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(回答先: 反戦ビラ、9日控訴審判決 「違法性なし」で一審無罪(共同通信) 投稿者 片瀬テルミドール夏希 日時 2005 年 12 月 07 日 18:07:18)
http://list.jca.apc.org/public/aml/2005-December/004577.html から引用。
高田健@許すな!憲法改悪・市民連絡会です。
憲法学の石崎学さんからの発信です。重複送信おゆるしください。転送、歓迎です。
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各位
来る12月9日に、東京高裁で「立川反戦ビラ事件」控訴審の判決言い渡しがありま
す。ご存知のとおり、二つの国家公務員法事件、葛飾マンションビラ弾圧事件、板橋
高校事件など、表現の自由とりわけビラ配布に関する弾圧事件が相次いでいます。公
判がもっとも進んでいる「立川反戦ビラ事件」の判決が、他の事件にも大きな影響を
及ぼすと考えられます。またこの事件の場合、「戦時下の言論弾圧」という側面もあ
り、みなさま、注目されてきたことと思います。
このたび、「立川反戦ビラ事件」の判決を前に、この事件に、証人として出廷した
り、意見書を書いたり、集会で発言するといった形で、直接に関わった法学者9名で
以下のような声明を発表させていただきます。
この声明は、裁判所に郵送するほか、報道機関へ送付し、あるいはメールで広める
等の手段により発表します。
みなさまにおかれましては、知人に広める等のご協力をいただければ幸いです。
またジャーナリスのお知り合いがいる方は、ぜひ連絡をとっていただきたいと思いま
す。よろしくお願いします。
石埼学(亜細亜大学)
以下、「声明文」です。転送大歓迎です。
***
立川反戦ビラ入れ事件控訴審判決に関する法学者声明
2004年2月27日、市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー三人が、東京都
立川市内の防衛庁官舎の郵便受けに「イラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声を
あげよう」という内容のビラを投函したことを理由に、「住居侵入罪」の容疑で逮捕
・勾留され、同年3月19日に起訴されたことは、全国に衝撃を与えました。なぜ、ビ
ラを配っただけで逮捕され、75日間も自由を奪われなければならないのか、日本は本
当に民主主義国家なのか、という深刻な疑問の声が多く発せられました。また国際的
人権擁護活動で名高いアムネスティ・インターナショナルは、被疑者三名を、日本で
初めての「良心の囚人」と認定しました。
2004年12月16日、東京地方裁判所は、三名の被告人に無罪を言渡しました。この判決
は、三人の行為が住居侵入罪の構成要件に当たると認定したところに問題を残してい
ますが、本件のビラの投函を「憲法21条1項の保障する政治的表現活動の一様態」と
認め、「民主主義の根幹を成す」のであり、商業的宣伝ビラと比して「優越的地位」
があると明言し、無罪を結論した点において、人権感覚にあふれた判決と高く評
価できます。
東京地方裁判所の判決を受けて、全国の124名の法学者も連名で、この判決を支持し
検察に控訴を行わないことを求める声明を発表しました。しかし、東京地方検察庁は
控訴を断行したため、今日に至ってもなお三人は被告人の立場に置かれています。
本日、再び、本件被告人を支援してきた法学者で声明を発表するのは、本年12月9日
に下される本件の高裁判決が、今後の日本社会における政治的表現の自由の保障の行
方を左右する大きな意味を持つことに鑑みると、判決を目前に控え、表現の自由の重
みと、それに対する国家刑罰権の恣意的な発動が許されないことを、社会に対してア
ピールをすることは、わたしたちに課せられた社会的責務だと考えるからです。
民主主義社会には、自由な言論が不可欠です。言論の自由は単に言論を発する自由を
意味するのではなく、言論を受け取る自由を論理必然的に含んでいます。というの
は、民主主義社会は、市民が相互に信頼しあい、意見を交換しあう中で世論を形成し
ていくというプロセスを不可欠な要素としているからです。このような民主主義社会
のあり方からすれば、自衛隊員とその家族に対して、ビラ配布という社会的に見て穏
当な手段で自己の政治的見解を伝えるという行為に憲法21条1項の保障が及ぶのは当
然であり、表現内容が、回復しがたい深刻な人権侵害をなすものでないかぎり、政府
は、両者のコミュニケーションを妨げてはなりません。
一審判決が認めるように、宿舎の居住者はそれぞれ多様な意見を持つことに鑑みて
も、このようなビラ配布目的での共用部分への立ち入りが、居住者の住居権を侵害す
ることにならないのは明らかです。
住民の住居権は、法によって守られるべき大切な権利ですが、本件で被告人が立ち
入った集合住宅の共用部分は、さまざまな人がさまざまな用事で立ち入る公共的な要
素も持つスペースです。したがって、共用部分のこのような性格を無視して、一律に
共用部分への立ち入りが住居権を侵害するということはできません。
ましてや、本件のように、穏当な方法で、政治的意見を伝えるという目的での立ち入
りまでもが住居侵入罪に該当するとすることには、疑問を持たざるを得ません。
さらに、この逮捕・起訴は、「住居侵入罪」を適用し、本件ビラの内容は関係ない
かのように見えますが、その本質は、自衛隊のイラクへの派遣に反対するという特定
の内容を抑圧するものであるという疑念をどうしても払拭できません。一審判決でも
指摘されているように、もしビラをどうしても入れて欲しくないのであれば、直接当
該団体にビラを投函しないように要求するという手段がまず取られるべきでしょう。
そのような対応が十分にとられていないところで、しかも、全国で同種の行為が頻繁
に行われている状況で、いきなり国家刑罰権が発動されたのは、この逮捕・起訴が、
特定の意見を抑圧することにその目的があることを疑わざるをえないのです。
権力が、自己にとって都合が悪い表現活動を抑圧することは、残念ながら、世界各国
でしばしば起こることです。しかしそのような反対意見の封殺は、自由な市民の言論
で運営されている民主主義社会を崩壊させるのであり、そのような危険を防止するた
めに憲法をはじめとする法が存在するのです。本件は、特定内容の表現を特に狙い撃
ちにしたとしか考えられない逮捕・起訴の事案です。検察はそもそもこの事件を起訴
するべきではなかったとわたしたちは考えます。
以上のような本件の特徴を考えるならば、東京高等裁判所の12月9日の判決は、今後
の日本社会の方向性を左右するほどの重要性をもっています。わたしたちは、日本国
憲法で保障された自由なコミュニケーションに基づく民主主義社会が今後も確保され
なければならないと考えています。わたしたちは、東京高等裁判所に対し、本件の重
要性を踏まえたうえで、自由と法の擁護者として責任のある判断を示すことを要望
いたします。
また政治的表現の大切さを理解している多くの市民が、12月9日の判決に大いに注目
し、警察と検察の横暴を許さず、政治的表現の自由を守り、実践する行動をすること
を切に期待します。
安達光治(立命館大学法学部助教授・刑法)、石埼学(亜細亜大学法学部助教授・憲
法)、浦部法穂(名古屋大学法科大学院教授・憲法)、奥平康弘(東京大学名誉教授
・憲法)、小田中聰樹(専修大学法学部教授・刑事訴訟法)、笹沼弘志(静岡大学教
育学部助教授・憲法)、成澤孝人(三重短期大学助教授・憲法)、松宮孝明(立命館
大学大学院法務研究科教授・刑法)、山内敏弘(龍谷大学法科大学院教授・憲法)
2005年12月6日
連絡先 石埼学
E-mail ma1968 at msj.biglobe.ne.jp
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