★阿修羅♪ > 国家破産44 > 194.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
神田明神初参り客が占う景気
東証の大発会は、株価が大幅に値上がりして一年が始まった。主要企業の景気アンケートでは「回復」が9割を超える。一方で、浮かれていられる企業ばかりではない。四日の仕事始め、オフィス街も近く、商売繁盛を祈る人でにぎわう東京都千代田区の神田明神で、景気がどうなるか初参り客らの生の声を聞いた。 (吉原康和、宮崎美紀子)
境内は毎年この日、大手町界隈(かいわい)にオフィスを構える大企業から下町の中小企業まで、会社ぐるみの参拝客が相次ぐ。経営者が、社員を前に「神頼みだ」と笑う光景も見られた。
露店では、商売繁盛の縁起物の熊手(くまで)を持った大手企業のスーツ集団や、若い女性からオヤジさんまでが徒党を組んだ中小企業一行が景気づけの乾杯を繰り返している。日本経済の縮図のようだ。
企業の倒産格付けを仕事にするIT系企業「リスクモンスター」社も神田明神への参拝を続けてきた。
「景気は良くなっていますね。この十年、企業は取引先を絞って、絞ってきたが、さあ、これから拡大に転じようというふうに変わってきた。うちの会社の会員数も増えた」。同社営業企画室の満田篤紀室長(31)の表情は明るい。
「なんとか景気が良くなってほしい」という思いがにじんでいた昨年までに比べると、参拝客の雰囲気も明るくなったと指摘する。
クレジットカードや銀行カードなどカードを製造する「グローバル・カード・テクノロジー」は、副社長以下約十人がそろって参拝。「売り上げは回復しています。今期は前期の倍以上になるのでは」と営業三部の市野一成さん(31)。中国・天津の会社との提携がうまくいったからといい、社員からは口々に「攻撃の年です、攻撃の」「来年は社員数が一けた増えます」と威勢のいい声が飛んだ。
企業の吸収・合併を手がける「みずほコーポレートアドバイザリー」の大畑康寿社長(54)は「企業を買収して、業務を拡大していこうというお客さんが増えているし、買収の金額も大きくなってきた。みんなもう、耐乏生活に飽きてきたんでしょう。不安材料は原油高ですが、株価は上がるでしょう」。
昨年末の忘年会では、会場確保に苦労したという。そんなところにも景気回復の兆しが見えるという。神田明神参拝は毎年恒例。「ここに来て『一年頑張ろう』と仕事始めをするのが習慣になっています」
中国から衣料品を輸入している「ペペイン」の金沢智行会長(68)は、今年の景気を「いいようだけど、悪くもなる複雑な年になる」とやや慎重な見方だ。「円安は輸入業には大変なんだよ。輸出業の車はもうかっているけど。良くなっているのは自動車とか、一部の日本を代表する企業だけ。日本も世界も、今年は相当揺れると思うよ」
■雰囲気明るく参拝客1割増
神田明神の清水祥彦・権禰宜(ごんねぎ)は、例年の正月三が日の参拝客は約三十万人だが、今年は出足がよく一割アップとみる。おみくじやお札を買い求めた参拝客が増えているためだ。十五日までの企業の新春参拝も景気回復への期待と勢いで、例年の約六千社から約一万社に増えると見込む。
最近は時代を反映した外資系やIT企業など「横文字」の最先端企業も参拝に訪れている。大手町や丸の内などオフィス街の大手企業の参拝客も多いが、清水権禰宜は「祈る気持ちに、大企業から中小・零細企業まで変わりはありません」。
■増えた注文は安いのばかり
一方、景気回復を感じられない人もいる。文京区のビルメンテナンス会社の営業部門の部長(58)は「仕事は増えているが、安い仕事ばっかりですよ。高い見積もりを持って行くと、仕事を取れない。以前は百万円だった仕事が、八掛け、半値、『もう一声』で、四割になっちゃう」。
神様には「受注の仕事が一つでもうまくいきますように」「仕事先から切られませんように」と祈った。
本殿から出てきた都内に本社のある大手設備会社役員(62)は「いまの調子で株価も安定したまま一年を終えてくれれば、と祈願してきた」と前置きしたうえで力を込める。
「小泉改革による急激な変化で勝ち組と負け組に分かれ、ゼネコン業界もよくない。特にわれわれのような設備会社はこれからが選別の本番で、今年は数百社から数十社に絞り込まれるだろう」
営業部員七人を伴って「昨年はちょっと業績が悪かったので、気分一新」と訪れたのは、環境衛生販売会社「神栄産業」常務の楠本豊さん(67)。「中小企業の大半は依然として苦しんでいる。ただ、今年は日本経済がデフレから脱却し、わが社も上げ潮ムードに乗りたい。昨年の年間売り上げ(約二十億円)の一割アップが目標」と述べ、“景気好転”にあやかるつもりだ。
都内に本社のあるホテルチェーンの事業部長(52)は「ホテルの供給過多で昨年は苦戦を強いられた。特に婚礼関係は厳しかったが、半年前に比べ、少し光明は差してきた感じ。宿泊関係はいいので、婚礼関係の業績回復がポイント」と先行きには期待をにじませる。
■耐震偽装事件消費者に不安
大手都銀系のビル保有会社「陽栄ハウジング」は、役員以上約四十人で毎年参拝している。景気回復は部門によって違うそうで、「マンション、一戸建ては大変だ。耐震強度偽装の姉歯事件があったから消費者に不安が広がっている。一方、テナントの家賃は上がってきているので、ビル管理部門はいいですね」と取締役の今福勉さん(54)。
神田明神近く出身で、毎月お参りに来るという建築設計事務所の元オーナー(81)は「昨年四月に後継者にバトンタッチし、この年になると祈ることも少ないが」と話したうえで「“姉歯”には驚いた。まじめにやっている建築士まで疑われているようで、迷惑な話だ」と憤慨した。
千葉県内から転勤し、今年初めて同僚四人と参拝に訪れた大手住宅メーカーの幹部(58)は偽装事件の景気への影響をこう述べる。「全体的に一時的に落ち込むことはあっても、大きな影響はない。むしろ、着実にやっている所は評価され、選別が進むだろう」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060105/mng_____tokuho__000.shtml