★阿修羅♪ > 議論22 > 766.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
(回答先: 張良さん遅くなりまして申し訳ありません。新しく立てさせていただきます。 投稿者 縄文ビト 日時 2006 年 2 月 18 日 06:15:56)
縄文ビトさん、こんにちわ。レスを有難うございます。
銀行の信用創造機能に関する議論ですが、ちょうど今読んでいる本に説明がありますので要約して書いてみます。
本というのは、この阿修羅でも紹介されている「マネーを生みだす怪物:連邦準備制度という壮大な詐欺システム」(G・エドワード・グリフィン著、吉田利子訳、2005年10月発行:草思社)です。第7章(金に謎はない)と第8章(金のように見えるもの)に分かりやすい説明があります。
さて、信用創造の説明の前に、銀行業の前身となる貸し金庫業のことから始めます。
(第7章/預り証貨幣)
ヨーロッパでの話です。商売上貴金属を大量に扱う金細工師は自分の在庫を保管する頑丈な金庫を持っていたので、自ずと料金を取って貸し金庫業をすることになった。預かった硬貨と引き換えに預り証を渡すという遣り方で、この預り証を提示すれば、何時でも預かった硬貨を引き渡すという約束です。
最初は、持ち主が預り証を提示した時だけ硬貨を引き渡していたのが、そのうち、持ち主が裏書した預り証を提示した第三者にも引き渡すという慣行が始まった。この裏書された預り証が、今日の小切手の前身となる。
この展開の最終段階では、預かった硬貨に対して一枚の預り証を渡すのではなく、一定額に小分けして何枚もの預り証とし、「持参人に支払いを行なう」と記すようになった。そして、この預り証を提示すれば必ず金属貨幣が引き渡されるという信頼が確立すると、預り証が硬貨の代わりに流通するようになる。
預り証そのものはただの紙切れだが、金細工師の許に硬貨が安全に保管されている限り、預り証とそれが代表する硬貨は等価である。こうして預り証貨幣が生まれた。
次に、貸し金庫業が銀行業へと発展します。
(第8章/部分準備貨幣)
金属貨幣を預かっていた金細工師は、硬貨を貸し出す金貸しという商売を真似すれば、金庫に眠っている硬貨で利益を得られると考えるようになった。経験上、預けた客が一度に全部の硬貨を返せと言って来る事はほとんど無いと分かっていた。預かっている硬貨の85%くらいまでなら貸し出しても危険は無いと考え、銀行業が生まれた。
しかし、此処にはいくつかの問題がある。先ず、料金を取って預かっている硬貨を勝手に貸し出しても良いのか。また、金庫にある硬貨の替わりに預かり証が世間に流通しているはずなのに、其の硬貨までが流通してしまうと、同じ硬貨が二重に流通することになる。さらに、預り証は何時でも硬貨と引き換える約束になっているが、金庫の硬貨の一部が貸し出されているとすれば、ある場合には、其の約束は履行出来なくなるはずだ。それを承知で、金細工師は預り証を発行したことになる。
最初の点についてだけは、打開策がある。今日の銀行が行なっているように、預かり料を取る代わりに、逆に、利息を支払うという遣り方だ。だが、他の点はどうしようもない。銀行業が背負っている宿業のようなものだ。
さて、いよいよ信用創造です。
(第8章/部分準備制度銀行)
元の預金者は、銀行に預けた硬貨全部の預り証を手にしている。銀行が、其の預り金の85%に当たる額の預り証を発行し、ある借り手に与えたとする。預り証はいずれも区別無く流通する。しかし、銀行の金庫にある硬貨と較べると、預り証の金額は85%大きくなっている。是が、最も原始的な信用創造という事になります。
銀行は、余分な85%の貨幣を創造したことになる。最初の預り証は100%間違いなく硬貨の裏付けが有ったが、後の85%はインチキな預り証だ。しかし、どちらも同じように流通する。ということは、100の硬貨に対して185の預り証が流通しているのだから、預り証は硬貨の裏付けを54%しか持っていないことになる。
確かに、預り証には硬貨の裏付けがあるが、それは額面の一部だけである。是が「部分準備貨幣」であり、是が生み出される仕組みを「部分準備制度銀行」と呼ぶ。そして、何も知らない一般市民は、追加の預り証にも古い預り証と同じ100%の裏付けがあると思って受け取る。もちろん銀行は、借り手から利息を受け取る。信用創造の対価として。
以下は、縄文ビトさんの文章から引用です。お説は、現代の銀行に於けるものですから、先ほどの説明と直接にはつながりません。
“………銀行が一千万円を事業者に貸し出すとき、事業者は銀行に金利を払うわけです、そして高い金利を払いながら其の全額を安い利息で銀行に預金するかということです。………”
安いとは言え受け取る利息の分だけ、銀行に払う金利が低くなっていると考えられます。つまり、銀行から借りた資金の実質金利は、借りた時の金利から預けた場合の利息を引いたものとなります。
但し、実際の銀行業務では、利息の付かない当座預金口座が通常使われますので、実質金利が下がることはありません。
“………事業者が一千万円を必要とした時、其の事業者は多分設備資金等で機械なり何なりを購入する資金として使い、銀行には1円たりとも預金はしないでしょう。預金をする位であれば最初から預金に回すつもりで高い利息をつけてまで余分な借り入れを行わないと考えますが。………”
其の通りです。しかし購入代金は、当の機械設備等を販売した業者の手に渡り、其の業者の取引銀行に入金されることでしょう。つまり、特定の銀行だけで考えるのではなく銀行業界全体で考えれば、事態は変わらないという訳です。
“………ここから私なりですが信用創造なるものが崩れてくるのではないかと考えています。………”
信用創造が崩れるのは、信用が失われる時です。預金者の預けた金が銀行の金庫には無く、銀行から預金を引き出せなくなると人々が考えた時です。実際にそうした事態は、歴史上何度となく起こってきました。いわゆる取り付け騒ぎです。そこで、そうした事態を回避する為に中央銀行制度が作られました。決して信用が失われないように、言い換えれば、預金者を騙し続けられるように。
追伸、「マネーを生みだす怪物」は面白いですよ。オススメです。貨幣の視点からするアメリカ合衆国の政治・経済の歴史です。もちろん米国の歴史に止まらず、今現在の世界を理解する鍵を与えてくれます。