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(回答先: GM危機とアメリカ(3)医療費負担の膨張――「企業保険」の伝統放棄。 【日本経済新聞】 投稿者 hou 日時 2006 年 1 月 24 日 21:53:16)
地元経済界は冷静
米ゼネラル・モーターズ(GM)が北米九工場の閉鎖と三万人削減を打ち出した。閉鎖する完成車五工場の一つであるドラビル工場(ジョージア州アトランタ近郊)は、年産能力二十万五千台と閉鎖対象としては最大規模だ。二〇〇八年に閉鎖される同工場を訪れると、社員の表情には怒りとあきらめが混じり合っていた。
「コストを削減しない限り、グローバル競争には勝てない」。GMがリストラ策を発表した二十一日、ドラビル工場で働く約三千人の社員は、構内モニターから流れるリチャード・ワゴナー会長の説明に聞き入った。アトランタ中心部から車で北へ約三十分。東京ドーム十五個分の敷地に広がる同工場も、閉鎖リストに名を連ねた。
同工場は戦後間もない一九四七年に稼働。GM黄金期を支える工場の一つだったが、八〇年代以降は低迷。現在、稼働率は六〇%台まで落ち、駐車場には出荷待ちのミニバンが所狭しと並ぶ。
昼夜勤務が入れ替わる午後二時半すぎ。午前四時からの仕事を終えた社員が次々と工場から出てきた。組み立てラインで二十一年間働いてきたという男性社員(40)は「人が欲しがる車を造らなければ売れないのは当然。デザインや機能が悪いのは工場で働く我々にはどうしようもない」と不満顔だ。この男性は「これでは閉鎖されても仕方ない」と語り、他のGM工場へ移る道を探すより、転職を真剣に考えているという。
現在、同工場で造られるのはシボレー、ポンティアック、サターン、ビュイックのミニバン四車種。GMの中でも特に販売低迷が目立つ車種ばかりで、社員用の駐車場にさえ同工場製のミニバンはほとんど見られない。
GMは医療保険や年金など手厚い福利厚生で知られるが、退職を控えたベテラン社員の表情も暗い。メンテナンス部門で働く男性社員(58)は「閉鎖の噂はずっとあったけど、現実になるとつらい。三十七年間もここで働いてきたんだよ」とつぶやき、自らに言い聞かせるように何度もうなずいた。今後については「退職時期も退職金の額も分からない。医療保険?まだ何も決まっていないよ」と両手を広げ、天を仰いだ。
二年目の若手社員(23)は「工場が本当に閉鎖されるとは思っていなかった」とショックを隠さない。「三十年も勤めたら会社も面倒見てくれるだろうけど、僕はすぐにレイオフされる。学校で勉強し直そうかと思う」と深刻な表情で語る。
同工場近くの幹線道路沿いにはトヨタ、ホンダ、現代、フォルクスワーゲンなど世界のディーラーが軒を連ねる。アトランタ近郊では来春、ホンダの変速機工場も竣工する予定。ワゴナー会長が口にした「グローバル競争」の現実は、工場周辺にもひたひたと押し寄せている。
発表の翌朝、地元紙は工場閉鎖を一面トップで伝えたが、地元経済界の反応は比較的冷静だ。メトロ・アトランタ商工会議所会頭のジェニファー・ゼラーさんは「ドラビル工場は雇用者数ではアトランタ地域で四十番前後。二年かけて徐々に閉鎖するのなら、地域経済への影響は少ないのでは」と語った。
GMの米市場シェアは八五年の四〇%から今年十月には二二%まで低下。雇用もこの十年間で十万人減り、米経済に占めるGMの地位は下がる一方だ。地元にあきらめムードが垣間見えるのも、GMの地盤沈下と無縁ではないようだ。
(ジョージア州ドラビルで、中前博之)
【表】GMが閉鎖する北米完成車工場
工場名 閉鎖時期 生産車種
オクラホマシティー工場(オクラホマ州) 06年初め 大型SUV
ランシング・クラフトセンター工場(ミシガン州) 06年半ば ピックアップトラック
スプリングヒル工場第1ライン(テネシー州) 06年末 小型車
ドラビル工場(ジョージア州) 08年内 ミニバン
オシャワ第2工場(カナダ・オンタリオ州) 08年内 小型車
【図・写真】ドラビル工場の社員用駐車場にも、同工場製のミニバンは見当たらない(ジョージア州ドラビル市)