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(回答先: 法律を守りたくても守れない医療現場、うすうすわかっていても気付かないふりをする行政、何か問題が生じるとかき立てるマスコミ 投稿者 どっちだ 日時 2006 年 8 月 28 日 23:48:16)
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/08/post_d6f6_14.html#trackback
(ある産婦人科医のひとりごと)
堀病院事件・続報
コメント(私見):
かつて、日本産婦人科医会は、お産の進行度などを診断する「内診」を「単なる計測であり、看護師にもできる『診療の補助』に当たる」と解釈して会員を指導してきました。同医会は1960年代から「産科看護研修学院」という講座を各地で開催して、看護師や准看護師らに研修を受けさせて、「産科看護師」を認定し、産科医の診療補助として内診をさせてきました。
従って、全国の多くの産科の医療機関に「産科看護師」が勤務して、産科医の診療の補助を行ってきました。大きな病院には多数の助産師が集まりますが、一般の産科診療所ではなかなか助産師を集められず、「産科看護師」が産科医の診療の補助を行ってきたという経緯もあります。
それに対して、厚生労働省は2002年と2004年に「看護師による内診は違法」との見解を都道府県に通知し、それまで公然と行われていた「産科看護師」による内診が、突然、違法ということになってしまいました。
助産師が多く勤務する病院では、産科病棟の看護師がほとんど助産師ですし、看護師の内診はもともと行われてませんでした。そのような厚労省の通達があったことも、私自身は全く知りませんでした。
しかし、産科診療所の多くは、各勤務帯に助産師を配置することが難しい状況なので、分娩進行状況の把握のために看護師の内診が厚労省の通達後も広く行われていたと思われます。
助産師養成施設は全国に多く存在し、当県でも毎年数十人単位で助産師は養成され続けていますので、助産師の有資格者の数は毎年どんどん増えている筈です。
(当市にも助産師を養成する短大専攻科があって、当科を実習施設として毎年8名づつの助産師を養成し続けています。)
ただ、有資格者数は多い筈なんですが、現実には、助産師が必要とされる部署に適正に配置されていないので、実働の助産師数は大幅に不足しています。多くの病院で助産師が助産業務以外の看護業務に従事している反面、産科の開業の先生のところでは、いくら必死になって助産師を募集しても、なかなか助産師を集められないと聞きます。
現状のままだと、多くの産科施設で、明日からでも分娩を取り扱うことが困難となってしまうかもしれません。もしかしたら、この事件を契機に分娩取り扱いを中止せざるを得なくなる産科施設も少なくないかもしれません。
(当科の場合は、平成元年に助産師1名から出発し、毎年、数名づつの助産師を採用し、現在は23名の助産師が勤務しています。助産師数がどれくらいであれば適正なのか?私にはよくわかりませんが、結婚退職や産休・育休もあるし、分娩件数も今後大幅に増えることが予想されるので、将来的にはさらに20名ほど常勤助産師を増やす必要があると病棟師長は言ってます。今回の事件を契機に近隣の開業医の先生方が分娩を一斉に止めてしまうのではないかと非常に危惧しています。また、近隣の医療圏からも『お産難民』が大量に流入してくるのではないかと危惧してます。)
参考:神奈川県警による堀病院強制捜索に関して(周産期医療の崩壊をくい止める会)
以下、各新聞社の報道記事(インターネット)より引用
****** 中国新聞、2006年8月26日
無資格助産 現実的な解決策が要る
資格のない看護師らが助産行為をしていた疑いで、横浜市の産婦人科病院が警察の家宅捜索を受けた。背景には助産師の慢性的な人手不足があり、院長は「現状では必要悪だ」と 言い切っている。
どうすれば子どもが増えるか、みんなが知恵を絞っている時代である。違法行為の摘発に終わらせず、母子が安心できる出産環境づくりにつなげたい。
看護師や准看護師が携わっていたのは「内診」。子宮口の開き具合などを触診して、出産の進行が正常かどうかを判断する。多くの病院は「診療の補助」として看護師に任せてき た。広島県内でも簡単な研修を経た「産科看護師」が内診をしている実態がある。
しかし厚生労働省は保健師助産師看護師法で規定する「助産」にあたるとして、「助産師と医師以外は行ってはならない」と二〇〇二年と〇四年、各都道府県に通知している。異常があれば母子に大きな影響があり、対処には専門知識が必要だからだという。因果関係の有無は別として、無資格助産が絡む医療事故も起きている。
捜索を受けた病院の院長は違法と知ったうえで、開業間もない一九六〇年ごろから看護師らに内診させていた。医師や助産師には限りがあるためという。厚労省の通知後、助産師を募集したが集まらなかったとし、「(無資格助産を)やめたら、明日から出産を断らなければならない。必要悪だ」と語っている。
この問題では昨年の厚労省の検討会で、日本医師会や日本産婦人科医会の代表から「一定の条件で認めるべきだ」との意見が出た。「今回の事件で開業医が病院をやめてしまう恐 れもある」と心配する声すら出ている。
助産師として働く人は約二万六千人。資格を持ちながら働いていない人も二万六千人いる。結婚や子育てを機に辞めた人も多いだろう。医療機関は新たなコスト増を嫌う。どうい う条件が整えば職場復帰を増やせるか研究してほしい。看護師が助産師免許を取りやすくする工夫もあっていい。
厚労省も現状認識が実態とずれていたことを認め、全国の医療機関での助産の実態を調査する方針を明らかにした。
子育て支援策をいくら施しても、出産現場が揺れていては元も子もない。助産師の発掘に加え、法の運用に再検討の余地はないか。母子の安全を第一に、現実に即した解決策を探 りたい。
(中国新聞、2006年8月26日)
****** 毎日新聞、2006年8月26日
<無資格助産>分娩に助産師関与させず 積極募集もなし
産婦人科病院「堀病院」(横浜市瀬谷区)の無資格助産事件で、同病院は昨年末ごろまで、積極的に助産師の募集をしていなかったうえ、助産師に新生児の取り上げをさせていなかったことが分かった。助産師は内診も含めた分娩(ぶんべん)にほとんど関与させず、産後の新生児のケアを担当することが多かったという。堀健一院長(78)は毎日新聞の取材に「医事紛争の対策。(トラブルがあった際に助産師よりも)医者がやったと言えば言い訳がしやすい」と理由を説明している。堀院長はこれまで、助産師不足のため看護師らに助産行為をさせていたと釈明していた。
堀院長の説明によると、同病院は1959年の開業当初から昨年末ごろまで、新生児の取り上げを医師が行っていたという。神奈川県警の調べでは、家宅捜索の容疑となった03年12月の女性(当時37歳)=04年2月に死亡=の出産の際には、病院内に医師1人、助産師1人、看護師・准看護師7人がいたが、出産直前まで内診をしていたのは准看護師2人だった。関係者によると、助産師は新生児室にいたという。
関係者によると、同病院は助産師に新生児の取り上げだけでなく、内診も含めた分べんそのものにあまり関与させず、産後指導や新生児のケアを任せることが少なくなかったという。
さらに堀院長は、昨年末までは積極的に助産師を募集していなかったことを認めた。横浜市が保管している過去5年分の立ち入り調査記録によると、同病院の助産師数は01年以降6〜7人にとどまっている。
新生児の取り上げは、保健師助産師看護師法で助産師と医師のみに認められている。堀院長は「新生児を取り上げることを夢に抱いて助産師になる人が多いと思う。それを医者がやるので、励みが少なかったのか、助産師は何カ月かで辞めてしまった」と話している。
看護師らによる助産行為を続ける方針を表明していた堀院長は25日夕、同病院で開いた記者会見で「大変申し訳ない」と一転して陳謝。助産行為をなるべく医師がやるよう指示したと話した。
県警は、同病院の“助産師軽視”の実態や理由について解明を進める方針だ。【伊藤直孝、池田知広】
(毎日新聞、2006年8月26日)
****** 毎日新聞、2006年8月27日
助産師 力が生かされていない 「無資格助産」摘発の背景
「出産数日本一」をうたう産婦人科病院「堀病院」(横浜市瀬谷区)で、看護師らが助産行為を行ったとして警察に摘発された。子宮口の状態などを触診する内診は、医師か助産師が行うことが、法律で決められているにもかかわらず、助産師不足を理由に、看護師に任せる医師が少なくないことが、事件の背景にある。その問題点と、今、改めて注目される助産師の仕事の現場を追った。
◇医師のいない助産院ルポ 抱っこの仕方も教える
横浜市金沢区の住宅街にある山本助産院。医師はおらず、助産師のみの産院だ。3階建て、サーモンピンクの外観に白い大きな扉は、普通の家の趣。26日はリビングのような診察室で乳児健診が行われていた。
「形もいいねえ」と頭をなで、小さな左手を握りながら聴診器をあてていく岡本久仁子助産師(40)。体重や黄だんなどをチェック、母親の乳房マッサージをした後、抱っこひもの使い方も教える。地下のスタジオでは、育児サークルの母親たちがピアノに合わせて歌を歌う。6カ月の長男、泰君と来た高山尚子さん(35)は「ここに来ると助産師さんが『大きくなったね』って声を掛け、相談にも乗ってくれる。すごくありがたい」と話す。
同院は助産師6人で、月15件ほどの分べんがある。個室が5部屋あり、分べん台はなく、部屋のベッドや布団の上で出産する。助産師は健診、分べんのみでなく、マタニティーヨガや母親教室なども担当。「目指すのは子育てコロニー。母親同士のつながりを大切に、要所要所で助産師がアドバイスをしていければ」と山本詩子院長は話す。
法的に、助産師にでき看護師にできないのは内診と赤ちゃんの取り上げ。助産師は医師不在でも分べんを扱え、助産院を開業できる。ただし助産師で扱えるのは正常分べんに限り、異常がある場合は医師の診療を求めることが保健師助産師看護師法で規定されている。【柴田真理子】
◇医師に代わり助産師が検診行う「助産師外来」増える…産科医不足の地域
病院で医師の代わりに助産師が妊婦の検診を行う「助産師外来」が産科医不足の地方を中心に全国で増えている。助産師の力を借りて、地域の出産環境を充実させる狙いもある。
岩手県医師会は昨年9月、助産師外来の新設を求める「助産師外来開設のためのガイド」を全国で初めて作成、県内107カ所の全病院に対し配布した。これまで、県立釜石病院(釜石市)など4病院が開設している。
ガイドでは、助産師外来での受診資格を「胎児1人の妊娠で経過が正常であり、妊婦に病気がない」と限定。病院の体制が整い次第、助産師外来を設置することを求めている。検診内容は各病院に任せているが、釜石病院では妊娠26週ごろと34週ごろの妊婦を対象に、1人あたり30分間かけてカウンセリングを行う。
盛岡市の黒川産婦人科医院(黒川賀重(よりしげ)院長)では、2年ほど前に助産師外来を設けた。同院では年間平均550件の分べんに対し、医師1人、助産師14人、看護師7人で対応。超音波など医師による妊婦検診と組み合わせ、助産師検診を行う。40分〜1時間かけ、妊娠や出産の相談に乗る。
出産後も、乳腺がはるといった授乳の悩みや、夜泣きなどの育児不安に助産師が対応する。黒川院長は「専門性が高く、多様なケアができる助産師はトータルな出産、育児のサポートができる」と話す。【野島康祐】
◇堀病院長発言一転 背景に厚労省と日本産婦人科医会の「保助看法」解釈対立の歴史
堀健一・堀病院院長は、摘発された24日、「看護師による内診は必要悪」と強弁し、「医師の指示があっても、助産行為は助産師以外はできない」とする厚生労働省の見解に公然と反旗を翻した。ところが、翌25日には一転しておわびし、「(看護師らによる助産は)一掃しなければならない」と白旗を揚げた。
この背景には、保健師助産師看護師法(保助看法)の解釈と助産師の現状について、厚労省と日本産婦人科医会が対立した経緯がある。
厚労省は04年9月、医師の指示下でも、助産師以外は内診などの助産行為はできないことを明示した。これに対し、医会側は翌月、医師の指示があれば、看護師らによる内診などの助産行為を、保助看法は禁じていないとの反論文書を提出した。厚労省見解に従うと、診療所の多くが「違法」になってしまうからだ。
その後、医会側は再検討し、現行法では「看護師らの助産行為は違法」と認め、会員に順守を指示。その一方で昨年、厚労省の検討会で、助産師不足を理由に一定の専門知識を持つ看護師には分べん初期の内診を認めるよう主張した。しかし、これも、「安全安心なお産から逆行する」などの批判が多く、法律を見直すまでに至らなかった。
また、助産師の需要と供給についても、「助産師の絶対数が不足」とする医会に対し、厚労省は「出生児数を考えればおおむね足りている。受給の差も待遇のいい病院に多く、診療所には少ないという偏在問題」と認識も異なっている。
「陣痛促進剤による被害を考える会」の出元明美代表は元看護師。長女を、准看護師の助産行為のため重症仮死で出産し、1歳8カ月で亡くしている。出元代表は「助産師の能力、技術を活用しようとしない医師が多く、その意識改革が必要」と指摘。「看護師の学校では助産行為を教わらない。違法な助産行為を無くすため、医療機関は改善にもっと努力をしてほしい」と訴える。【玉木達也】
◇お産の場所選びのポイント…矢島床子さんに聞く
お産の場所は、何を基準に選べばよいのか。よりよいお産を目指し、医師や助産師、母親らで政策提言などを行うNPO法人「お産サポートJAPAN」の矢島床子代表にポイントを聞いた。
まず、助産師が常駐している病院、助産院を選ぶこと。「出産が始まってから助産師を呼び出す体制では、内診はその場にいた看護師が行う場合が多い」という。24時間対応できる数の助産師がいるかが目安だ。
また、看護師と助産師の区別がつくかどうかも見るとよい。ユニホームの色を変えたり、ネームプレートに職種を記入しているところは「助産師の存在を尊重しており、助産師自身もプライドをもっているはず」。妊娠中の勉強会、退院後の相談体制など、分べん以外のケアにも力を入れているかもチェックしたい。
(毎日新聞) - 8月27日10時40分更新
****** 朝日新聞、2006年8月26日
堀病院「無資格内診中止」
横浜市内で最多の出産数がある瀬谷区の堀病院への家宅捜索から一夜明けた25日、堀健一院長は、看護師ら無資格者による内診を中止する考えを表明した。不安が広がるなか、転院する患者も出ている。違法な状態はすぐに解消できるのか。立ち入り調査をした横浜市は、病院側の改善状況と、妊婦らへの影響を測りながらの対応を迫られることになる。
横浜市は午後1時過ぎ、職員6人が立ち入り調査に入った。
分娩(ぶんべん)の経過を記録した「助産録」の記載事項や、看護師と助産師の勤務態勢を確認した他、堀院長らから1時間半にわたり事情を聴いた。
堀院長は市に対し、開業当時から看護師に内診をさせていたことを認めた。ただ、胎児の娩出(べんしゅつ)は医師がしており、逆子などリスクの高い場合は医師が最初から内診を行っていると述べたという。
市は違法状態を解消するよう指導。堀院長はこれに応じ、医師と助産師を募集し人員を増強する考えを示した。
日中は医師が6人おり、医師が内診をすることで対応できるという。しかし、夜間は当直の医師が1人いるが、助産師がいないことがあった。今後は非常勤1人を含め6人いる助産師を交代で夜間勤務させ、内診を担当させるという。
ただ、違法状態がすぐに解消するかは微妙だ。市は「現に入院患者がおり、分娩は波があって非常に多くなる時もある。すぐに完全に違法状態を無くすのは常識的に難しい」とみる。
一方で、市内の病院や診療所で生まれる赤ちゃんは年間約2万5千人。堀病院では毎年約3千人の赤ちゃんが生まれており、1割以上を占める。
深刻な産科医不足の中、「別の病院でカバーするのは実際は難しい」とみる。それでも転院希望者には、できる限り受け入れるよう、医師会と病院協会に依頼した。
横浜市が電話で医療相談を受け付けている「医療安全相談窓口」にはこの日、患者や家族から130件の相談が寄せられた。約半数は「不安だ。転院したほうがよいのか」というもので、業務の停止や医師、看護師の退職を心配する人もいた。強く転院を希望する人には転院先について情報提供した。
相談窓口は通常は平日のみだが、今週末の26日(土)、27日(日)は臨時で対応する。番号は045・671・3500。対応時間は午前8時45分〜午後5時15分。
また堀病院も患者らからの問い合わせを電話で受ける。045・391・2561。午前7時〜午後5時。
■「助産師15人増やしたい」
病院側は午後5時から、堀院長と堀裕雅副院長が記者会見した。
患者らに対し「大変な不安とご心配をかけた」と謝罪。また、通院中の妊婦3人が他院に移ったことも明らかにした。
堀院長の記者会見での一問一答は次の通り。
――看護師による内診は従来通り行うのか。
「看護婦(師)もやりづらく、患者も不安なら一掃しなければならない。改善に努めるのが義務だと思っている」
――患者の反応は。
「特に不安を訴える声は聞いていない。ニュースを見て心配しているだろうから、入院患者は全員集めて説明した。患者さんは『分かっています』という反応だった」
――昨日の家宅捜索後、無資格内診はあったのか。
「(無資格の看護師ではなく)医師になるべく多く内診するように指示している」
――明日から無資格内診はゼロになるのか。
「一生懸命頑張ってゼロを目指す」
――助産師は増員するのか。
「準夜勤、夜勤、昼間の3交代で考えると15人は増やしたい」
――助産師が集まらなかった理由をどう考えるか。
「赤ちゃんを取り上げるところを医者にやらせたからだろう。一番おいしいところを医者にとられるのでは、助産師としてはおもしろくないし、励みがない。それで定着率が低かった」
――人件費を削減するために助産師を減らしていたのか。
「安くあげようということではない」
――内診を医師と助産師に限るという厚労省の方針には今も疑問を持っているのか。
「はい。内診が本当に違法なのかを検討してほしい」
(朝日新聞、2006年8月26日)
****** 朝日新聞、2006年8月26日
看護師内診 他の病院は
横浜市瀬谷区の堀病院は、横浜の妊婦さんにとって有名なお産施設でした。「ほとんどの病院で助産を看護師にやらせている」。看護師に無資格内診をさせていたとして、保健師助産師看護師法違反の疑いが持たれている堀病院の堀健一院長は、そう言っています。県内のほかの病院でも、こうした実態は本当にあるのでしょうか。妊婦さんの不安が広がるなか、関係者に聞きました。
(赤ちゃん取材班・赤木桃子、大貫聡子)
「子宮口が全開大するまでの内診や経過観察は多くの診療所では看護師がしている。助産師しかできない、ということであれば多くの診療所は閉めるよりほかない」
横浜市内で開業するある産婦人科医は、匿名を条件にこう話した。この診療所では夜間、助産師が1人だけになってしまうため、夜間の急なお産が重なった場合に看護師に内診を任せているという。
ほかに、三つの診療所の産科医に尋ねた。看護師による内診は診療所では恒常化しているところは多いと、どこも同じ答えが返ってきた。
実際、2年前までは看護師による経過観察について、厚生労働省は違法との認識は明確に示していなかった。違法であるとの通知を都道府県に出したのは04年になってから。これに対し、日本産婦人科医会は「多くの診療所が慢性的な助産師不足に悩んでいる。厚生労働省の指示通り、看護師が内診や経過観察を行えないと、これらの診療所では分娩(ぶんべん)が行えないことになる」と通知の撤回を求めている。
しかし、堀病院の問題が、医療関係者に衝撃を与えたのは、待遇などから助産師を確保しにくい「診療所」(病床数19以下)ではなく、一般的に助産師が集中する「病院」(病床数20以上)で無資格内診が常態化していた点だ。
県地域保健福祉課によると、県内の助産師総数は04年現在で1436人。その68・5%は病院勤務だ。診療所は15・5%、助産院は7%。06年度の県内の助産師の需給の見通しは、需要が1679人、供給が1530人。
一見、数字上は病院での助産師は足りているようにも映る。しかし、堀院長は「ほかの病院をみても助産師がそろっていない」と主張する。
その一方で、約1100人の助産師が加盟する県看護協会の堀喜久子常務理事は「お産の件数が多い病院では、一般的に助産師の数も多い。ほかの多くの大きい病院では、助産師がちゃんと助産行為をしているのではないか」と話す。
ただ、看護協会には「准看護師ですが、助産師の仕事をやれと言われました。どうしたらいいでしょうか」という相談が寄せられたこともあるという。
しかし、堀病院の場合、分娩室内まで看護師らが内診していた疑いも持たれている。記者会見で堀院長は「分娩室に入るまで看護師に内診をさせていた」と否定したが、県警は、分娩の第2期と呼ばれる出産直前の段階まで看護師が任されていたとみている。
「分娩室に入るまでの経過観察を看護師がすることはあっても、看護師が分娩室に入って出産直前まで診るという話は聞いたことがない」。ある産婦人科医は、こう指摘した。
(朝日新聞、2006年8月26日)
****** 読売新聞、2006年8月25日
無資格助産行為、出産現場は違法日常化
“割安”看護師が代役
横浜市の堀病院で、無資格の看護師らが妊婦の産道の状態を調べる「内診」などの助産行為をしていたとして、神奈川県警は24日、保健師助産師看護師法(保助看法)違反の疑いで家宅捜索に踏み切った。
厚生労働省はこうした助産行為を「違法」とする通知を出してきたが、出産現場の一部では今も同様の違法行為が行われているとみられる。(生活情報部 榊原智子、森谷直子、横浜支局 山内竜介)
厚労省通知、生かされず
内診とは、陣痛が始まった女性の産道に手を入れ、子宮口の開き具合などを調べる助産行為で、出産の進行が正常か否かを判断する。厚労省医政局は「異常があれば医師を呼び、対策を講じる必要が生じる。母子の安全に大きな影響を及ぼす重要な行為であり、専門教育を受けた医師か助産師が行うのが当然」と話す。
だが日本産婦人科医会はかつて「内診は『診療の補助』に当たり、看護師が行っても問題ない」と解釈、内診をさせてきた。これに対し厚労省は2002年と04年に「看護師による内診は違法」との見解を都道府県に通知した。
ところが、助産師たちは今も「助産師の給与が約30万円なのに准看護師は約20万円だからと、医師が准看護師に助産師と同じ仕事をさせている」などと証言。関東地方のある産科医も「私が外来で手が離せない時には、看護師に内診をさせている」と明かす。日本助産師会などにも情報が寄せられている。
また、産院で看護師が助産行為を行っている問題には、助産師がうまく活用されていない実態もある。
現在、国内で就業している助産師は約2万6000人だが、日本助産師会によると、助産師免許を持ちながら、助産師としては働いていない「潜在助産師」が、やはり約2万6000人いる。国は今年度から、潜在助産師に復帰を促す研修事業を始めた。
一方、出産事故による被害者救済活動を行ってきた市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」代表で元看護師の出元(でもと)明美さんは「看護師らによる助産行為が各地で医療事故を招いている」と指摘する。
同会が把握した「看護師や准看護師らによる違法な助産行為」が関係した出産事故は14件に上る。「異常に気付かずに処置を怠り、子どもが死亡」など重大事故が多い。
◇
捜査の端緒は2003年12月に堀病院で長女を出産後、死亡した女性(当時37歳)の夫からの相談だった。県警は、夫が証拠保全した資料の検証を専門家に依頼、元病院職員らからも極秘に聴取した。年間出産数を3000件とアピールする堀病院が、規模に比べ助産師数が少ないことにも注目。看護師らによる助産行為が常態化していた疑いが強いとみて強制捜査に踏み切った。「『日本一』という病院が法律違反を知りながら、母子の安全をないがしろにしていたとしたら極めて悪質。摘発して業界に警鐘を鳴らす」という狙いもあった。
(2006年8月25日 読売新聞)
****** 読売新聞、2006年8月25日
違法助産、横浜市が検査で気づかず
年1回、看護師数などチェック
横浜市瀬谷区の産科・婦人科・小児科病院の「堀病院」(77床)が看護師らに助産行為をさせていた事件で、横浜市は毎年1回、同病院に対し、医療法に基づく立ち入り検査をしながら、開業以来約40年間にわたって続いていた違法行為に気づいていなかったことが25日、わかった。
市は25日午後1時過ぎ、緊急立ち入り検査を始めるとともに関係者から事情聴取し、実態把握を急ぐ。
市によると、年1回の立ち入り検査では、必要な医師や看護師の数などを書類でチェックしている。しかし、患者数に対する看護師や准看護師、助産師を合わせた数は、医療法の基準を上回っていれば問題がなく、助産師については少なくとも1人いることが確認できればいいという。出産数についても確認はしていたが、市は「出産数には波があり、助産師が一概に少ないとは言えない」としている。
市の担当者は「現在の法律では出産数に対する助産師数の基準はない。現場で助産行為にあたる人員が十分かや、違法行為があったのかまでチェックするのは難しい」としている。
(2006年8月25日 読売新聞)
****** 読売新聞、2006年8月26日
無資格助産、院長…「ゼロになるかわからない」
横浜市瀬谷区の「堀病院」が看護師らに無資格で助産行為をさせていた事件で、堀健一院長(78)らが25日、記者会見し、「患者や妊婦に不安を与え、深くおわびしたい」と陳謝する一方、堀病院での違法な助産行為が「ゼロになるかどうかはわからない」との認識を明らかにした。
堀病院での出産件数は昨年1年間で2953件に上るが、常勤の産科医は6人で、助産師は5人。会見で堀院長は、助産師を募集して改善を図る姿勢を示したが、同席した長男の裕雅副院長(48)は「助産師学校を増やさないと、どうしようもない」と指摘。さらに、「厚生労働省の通達は(問題となった『内診』の定義が)あやふや」とし、「場合によっては容疑を否認する」と述べた。
(2006年8月26日 読売新聞)
****** 読売新聞、2006年8月27日
転院受け入れ 半数「無理」
助産師の偏在傾向も
「堀病院の出産数は市全体の1割で、それを別の病院でカバーするのは難しい。衝撃は大きい」。立ち入り検査後に会見した市の赤岡謙医療政策課長は、険しい表情で事件の余波の大きさを指摘した。市内の医療機関などでの出産数は年約2万5000件で、うち約3000件を堀病院が占める。
市の医療安全相談窓口には、「不安なので転院したい」という妊婦からの相談が殺到。大半が転院に関するもので、市は他の医療機関の情報を提供するとともに、医師会などを通じて受け入れの協力要請も行った。
市が3月に行った実態調査によると、市内で出産を扱っている医療機関・助産所は56施設で、2003年度より9施設(診療所7、病院、助産所各1)減っている。
さらに、3施設が出産の取り扱いをやめて検診だけ行い、1施設が出産の件数を減らす意向を示している。
常勤の産科医は3年前の181人から167人に、非常勤も12人減って147人となっている。出産は昼夜を問わず、勤務が過酷になることなどが、なり手不足を招く一因になっているとされる。
このため、市内では転院先を確保するのも大変な状況になっている。各医療機関とも対応できるギリギリの状態で運営しているため、市の協力要請にも半数の医療機関は「受け入れは無理」と返答している。
一方、助産師は452人で、3年間で66人増えている。堀病院の院長は、違法行為を行った理由として「助産師が集まらなかった」と話すが、市全体で見ると「助産師不足」があるとは言えない。
これについて、市医療政策課は「赤ちゃんの取り上げを医師が行う病院もあるので、助産師は働きがいのある病院を選んでいるのではないか」と、医療機関によって偏在があると分析。「産科医を疲弊させず、助産師が活躍できる体制を考えなければならない」と指摘している。
(2006年8月27日 読売新聞)
****** 東京新聞、2006年8月26日
堀病院 分娩、助産師関与させず?
医師に従う看護師重用か
横浜市の産科婦人科「堀病院」で出産前の「内診」を無資格の看護師らに行わせていた事件で、同病院では基本的に助産師を分娩(ぶんべん)に関与させない方針だったことが二十五日、分かった。「分娩には医師の指示に従いやすい看護師らを立ち会わせていた」との情報もあり、神奈川県警は押収した分娩記録などの分析を進め、保健師看護師助産師法違反容疑で、堀健一院長(78)らを書類送検する方針。
調べに対し、堀院長は「私の考えでお産行為は医師にやらせていた」と説明。しかし、同日午後の記者会見で助産師を分娩室に入れなかったのではないかと問われると、「それはない」と述べ、助産師も出産にかかわっていたと主張した。
だが「陣痛促進剤による被害を考える会」の出元明美代表によると、同病院で勤務経験のある助産師は「助産師は授乳指導や新生児保育室のみで働いていて、出産には関与できなかった」と証言しているという。年間約三千件の出産を誇る同病院の助産師は六人しかおらず、同規模の病院と比べて極端に少ないため、看護師の内診行為が日常化していたとみられる。
出元代表は「豊富な経験を持つ助産師ではなく医師に従いやすい看護師に分娩をやらせていたのではないか。全国的な助産師不足ではなく、助産師を使いたがらない医師が問題だ」と指摘する。
堀院長は二十四日夜、「必要悪だ。違反状態を続けるしかない」と、看護師らによる内診を続ける意向を示していたが、この日の会見では一転して「患者に不安と心配をかけた。本当に申し訳ない」と謝罪した。
■夜間の助産師人員配置改善
横浜市の産婦人科「堀病院」の無資格助産事件で二十五日、横浜市が立ち入り検査を行い、改善を指示した。これを受けて病院側は手薄だった夜間の助産師の配置を充実させることなど、当面の改善策を示した。
市によると、同病院は看護師らが行っている内診について、当面は医師が行う体制に変更。主に昼間に勤務していた助産師を夜間に回し、医師が少ない夜間の内診に対応するとしている。長期的には医師や助産師を増員する方針という。
一連の問題について、病院に相談窓口を設けて説明することや、転院希望者には責任を持って対応することも示した。
一方、市が同日から始めた通院患者らを対象にした相談窓口には、一日で約百三十件の問い合わせがあった。「堀病院で出産予定だが、不安なので転院したほうがよいか」「病院は営業停止になるのか」といった声が寄せられた。医療関係者からは「転院希望者が殺到しており困っている」との相談もあった。市は土日も相談を受け付ける。窓口の電話番号は045(671)3500。
(東京新聞、2006年8月26日)
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