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(回答先: 民営化、自己責任の社会 (ビル・トッテン)─日本海新聞 投稿者 外野 日時 2005 年 10 月 16 日 07:00:57)
日本海新聞
http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/051006.html
温故知新 −ビル・トッテン−
仲間に銃向ける階級戦争
2005/10/06の紙面より
九月初め、米国南部、ニューオリンズ、ミシシッピをハリケーン、カトリーナが襲った。日本でも台風の時期には、台風の進路にある各地の営業所の社員に早く帰宅するよう警告を出すのだが、その回数が毎年増えているように思う。
ハリケーンは人災
台風の被害といえば日本でも今から四十六年前に愛知県や三重県を襲った伊勢湾台風では死者、行方不明者は五千人以上に上る大災害となった。また今年九月にはカトリーナ並みの強い台風が九州を直撃し、三十人近い死者が出た。日本は台風の国である。しかし、その強い風や雨によって災害をもたらす台風は、降水量の少ない地方にとってはまとまった雨を降らせる自然の恵みでもある。人間にとって水ほど大切なものはなく、そのため昔から日本では移り変わる季節のなかで太陽に感謝し、そして雨にも感謝して自然と調和して暮らしてきた。
米国を襲ったハリケーン、カトリーナがもたらした被害は天災ではなく、さまざまな意味で人災であった。まず、世界的に台風の規模や回数が増えたのは地球温暖化による気候変動の影響である。米国の科学者たちはここ何年も地球温暖化はハリケーンをより大型にすることを警告してきたが、ブッシュ政権はこれを無視し、温暖化についての警告をすべて拒否してきた。「地球温暖化の原因が二酸化炭素の増加だと言い切るには科学的根拠が薄い」として京都議定書を離脱したのは、大統領、副大統領の両方が石油会社を経営した経験を持つためだと言われても仕方がない。
堤防より石油産業
それだけではない。もともとニューオリンズは海面より低い広大な湿地帯であった。沿岸湿地はハリケーンなどの自然の防波堤として作用するが、米国政府はこれを次々と破壊してきた。これに対して何年も前から米連邦緊急事態管理庁(FEMA)はニューオリンズのハリケーンに対して警告をしている。自然災害から人々を守るはずの湿地帯にはコンクリートの堤防が作られ、石油発掘と船舶の運航のための運河が作られている。ここでも優先されたのは国民の安全や自然環境の保全ではなく石油産業なのであった。政府は企業が湿地帯の大部分を破壊し、貪欲な利益追及をすることを許し、さらにはテロ対策、イラク戦争の資金は増やしてもハリケーン対策である堤防建築の予算を44%も削減したのである。
日本のメディアがどの程度報道をしたか分からないが、このハリケーンで亡くなった人、ホームレスになった人の多くは貧しい有色人層である。政府はカトリーナが直撃するとされる地区に避難勧告を出した。しかしそれは自力で避難しなければならないということであり、自由経済主義が貧しい第三世界の国々を直撃したのに等しい。広大な土地に公共交通機関のない米国では自動車がなければどこに行くこともできない。政府の避難勧告でニューオリンズはひどい交通渋滞となったが、貧しい人々の多くは、交通手段も避難するホテル代もなかったのである。そして貧困層は祈りながらその場にとどまるしかなかった。
貧困層ほど犠牲大
二〇〇二年、ニューオリンズの新聞はもし大きなハリケーンがきたら同市の約十万人の車を持たない貧困層の住民が特に危険にさらされると警告した。二〇〇〇年の米国の国勢調査によると同市の海面より低い地区に住む住民の36・4%は貧困層であった。米国の貧困層の定義は、四人家族で年収が一万九千三百七ドル(約二百十万円)、二人家族で一万二千三百三十四ドル(百三十五万円)以下である。もし日本で公共の交通機関や国民健康保険がなければ、四人家族で二百十万円の年収で暮らすことができるだろうか。または日本にはそれに相当する人々はどれくらいいるのだろうか。米国には三千七百万人、人口の12・7%が貧困層以下で暮らしており、カトリーナの犠牲者もほとんどがそうであった。
ハリケーン直撃の翌日ブッシュはゴルフをしていた。テレビに出たのは三日後、被災地訪問は五日後だった。米国の各州に自衛隊のようなナショナルガードと呼ばれる州兵がいて国内の緊急時に人々を保護し、支援することを使命としている。しかしルイジアナとミシシッピの兵士の三分の一はイラクへ派兵されていた。少ない兵士による援助の中心も、貧困層の命を救うことではなく富裕層の家屋を守ることだった。そして治安が悪化すると、知事は略奪や暴力に加わった人を射殺するよう州兵に命じたという。イラクという戦場から戻った州兵は、ルイジアナ州で階級戦争という新たな戦闘に参加したのである。州兵のほとんどは貧しい階層の出身者である。つまり州兵は自分の国で、自分たちの仲間に対して銃を向けることになったのである。(アシスト代表取締役)
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