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□禁煙治療に保険適用導入したが…|東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060416/mng_____kakushin000.shtml
禁煙治療に保険適用導入したが…
“断煙”できぬ政府
健康保険を使って禁煙治療が受けられる新制度が4月から始まった。国民の保険料を治療費に充ててでも喫煙者を減らし、医療費削減を目指す。ただ、政府がたばこの消費量減らしに本腰を入れ始めたとは言い難く、新制度の効果に疑問を投げかける声もある。 (経済部・吉田通夫、池井戸聡)
■宣告
「今度こそ禁煙する」
一日二十本以上、九年の喫煙歴がある三十歳の記者は東京都内の診療所に向かった。過去に二度、禁煙に挑んだが、いずれも挫折。保険適用を機に「三度目の正直」だ。
医師から「たばこをやめられないのはニコチン依存症だからだ」との説明を受け、口から管を通して機械へ息を吹き込む検査が始まった。
たばこが生む有害物質の一酸化炭素(CO)が、どの程度、呼気に含まれるかを測り、COが多ければニコチンへの依存度が高いと判断する。「三ppm未満」は正常。「三−一一ppm」なら軽度の依存症で「一一ppm超」だと重度の依存症という。
結果は一九ppm。「重症」の宣告にショックを受けた。「いつからたばこをやめますか」と問われ、「きょうから」と即答。「禁煙宣言書」に自ら日付を書き込んだ。
治療は直径約七センチの円形の張り薬を腕などに張る。肌からニコチンを取り込み、喫煙欲を減退させる方法だ。
保険の適用により医療費は三割負担となり、支払いは千五百十円で済んだ。ただ、薬代は保険対象外で、二週間分が五千五百七十五円。治療期間の十二週間にかかる薬代は二−三万円の計算だ。
■試算
禁煙治療の保険適用実現を後押ししたのは「制度開始から十年目に、累計の医療費削減額が禁煙治療費を四十九億円上回る」との試算だ。年一兆円規模で増え続ける医療費の削減は国の最大の課題。「たばこの価格を上げれば消費が一段と抑制され、肺がんなどへの医療費が削減できる」との指摘も多い。
昨年末、禁煙治療の保険適用に動いた自民党厚生労働部会の大村秀章部会長は「英国はたばこ一箱が約千円。たばこがこれほど安い先進国は日本だけ。一箱五百円程度が適当」との考えを示す。
確かに英国では、たばこの価格が二・三倍に上がった一九九〇年からの九年間で、年間のたばこ販売本数が三割以上減った。日本のたばこ税収は年間二兆円強。一箱五百円なら増税で需要が減少しても一千億円規模の税収増が見込める計算だ。
■痛手
ただ、今のところ、たばこ増税に向けた財務省の「動き」は鈍い。日本たばこ産業(JT)株売却、たばこ増税、たばこ事業法−という「三点セット」の政策決定権を握る財務省が自らの手足を逆に縛っているためだ。
値上げでたばこが極端な販売不振になれば税収が減る。そうなれば業績悪化でJT株が下落、大株主である政府は痛手を受ける。たばこ事業法は、国内の農家が生産した葉タバコの買い取りをJTに義務づけており、財務省はある程度、たばこの販売量を維持しなければならない。
だが、市民団体「たばこ問題情報センター」の渡辺文学代表は「財務省が、たばこと縁を切ればいいだけのこと」と指摘。経済同友会は先月、財政再建に向け、国がJT株の50%保有を義務づけている法律を改正、全株の売却を提言した。JT株の時価総額は四兆円超。放出すれば二兆円が国の懐に入る計算だ。
ただ、JTの佐藤誠記執行役員は「米国では治療から二百五十日後に禁煙が続いている人の比率が、治療を受けずに自力で禁煙した割合とほほ同じとの調査結果もある」とし「禁煙治療への保険適用は疑問だ」と主張する。
医療費の増加など、たばこによる経済損失は年間七兆円に上るとの試算もある。たばこを吸わない人からは、自らの保険料が禁煙治療費に充てられることに不満の声も上がる。治療効果を最大限に引き出す政策が求められそうだ。
◆メモ <医療保険が適用される禁煙治療>
(1)1日の喫煙本数と喫煙年数をかけた数値が200以上(2)医師がニコチン依存症と診断−などの条件を満たす人が受けられる。12週間で5回の診察が行われ、治療費は計9620円(初診料などを除く)。3割負担の場合に患者が支払う医療費は2886円となる。ただ、張り薬などの薬代は自己負担のため、一般的には総額2−3万円程度が必要になる。
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