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(回答先: 無念…唇かむ遺族ら / 横浜事件『免訴』判決( 中日新聞 ) 投稿者 gataro 日時 2006 年 2 月 10 日 09:20:45)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060210/mng_____sya_____001.shtml
戦時中最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の再審判決公判が九日、横浜地裁であり、松尾昭一裁判長は、いずれも既に故人となっている元中央公論社社員の木村亨さんら元被告五人全員に、有罪か無罪かを判断しない「免訴」の判決を言い渡した。検察側主張を全面的に認めた。神奈川県警察部特別高等課(特高)に治安維持法違反容疑で逮捕され、終戦直後の混乱期に有罪判決を受けた雑誌編集者らは、約六十年ぶりのやり直し裁判によっても無罪判決での名誉回復はならなかった。弁護団は「法解釈のみの不当な門前払い」として控訴する方針。
松尾裁判長は「治安維持法は一九四五年に廃止され、被告らは大赦を受けた。免訴事由の存在により公訴権が消滅した場合は審理を進めることも有罪無罪の裁判をすることも許されない。免訴の判決が相当」と述べた。
旧刑事訴訟法は、「刑の廃止」や「大赦」があったとき、訴訟を打ち切る免訴判決を出すよう定めている。判例上も四八年の最高裁大法廷判決が「大赦で公訴権が消滅した場合は、裁判所は実体審理をできず、有罪無罪の裁判をすることも許されない」としている。
横浜地裁の再審公判では、この免訴規定が特別な救済手続きである再審の裁判に適用されるかどうかが焦点だったが、松尾裁判長は「再審の審判でも通常の公判審理の手続きに従うことから、免訴規定は再審の審判にも適用される」と判断。最高裁判例を引用し、検察側の免訴主張を認めた。
弁護側は再審裁判で「有罪とした原判決を完全に無効にするには、無罪判決が必要。免訴判決では原判決の欠陥を不問に付すことになり、名誉回復は望めない」など無罪判決を求めていた。
これに対して松尾裁判長は「免訴判決を受けた者でも、免訴事由がなければ無罪になったと認められる場合は、国に補償請求できる。刑事補償が決定されると、官報などに公示されるなど、法は補償や名誉回復の手だてを講じている」とした。
弁護側は再審裁判で、生前の元被告らの証言ビデオを提出し、拷問で虚偽の自白に追い込まれた経緯や、当時の横浜地裁のずさんな裁判手続きと訴訟記録の不当な焼却処分に触れ、「司法の責任」を認めるよう訴えた。判決はこれについて「終戦の特殊な状況下で訴訟記録が廃棄され、再審開始までにかなりの時間を要して被告らが死亡し、再審裁判を受けることができなかったのは残念」と述べるにとどまった。
旧刑訴法下で有罪が確定し、死亡した元被告の再審判決は初めて。
<メモ>横浜事件
神奈川県警察部特高課による戦時中の大規模な言論弾圧事件の総称。雑誌編集者ら60人以上が治安維持法違反容疑で逮捕され、過酷な取り調べで4人が獄死、1人が保釈直後に死亡。雑誌「改造」「中央公論」は廃刊になった。30人余りが起訴され、多くは終戦直後に執行猶予付き有罪判決を受けた。戦後、拷問を加えた元特高警察官3人が特別公務員暴行傷害罪で有罪に。再審請求は4次にわたり、横浜地裁は2003年4月、第3次請求で再審開始を決定。東京高裁も05年3月にこれを支持し、再審開始が確定していた。
<メモ>免訴
検察官の公訴権がないことを理由に、犯罪事実の有無を判断せず裁判手続きを打ち切る制度。刑事訴訟法は(1)同じ犯罪について確定判決がある(2)犯罪後に刑が廃止(3)大赦(4)時効成立−の場合は、免訴の判決を言い渡さなければならないとしている。旧刑訴法にも同様の規定があった。