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(回答先: 日銀は緩和解除判断の最終局面、デフレに逆戻りしないか見極め続く 【ロイター】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 1 月 28 日 06:58:35)
立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」 第62回
2006年の日本経済を展望する量的緩和巡る政府・日銀の攻防
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/index.html
いま日本は、良い方に向かっているのか、悪い方に向かっているのか、ベクトルの方向がどちらを向いているのか、見当がつかない。短期的にはよい方に向かっているようだが、中長期的には、悪い方に向かっているのではないかという危惧から逃れることができない。
いま私が一番注目しているのは、日銀と政府との間の、量的緩和政策をめぐる綱引きである。
日銀が、すでにデフレ脱却の兆候が見えてきたとして、量的緩和政策の解除、日銀の判断においていつでもやることがあるぞという姿勢をさまざまな形で明確にし出した。それに対して、政府の方は、小泉首相をはじめ、竹中平蔵総務相、谷垣禎一財務相、中川秀直政調会長など、有力閣僚、有力党幹部たちが、手をかえ品をかえ、そうはさせじと日銀にプレッシャーをかけつづけている。
景気の現状判断と先行きどうなるかの読みは、いつでも強気筋と弱気筋では、読みが正反対になるのが常だから、こういうことが起こるのは珍しいことではない。
簡単にいえば、政府は、景気はまだ十分に回復しておらず、ここで日銀がカネの流れを締める方向に政策転換したら、そのとたんに、景気が失速するどころか、逆流する恐れがあると思っているらしいし、日銀は、景気は失速するどころか、このままいけば、暴走して、第2のバブル経済を到来させるおそれすらあると警戒しているようだ。
どちらが正しいのかといえば、どちらも部分的に正しいのだろうと思う。要するにどちらも楯の片面しか見ていないということである。
景気についても地方の声を代表しがちな自民党代議士
だいぶ前から、地方の人に会うと、景気が回復しているように見えるのは、東京など大都市だけで、地方はまだ真暗闇ですよとよくいう。きざしすら見えてないという。
政治の世界はもともと、地方出身の政治家の声がアンバランスに拡大されて伝えられる構造になっている。どうしたって、地方は景気回復なんてぜんぜんですという声に引きずられがちである。
しかし、日本経済がすでにバブル経済化しつつあるというのも、否定しがたい事実だと思う。
経団連の首脳の間からすら、OLが株のネット取引でこんなに儲けただの、あの株を買うといいといった話をするようになった事実をあげて(ネタは週刊誌)、経済がバブリーになりつあると懸念する声が出ていると伝えられている。
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/
先のみずほ証券の61万株誤発注問題で、数10億円の儲けを出した男が、株のプロでも何でもなく、実は、数年前に、サラリーマン生活のかたわら貯め込んでいた100万円の資金をもとでにはじめたビギナーレベルであったという。
彼はネット取引に入れ込んで、あっという間に巨額の儲けを出した。今年の儲けはすでに数百億円になっているから、「みずほ」で儲けた数十億なんて、なんとも思っていないのだという。そういう話を週刊誌で読まされると、これぞ経済のバブル化そのものではないかという気がする。
メディアによって拡大された特異的現象に目を奪われるな
昨日の日経新聞のトップ記事、「街角景気 活気づく消費」にあげられているさまざまなエピソードも、経済がまさにバブル化しつつある状況をよく伝えている。
いわく、25万円のCD180枚組全集(「モーツァルト全集」)に予約が続々。大阪の高級ホテル(リッツカールトン)では、ルームサービスで注文されるワインの価格が6000〜8000円台から、1万2000〜1万4000円台へと倍増しただけでなく、なんと27万円のワインを一挙に注文した人がいるという話には、唖然とした。
銀座の松屋では、3万円〜5万円する高級スキンケアクリームが、1日10個以上売れるという。
こういうエピソードが次々に生まれてくるところ、15年前にバブルの時代そっくりである。
「そういうぜいたくなことをしている人は、社会のごく一部の人であって、まだ社会の大半は景気の谷間にあって日が当たっていない」という声が聞かれそうだが、ここで思い出していただきたいのは、あのバブルの時代だって、新聞ダネになるようなバブリーなことをしていたのは、社会のごく一部の人たちであって、大半は、ごく普通の生活をいとなんでいたのである。
いつの時代でも不景気のあとに好景気がくるとき、景気の火がついて、燃えさかりはじめたときに、火のまわり方のスピードで、局所的に温度差が出るのは、当然の話であって、バブリーな現象と、景気に見放された人々の悲惨な話が同時に報道されるのは歴史上珍しいことではない。
大切なのは、メディアによって拡大された目の前の特異的現象に目を奪われることなく、大きな客視的な流れを見失わないことである。
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/index1.html
日銀が政治家の恫喝に屈すれば経済は破綻
大きな流れは、どこでどのように読みとることができるか。基本は、マネーの流れの数量的変動データである。(デフレも、インフレ(バブル)も、基本的には、マネーの数量的現象であり、その現状況を誰よりも早く、誰よりも確実につかむことができるのは、日銀である。
最近、日銀が日々に、具体的に何をやっているかを解説した本を読んで、日銀が日々のどころか時々刻々のマネーの流れの数量データをどれほど精密にリアルタイムにつかんでいてるかを知って驚いた。
マネーの流れをデータ的につかむだけでなく、日銀自身がプレーヤーとなって、その流れの微調整を何度も何度も繰り返し行うことによって、いわば日本経済全体のすみずみまで流れる血流量の最適化がはかられている。そのおかげで、このような苦境にあっても、日本の経済が破綻することなく、ここまでなんとかやってこられたのだということを知った。
政治家連中は、大雑把な大言壮語を得意とするが、マネーの流れのリアルタイムの精密な流量データから、いまただちに何をなすべきかなどという判断はしようたってできる人々ではない。
モチはモチ屋にまかすべきであって、ここで、日銀が下手に政治家連中の恫喝にヒザを屈するような事態があったら、日本経済は、前回のバブル破綻以上の大破綻をきたすことになるだろう。
いま日本経済に充満しているのは、いちど火が点いたら止めようがないほどの大爆発を起こすに違いないような、歴史上いまだかつてない量の過剰運動流動性のガスである。
それは驚くほどの長期間にわたってつづけられてきた、ゼロ金利政策、量的緩和政策によてもたらされた。それは日本を大破綻から救うために人為的に作り出された運動流動性であるが、それがもうギリギリの危険水準まできていることは、日銀がもっと流動性を供給しようと、買いオペをしても、札割れを起こすという現象が、しばらく前から何度も何度も起きているという事実によって証明されている。
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/index2.html
ハイパーインフレで国民は貧乏のドン底に
この状況を目ハシよく利用して、たまげるほどの大儲けをすでにしている連中の話が大衆的なメディアに載るようになる(すでにそれは起きている)と、大爆発⇒大破綻が近いのである。
日銀首脳は、リアルなデータにもとづいて、この危険な状況を誰よりもよく知っているが故に、繰り返し警告を発しているのだろうが、それに反発する政治家連中は何を考えているのだろう。
事態がよく理解できないバカ(経済音痴)である可能性も強いが、もしかするとあの連中が心中秘かに考えていることは、日銀の行動をおさえることによって、日本経済を大爆発=大破綻(ハイパーインフレ)に導き、それによって日本経済の最大の難問、すなわち救い難いレベルにまで達した財政破綻を一挙に暴力的に解決してしまおうとしているのではないかとさえ思えてくる。
それは、あの大戦争(赤字国債のたれ流しによって遂行した)に敗れた後に日本に現実に起きたことで、政府は、とても返済不可能な額に積みあがってしまった赤字国債を、ハイパーインフレで全部チャラにしてしまったのである。それは言葉を変えていえば、国民のすべてを貧乏のドン底に追いこみ、その犠牲によって、すべてを清算したということである。
口に出しては、誰も死んでもそうはいわないが、内心もうそれしか手がないと思っている政治家が少なくないだろう、と私は疑っている。
だいたい、小泉首相があと一年で何がなんでもやめるといっているのも、ポスト小泉の最有力候補といわれる安倍晋三官房長官が、言を左右にしてポスト小泉になかなか手をあげないのも、この破局が目の前に迫っているのを知っているからではないのか。破局を避けようとするなら、大増税しかないのだろうが、政治家たちはそれもやりたくないのだ。
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立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌—香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051226_kouboh/index3.html