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(回答先: 世界最大手ミタル・スチール社長――「欧州の政治家が人種差別的な発言をしているのは非常に悲しいことだ。」 【日本経済新聞】 投稿者 hou 日時 2006 年 2 月 20 日 17:53:58)
鉄鋼世界最大手のミタル・スチール(オランダ)が二位のアルセロール(ルクセンブルク)に約二兆六千億円の敵対的買収を提案、にらみ合いが続いている。ミタルは群雄割拠の鉄鋼産業を「競争の少ない世界(=寡占市場)」に一変させようとしており、買収成立時の衝撃は、取引先の自動車や資源産業にも玉突きで及ぶ可能性がある。
ミタルはインド出身のラクシュミ・ミタル氏が三十年前に創業。ウクライナなど旧社会主義国の国営製鉄所を相次ぎ買収して急成長してきた。「新興市場の汎用品メーカー」だったが、昨年、米三位のISGを買収、「グローバルな高級鋼材メーカー」の顔も備え、間髪入れず最大のライバルをのみ込みにかかった。
アルセロールは提案を拒否しているが、買収が成立すれば粗鋼生産量は年一億トンと、現在世界三位の新日本製鉄の実に三倍。世界シェア一〇%と、鉄鋼産業の歴史でもずぬけた存在になるため、海外ではミタル会長を十九世紀末の鉄鋼王カーネギーになぞらえる報道まで出てきた。
ミタル氏を駆り立てるのは寡占への渇望だ。究極の目的は「好不況を繰り返してきた鉄鋼業界から景気循環をなくすこと」。昨年六月の講演では「鉄鉱石業界は上位三社で四分の三の世界シェアを握るため利益率は三五%にのぼるが、鉄鋼は上位十社のシェアが四分の一しかないため利益率は一〇%程度にすぎない」と指摘。「世界規模で統合を進めれば景気サイクルを小さくできる」と、巨大買収を“予言”していた。一握りのメーカーが市場の大半を押さえて生産をコントロール、川上の鉄鉱石・石炭会社や川下の自動車メーカーに圧倒的な交渉力を行使する。それがミタル氏の描く理想の鉄鋼産業像だ。
鉄鋼業界には期待と不安が交錯する。巨大なチャンピオン企業が誕生して鋼材市況が高値安定すれば、収益水準はさらに上向くが、米↓欧と買収を仕掛けてきたミタルが矛先をアジアに向ければ、新日鉄や韓国ポスコが次の標的になってもおかしくない。英エコノミスト誌は「巨人の時代」と題した記事で「今回の買収が失敗しても、鉄の世界統合の流れは止まらない」と指摘した。
歴史を振り返ると、一つの企業統合が業界や国境を超えたドミノ再編の引き金になるケースは多い。一例が一九九九年のルノー―日産自動車の提携。「ゴーン革命」による取引先選別は、二〇〇二年のJFE誕生(川崎製鉄とNKKの統合)の呼び水になり、商社の鉄鋼部門統合にもつながった。今回は下流の自動車ではなく、上流の資源会社の寡占化が鉄鋼再編の引き金となっている。寡占が寡占を呼ぶ連鎖がどう波及するのか。トヨタ自動車関係者も注視する。
最近は世界規模で寡占を追い求める動きが目立つ。日本でも、米原子力大手ウエスチングハウスを買収する東芝の西田厚聡社長が「世界で一―二位を争う」と宣言。松下電器産業はプラズマテレビで世界シェア四割を目指す。一握りの強者だけが残り、その他はふるい落とされる苛烈(かれつ)な競争。日本企業に三期連続最高益に浮かれている暇はない。
(産業部次長 松本元裕)