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(回答先: 「電柱写真」見ました。 投稿者 けいこ 日時 2005 年 1 月 26 日 15:39:21)
私にとって電柱(電信柱)といえば、宮沢賢治。
「月夜の電信柱」とかが有名だよね。
あと、電柱というんではなく、踏み切り信号の腕木だけど、「シグナルとシグナレス」。
後にも先にも、これを超えるロマンス小説に出会ったことはないと思う。
「銀河鉄道の夜」にも電信柱というモチーフは、結構登場していたように思う。
彼が、自然にある風景や動植物とともに、最も愛したキャラクターのひとつだろう。
その昔の風情溢れる(今だからそう思う)木製「電信柱」なんて、余程の田舎に行か
ないとお目にかかれないかも知れないが。
宮沢賢治のように、感性の縁で生き物として捉え、記録しておきさえすれば、現物が
消えてもそのものの魂は浮かばれるのであろう。
電柱以外にも「滅びた」文明の利器は沢山ある。SLなんかもそうだろうし。
(木製電信柱とSLのある風景に比べたら、今の電柱や電車のある日常風景は、
いかにも無機的で素っ気無く、その割にごてごてした無駄の多い景観に思われる)。
電柱は、ベルエポックの墓標。なのかも知れない。
その意味で、私は地下に電線を埋めることには反対しない。墓石にいつまでも拘る
必要はないと思うから(というか、日本の狭い道路の電柱は本当に邪魔である。死角
にもなるし、うっかりするとすぐミラーなどをぶつける。さっさと埋めてくれ!・笑)。
地下空間に、「メトロポリス」のような別世界が存在することを想像することさえ出来
れば、普段は気にもとめない「視覚」に頼る必要はないのではないか(それより、電柱
を見ていると私は「山谷ブルース」のような無視された「労働力」の方に目が行ってしまう)。
今の主にコンクリート製のグレーの電柱を擬人化したら、なんだかごてごてした、悲し
い心を持った試作品ロボット位しか思いつかない。尤も、私はアニメでも小説でも、心
をもったロボットという設定が大好きなのであるが。
昔の電柱には、擬人化してもまるで不自然でないような、有機的な面持ちがあったと
思う(主に木製なので当然ではあるが)。瓦斯灯なんかも似合っていていて。
ダジャレみたいな、右書きの広告や看板がこれでもかと並べられていても、豊かで、
暖かい。家族の団欒風景のようなものである。
今の、コンクリート製電柱と、青白い蛍光灯の街灯は、冷たくのっぺりとした、氷つい
た心を表象するようで、想いを託すには、あまりにも寂しく貧しい。
けれど、それは人知れず恋する「心」のようなものなのかも知れない(ストーカーの
隠れ場所という意味ではありませんが・笑)。