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(回答先: 貨幣流通速度に見る日本経済の深刻度 【 (エコノミスト98/9/29) 根本 伸哉】 投稿者 hou 日時 2006 年 8 月 13 日 06:45:32)
http://www.iist.or.jp/wf/magazine/0227/0227_J.html
銀行の貸し出し態度改善が国内景気の局面転換を示唆
HSBC証券会社 東京支店 調査部
シニアエコノミスト
尾形 和彦
名目GDP成長率の先行指標である銀行の貸し出し態度が今年の5月を境に急速に改善している。これは通貨の流通速度上昇と日本経済の局面転換を物語っている。
国内経済は今、ひとつの転換点を迎えている。それを端的に表す事象が銀行の貸し出し態度の改善である。下のグラフは銀行の中小企業に対する融資態度BSI(ビジネス・サーベイ・インデックス、「緩い」−「厳しい」)と、名目GDP成長率の推移を示したものだが、これをみると、同BSIが名目GDP成長率に先行しているのがわかる。同BSIは2000年11月を直近のピークとして悪化し始め、今年2月まで下がり続けた。しかし5月には上昇に転じ、8月は過去2番目となる急上昇となった。11月もさらに上昇を続け、水準としてはすでにITバブル期のピークを上回って1997年8月以来の水準にまで改善し、景気の局面転換を裏付けている。
銀行の貸し出し姿勢の変化の背景にあるのは大手行を中心とする経営の安定だ。大手行は3月の時点で2兆円規模の資本増強を実施。5月には、りそな銀行に公的資金が投入された。外部環境面でもイラク戦争が終結。世界的な金融緩和の流れの中で株価も上昇し、銀行のリスク許容度が高まっている。金融庁の業務改善命令も出されたことで、銀行は中小企業向け融資を積極化。これが景気浮揚をもたらす格好となっている。
銀行安定化が景気に与える効果に関しては、「市中には資金がだぶついており、銀行を強化しても貸し出しは増えず、したがって景気浮揚効果もない」という反論もある。しかし、そもそも現在の日本経済にとって問題の焦点は「資金(お金の量)が足りない」ということではない。「豊富にあるはずの資金が回っていない」、すなわち「通貨の流通速度が低下している」ということである。通貨の流通速度低下は、マネー創造の最大の源泉である銀行の不安定化が大きく影響する。企業(特に中小企業)は今年の春先まで、「銀行がいざという時に貸してくれない(貸し渋り)」、あるいは「急に返済を迫られるリスクがある(貸しはがし)」との危機感を感じていた。このような状況の下では、キャッシュフローの大半をいざという時に備えて現金や預金などの手元流動性として余分に積み上げざるを得ない。その結果、本来なら設備投資などに回るはずだったキャッシュフローが、使われずに貯蓄されてしまう。このような資金フローの凍結(マネー退蔵)が景気下振れをもたらしてきたのである。
しかしながら今年の5月以降、局面は一転した。銀行の強化・安定化と貸し出し態度の改善によって企業は安心して設備投資を増やせるようになったのである。実際、今年4−6月期における実質GDPベースの民間設備投資は前期比年率換算で16.5%増加し、1996年7−9月期以来の高い伸びを実現した。日本の景気は設備投資を中心とする内需回復に加えて、米国の急回復を反映して輸出も好転し、内需と外需の両輪がそろった。上昇トレンドが持続しやすい環境となったわけであり、これによって銀行の経営安定化が一段と進む、という好循環も視野入りしてきた。
また、鉱工業生産の動きや、デフレに緩和の兆しがみられることも、国内経済が転換局面にあることを示唆している。鉱工業生産はこの9月に前月比3.8%増と大幅に上昇し、10月は1.0%増、11月も0.8%増と上昇が続いた。経済産業省の見通しによると12月は0.4%減となっているが、1月は3.4%増と再び急上昇が見込まれている。仮にこれが実現すれば、2000年を100とした鉱工業生産の水準は1月に101.4に達し、ITバルブ期のピーク時の水準(102.7)に限りなく接近する。鉱工業生産は戦後、ほぼ右肩上がりで推移し、91年5月には103.4と過去最高に到達した。その後は横ばいトレンドが続き、12年半の長きにわたって最高記録を更新することができないでいた。しかしながら今回の景気回復局面では12年半ぶりに過去最高記録を更新し、長いトンネルを抜ける可能性が見えてきたのである。