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(回答先: Dow Jones Sustainability World Indexes 【CSR】 投稿者 hou 日時 2006 年 5 月 27 日 19:40:30)
http://www.patagonia.com/japan/enviro/reports/2004/corporate.shtml
地球に対する企業の責任
by イヴォン・シュイナード
『Winter 2004』カタログ掲載
仲間のためにギアを作ることで事業を始めたアルピニストの私は、自分自身を「ビジネスマン」と意識したのは、ビジネスマンになってからかなり後のことだったが、ずっと企業の責任とは何かという課題と格闘し続けてきた。ビジネスとは実のところ誰に対して責任があるのかということに悩み、それが株主にでも、顧客にでも、あるいは社員にでもないという結果にようやく達した。根本的にビジネスは資源元に対して責任がある。自然保護論者のデイビッド・ブラウワーが、「死んだ地球からはビジネスは生まれない」と言っているように、健康な地球がなければ株主も、顧客も、社員も存在しないのだ。
それにしても、環境に対し責任を持って行動することは、一体どういうことなのか? ビジネスを始めてからこの質問にたどり着くまでに、25年近くの年月を要した。さらにその答えを求めて、パタゴニアだけでなく、環境意識の高い企業であれば通らねばならない過程を見つけるまでに、15年間の努力と失敗を重ねてきた。ここではその過程を5つの段階に分けて説明しようと思う。この5段階は企業にだけでなく、自らの環境への影響を減らし、変化を起こしたいと考えている個人にも適応する。
まず1つ目は、吟味された生活をすること。人間が引き起こす環境へのダメージのほとんどは、無関心が原因である。問題を直視せず、知ったことによって行なわなくてはならない行動をしたくないがために学ぶことを拒否する場合、無関心は意図的な悪意となる。
その例として15年前、私たちは製品に使用する4つの主要素材(コットン、ウール、ポリエステル、ナイロン)のうち、どの素材が最も環境に悪影響をおよぼすか、そしてどのような悪影響であるかについての知識がなかった。ただ、「天然」のコットンは害がなく、石油を原料とするポリエステルが環境に最も多大な害を与えているだろうと考えていた。そこで、これに関する緻密な環境アセスメントを実施した。するとその結果、従来の方法で栽培されるコットンは全米で使用される殺虫剤の25%(すべての農薬に対しては8%)を使用し、4素材の中で環境に最も悪影響を与えているという真実を学んだのだ。それ以来多くの疑問を投げかけ、そのことがさらに多くの行動につながった。リサイクル・ポリエステルやよりインパクトの少ない染料の使用を始め、ラゲージ素材にPVC(ポリ塩化ビニル)を一切使用しないなど、さらに多くの行動に繋がった。
2つ目は、自己の行動を正すこと。環境負荷がわかったなら、それを減らす努力をすること。そして、減らすことが可能なら、実践しなくてはならない。私たちはコットン栽培が生み出す悪影響を認識するやいなや代替案を探し、オーガニックコットンを発見した。オーガニックコットンはどんな大きな環境問題も引き起こさなかったが、当時は栽培量が限られていたために入手が困難で、加工も容易ではなかった。オーガニックに切り替えるためには、農家から綿繰り、紡績、織布やニットの各行程までを含む新たな基盤を構築しなければならなかった。しかしパタゴニアでは、オーガニックコットンの環境への負荷の少なさを知れば知るほど、皆が溢れんばかりの活気でほとんど不可能と言われたスケジュールをこなし、わずか2年間でオーガニックコットンへの切り替えを成し遂げたのだ。私たちのビジネスパートナーも同様に非常に協力的だった。人は何が正しいのかがわかりさえすれば、それを実践したいと思うのが当然なのだ。
3つ目は、罪を償うこと。どんなに思慮深い企業であっても、廃棄物や汚染の原因を出すことは避けられない。私たちは初期の素材アセスメントにおいて、ポリエステル樹脂の製造過程で危険な重金属であるアンチモンが使われていることを学んだ。そしてそのアンチモンを除去するためには大手の化学薬品会社を相手にしなければならず、聖書に登場するダビデとゴリアテのエピソードのごとく、私たちには巨人を動かすことはできないと判断せざるを得なかった。現在も解決策を模索する一方で、他の責任ある企業と同様に、私たちは自らの罪を償わなければならない。
そこでパタゴニアでは、「地球税」という形で罪を償うことを始めた。過去何年間にもわたり、パタゴニアは収益の一部を自然環境の保護回復活動に取り組む草の根団体に寄付してきた。そして1996年には、利益は簡単に操作できるという理由で、利益水準がどのようになろうと、毎年常に売上の1%を寄付することにした。パタゴニアはこのプログラムを通して現在までに、数千もの団体におよそ2000万ドル(約22億円)の助成金を寄付してきた。
4つ目は、市民が主役の民主主義を支援すること。行政と企業が多大な力を持っていることは言うまでもないが、情熱を持って問題に取り組む人々の小規模団体にも大きな影響力を持つことは可能である。過去200年間の偉大な社会運動の数々は、民主主義そのものを含め、女性の権利、社会的平等、環境保護など、自分たちの意志を世に伝えようと努力を続けた小さな団体による運動から始まっている。今日のアメリカ合衆国では、カヤッカーや釣り人たちが構成するいくつかの小規模団体が、ダムの撤去を求めて熱心に活動を行なっている。同様に、カモのハンターたちは湿地帯の保護を求め、母親たちは地元の埋め立て廃棄物の浄化を求めて懸命に運動を続けている。
私はアウトドアで過ごしてきたこれまでの経験を通して、自然は多様性を好み、単一化や集中化を嫌う性質があるということを身をもって学んだ。これと同様に、それぞれ特定の問題に専念して取り組む多種多様な組織は、大きくなりすぎて慎重になったNGOや、いくつもの難題に一気に取り組もうとする行政よりも優れた成果を生み出すことができる。私は、厳しい法には賛同するが、政府は信用していない。それよりも、小さな土地や川の流れを守るため、川を監視する人や木の上に座り込む人といった、第一線で活動する人々を支援する。彼らこそが企業から自然を守り、政府を公正に保つ力を持っているのだ。だからこそ、パタゴニアはこのような団体に寄付を続けている。
5つ目は、他の企業に影響を与えること。今までのステップに取り組んでいるなら、ここにたどり着くのはごく自然のことであるが、環境に対して責任を負う新しい方法を見つけた企業には、その知識を広める義務がある。パタゴニアの先導に続いたオーガニックコットン農家、綿繰り工場、紡績工、織布工、衣料品製造業者はそれぞれ新たな収入源を創造することになり、その結果、商品化が進むと共にオーガニックコットンのコストが下がったことはその良い例である。
人は何が正しいのかがわかりさえすれば、それを実践したいと思うものだということは、ここでも明らかである。1990年代にパタゴニアの環境アセスメント・チームをリードしたマイク・ブラウンは、現在Eco-Partners(エコ・パートナーズ)を運営し、ナイキ、マウンテン・イクィップメント・コープ、さらにはフォード自動車などを含む各種企業の環境担当者を集め、情報や知識を交換している。そして現在、パタゴニアは紡績工場と協力してポリエステルの製造からアンチモン(および臭化メチル)の使用を撤廃する方法を探し続けている。また、私たちは「1%フォー・ザ・プラネット」という団体を組織し、企業が熱心な環境保護活動家たちを援助するように働きかけている。
最後に、パタゴニアは完璧に社会的責任を負うことはできないことを認める。また、今すぐには「ゆりかごからゆりかごまで」完全循環型の製品を生み出すことができないことも。私たちの道のりはまだまだ先が長く、道しるべもない。しかし今後もその時それぞれの状況を読み取り、次の段階、またさらに次の段階へと進み続ける努力を続けていくことだけは、確かである。
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