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(回答先: Re: 考え方があって、制度は保たれると思います 投稿者 健奘 日時 2006 年 3 月 01 日 16:41:33)
健奘さん、どうもです。
>たとえば、王制を支える考え方(なぜ、王は、ここを統治するのか、その根拠は)、あるいは、大土地所有制を支える考え方、です。
「王制を支える考え方」や「大土地所有制を支える考え方」は、小生の理解では、「王制」や「大土地所有制」が崩壊してから後に(反省的に)登場した概念です。
ところで、こうした王制や土地制度が人類史、世界史(の転換期)に非常に重要な意味を持つと最初に提唱したのはマルクス/エンゲルスです。
実のところ、健奘さんの上記の考え方には、マルクス/エンゲルスが提唱した考え方が入り込んでいます。
その辺の消息をうまく紹介している本があるので紹介します。
それは『ぼくたちのマルクス』(木原武一、ちくまプリマーブックス88、入門書としてはなかなかよくできているのでおすすめします)で、p.24に次のような一節があります。
少し長くなりますが、紹介します。
「経済学の話は一般の人びとにはわかりにくいところがあるが、歴史の見方(引用者注:唯物史観のことですね)となると、マルクスの理論は簡明である。歴史の発展を支配するのは、それぞれの時代に特有な経済システムであって、そのシステムが破綻をきたしたとき、一つの社会体制は滅び、新しい体制の社会が出現する――簡単にいえば、これがマルクスの考えた歴史の発展であるが、振り返ってみると、日本の学校では、歴史の流れをこのような形で教えられていたことに気づくのである。イギリスやフランスでは、たとえば、「18世紀のイギリス」とか「ルイ14世の時代」といったように区切られて歴史は教えられるというが、日本では、古代、中世、封建時代、近代日本というように分けられる。そして、江戸の封建時代がほろんだ大きな原因は、商人の隆盛によって幕府や藩の経済が破綻したためであって、そこで下級武士を中心とした市民革命が起こったのだと説明される。私はそんな風に学校で日本史を習ったのを覚えているが、よく考えてみると、これはマルクスの歴史観とそっくりなのである。」
健奘さんの「大土地所有制より、家族所有の農園の方が、生産性があがる、より多数の者が潤う、というのは〜」というくだりは、まさに上記本のいう「マルクスの歴史観とそっくり」なわけです。
マルクスの言葉を引用すると、次のようになります。
「物質的生活の生産様式が社会的、政治的および精神的な生活のプロセス一般を制約しているわけである。人間の意識が人間の存在を規定するのではない。逆に人間の社会的存在が人間の意識を規定する。」(『マルクス・コレクションIII』「経済学批判序言」木前利明訳、p.258)
このようにマルクス/エンゲルスの歴史観では、歴史の中の大きな変革は、人びとの考え方が変わったから変わるんだと(楽観的に)考えるのではなく、その時代の人びとの生産様式(社会的な生産力とそれにともなう物質的生活)の発展とともに生じた矛盾が決定的な役割を果たすと決めつけています。
この決めつけがどこまで妥当性があるのか、また、そう決めつけたときにいったいどんな展望が開けるのか、がマルクス/エンゲルスの思想を、今考えるときの一つの大きなポイントと言えると思います。