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航空というものは科学であり、感情をまじえることのできない、冷厳な世界であったはずだ。
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投稿者 hou 日時 2006 年 4 月 25 日 01:09:10: HWYlsG4gs5FRk
 

(回答先: 日清戦争の前、日本海軍には清国の戦艦「定遠」「鎮遠」の装甲を貫徹できるだけの装備をもった軍艦は一隻もなかった。 投稿者 hou 日時 2006 年 4 月 25 日 00:48:42)

http://www.hi-ho.ne.jp/nomura1205/bomber_fugaku.htm

試作超重爆撃機「富嶽」
陸海軍が大型の戦略爆撃機の開発に手をつけたころ、民間会社独自の構想で巨人爆撃機の計画がすすめられていた。

昭和17年末、日本軍が攻勢から防勢にうつろうとしていたころ、アメリカの反攻の矛先をにぶらすには、どうしてもアメリカ本土に直接打撃をあたえるほかにないとして、中島は独自で敵基地撃滅用の六発長距離爆撃機の開発案を軍に示した。

そして昭和18年春には陸海軍合同の計画委員会をつくり、さらに軍需省まで参加して本格的な開発に乗りだした。中島はこの計画に「Z計画」というコードネームをつけ、計画の発案者である中島知久平(社主)みずから陣頭指揮に立ち、急速に開発がすすめられた。

巨人機の作戦コースについては、太平洋往復よりも、日本本土の基地から太平洋を横断してアメリ力本土上空で作戦し、さらに大西洋を横断、ドイツの基地に着陸する方法が実用的だと判断された。

そこで航続距離16000キロ、爆弾20トン、最大速度680キロ/時、常用高度10000メートル以上という性能をもち、全幅65メートル、主翼面積350平方メートル、総重量160トンの6発巨人機の案がまとめられた。

この性能諸元をB29と比較してみるとおもしろい。B29は航続距離10000キロ、爆弾9トン(最大)、最大速度580キロ/時だから、「Z計画」がいかに雄大なものだったかがわかる。また中島案では雷撃用としては魚雷20本搭載、対地攻撃用としては7.7ミリ機銃を40挺装備するという転用を計画していたという。

中島はすでに「深山」「連山」で四発機を手がけており、これに航研、技研などの最新技術をくわえ本格的な陸海軍の共同計画として推進すれぱ”夢の巨人爆撃機”実現は可能と思われた。しかし、ここでもエンジンの問題が大きな難関として立ちはだかっていた。

当時開発中の最強カエンジンとして、中島のハ54-4重星型36気筒(ハ44-18気筒2500馬力を2基串型に結合した型式)5000馬力と、四枚羽根の二重反転プロペラ採用の問題だった。

さしあたって、空冷星型エンジンをニつかさね合わせた場合の冷却法をどうするかを解決しなければ、計画全体がすすまないし、第二
の難問として、例によって陸海軍の対立があり、これに軍需省までくわわったので収拾のつかない混乱がおこったらしい。

主として常用高度と武装の点で対立があったようだが、ついには軍需省がZ計画とは別に川西に六発爆撃機の研究を指示するというさわぎになった。


こうして、最後には妥協案として基本的には中島案を生かし、常用高度15000メートル、航続距離18000キロ(爆弾5トン)、軽武装などの線に決定した。

この案にそって機体の設計は順調にすすんだのだが、なにしろ日本航空界はじまって以来の巨人機のこととて、解決しなければならない、こまかい問題が山のようにあったうえに、何といってもかんじんなエンジン「ハ54」の冷却法が解決しないのでZ計画は難航した。

ここで、やむをえず「ハ44」2500馬力6基の装備(総出力は予定の1/2になった)で設計だけはすすめることになったが、最終的には「ハ54」をあきらめて三菱の「ハ50」22気筒3000馬力を装備することになった。

そして総出力低下を承知のうえで試作が強行されたが、気密室、軽量構造の研究、排気夕ービン過給器、特殊な降着装置(主脚は大直径の二重車輸で、飛行中の機体重量をへらすために離陸後、外側の車輪を放棄する)など、当時の技術ではなお解決に時間を必要とする問題が多かった。

そうこうするうちに戦局は急迫し、巨人機を量産してアメリカ本土を直撃するといった大きなプランは、資材、技術、人員などの面で実行できなくなり、ついにZ計画「富嶽」の壮大な構想は全面的に中止する以外に道はなくなった。

アメリカが巨大な生産力にモノを言わせてB29を量産し日本本土を完膚なきまでにタタキのめしたのにくらぺ、Z計画はB29にたいして翼面積2倍以上、重量約3倍、爆弾搭載量3倍以上、航続距離も約2倍という壮大さはみとめるとしても、なにか国力にくらべむなしいものが感じられる。

Z計画においても陸海軍が要求性能をめぐってはげしく対立したといわれるが、一国の存亡をかけた戦争の間にこうしたことがしばしばおこり、結局敗戦につながったことは、今にして思えば不可解であり、残念でもある。航空というものは科学であり、感情をまじえることのできない、冷厳な世界であったはずだ。

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