師内診問題で最強のアイテムを手に入れたといっても良いかと考えます。産婦人科関係者の話では、助産師が充実し看護師がまったく内診にタッチしていない産院は少数派だそうです。その気になれば全国3000の分娩施設のうち、2000ぐらいはいつでも強制捜査で検挙できる強力なアイテムです。とりあえず横浜の産科医療はこれで灰燼するでしょうし、横浜が灰燼すれば首都東京とは言え、これをすべて支えきれるかどうかは分かりません。東京でもこの惨劇が起これば日本の産科医療は瞬時に壊滅します。
悔しい不戦敗ですが、「お上には逆らえない」事を改めて思い知らされたような気がします。今回の事件でさえ、争う術すら無いのであれば、後は逃散するしか無いという結論になるんでしょうね。
[コメント]
# wk27 『こんにちは。
今日のお話は大変わかりやすく、とても勉強になりました。
日本の行政は、何を目指しているのか本当に不思議です。
わたしは、行政のお仕事が自己目的化しているのではないかと思います。
それはともかく、今日の記事を読んで、不条理な通達に対抗するには立法府で法の規定を行うしかないと思いました。
ただ、それをなすべし、という世論が盛り上がらないところを見れば、産婦人科の崩壊は国民の意思を実は反映しているというように考えざるをえないのではないかと思います。残念なことです。』
# 元研修医 『 看護師の内診を認めない→開業産科医の廃業→病院産科への負荷増大で共倒れ→助産院増やす なのでしょうか? 未だに新聞はミスリードしていますが、安全性から考えると本末転倒なのですが。
40数年前同様基本的に助産院または自宅出産で、高額の私的保険化入者のみ病院出産と言うことになるのでしょう。先人達の築き上げてきた周産期死亡率世界最低という記録は幻になるのでしょうね。
長い年月と労力を掛けて先人が築き上げたものも壊すのは一瞬です。そして日本という国がこんなに理不尽な国だということも始めてわかりました。
無条件降伏ですね。新聞のミスリードに踊らされた国民が何も知らないまま、オリックスの宮内氏の思うとおりの世の中がもうすぐだと思うと無念でなりません。』
# 山口(産婦人科) 『こうなれば後は旧国鉄並みに遵法闘争を行うしかありませんね。助産婦と医者で分娩経過を管理できる限りの妊婦しか診ない。後はお断り。全国一斉にこれをやるべきでしょう。』
# nsiku 『厚労省は、元研修医先生と逆の思考で、助産院の増加を狙っているのでしょうか。
助産院が増えれば、産科医療の崩壊が防げると思っているのでしょうか。晩婚化で、初産婦の年齢が年々高くなって、出産のリスク自体も高い妊婦が増加しているのに、時代に逆行しているとしか、思えません。それとも、助産院で出産可能な妊婦が今後、増加すると見込んでいるのか、その思考回路は謎です。
結局、妊婦を1番蔑ろにしているのは、ある県の警察と検察の方々でしょう。彼らには、設備も人員も整った警察病院や国家公務員対象の病院があるので、今起こっている医療の崩壊に現実味がないのでしょう。
どうしたら、彼らに医療の現実を理解してもらえるのかを考えると、ガックリしてしまいます。(後、数十年は私達夫婦は、医療関係の仕事をしていると思うので)』
# an_accused 『>Yosyan先生
せっかくの先生の闘志を萎ませてしまったようで、申し訳ありません。
ただ、本件を軸にしての闘いのあり方を考えた場合、あまりバラ色の見通しを述べても意味がありませんので、あのようなコメントになってしまいました。
訴訟リスクにつきましては、闘う以上ある程度引き受けざるを得ません。
事実関係や法律解釈を争わなくても略式罰金+医業停止3ヶ月という前例があるのですから、いくら堀病院の院長先生がマスコミを通じて謝罪したり取調べで罪を認めたりしたとしても、起訴猶予(=お咎めなし)になる見込みはかなり薄いのではないでしょうか。
また逆に、いくら徹底抗戦しても、検察こそ体刑求刑してくるかも知れませんが、事案の重大性や同種事件の量刑に照らせば、判決は罰金で終わることも充分考えられます(以上はあくまでも私の印象なので、詳しくはぜひモトケン先生のような刑事事件に強い弁護士の先生にお尋ねください)。
そういうわけで、「争っても争わなくても罰金+一定期間の医業停止であるならば、一丁争ってやろうか」と堀病院の皆様に思っていただけるかどうか、そしてその思いを皆さまが支えられるかどうかが、この「闘い」の鍵ということになるのだと思います。』
# mocha 『このニュースに対して、「悪法への挑戦と戦略」と書かれたエントリがありましたので、ご参考までに。http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2006/08/24-135802.php#more』
# 元内科医 『闘う方法はあります。
法をどこまでも遵守し かつ自分の身を守ることです。
私は患者さんを丁寧に診療することにしております。
待たされたと怒る方には他の医療機関を紹介させて頂いて帰っていただいています。
アクセスを自分の診療で制限しております。
いままで医者はお人好し過ぎました。
本当はストライキしかない状態なのですがそれが困難なのでやるなら逃散しかないです。それも生活やいろいろな事情で困難であれば、仕事をやりつつ危険を回避するしかありません。
当直医の業務についての通達も事実上反故にし、労働基準法を事実上守らせない状態を放置してる現状を私は一生許すことはありません。法廷で争っても意味がないようです。合法的に怒りを表現するしかないようですね。
他業種の方は全然理解していないようですが、基本的に「もう おしまい」なのです。』
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