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【転載】労働者は「弱肉」か、EUの取り組みと「企業の社会的責任」を考える
http://www.asyura2.com/0510/dispute22/msg/707.html
投稿者 heart 日時 2006 年 1 月 31 日 21:34:31: QS3iy8SiOaheU
 

(回答先: 【転載】「同じ資本主義でもEU、ヨーロッパ諸国は、アメリカや日本とは違う道を模索している」 投稿者 heart 日時 2006 年 1 月 31 日 21:33:38)

「日本の資本主義はこれでいいのか―數土社長の講演に思う―」
2002年8月31日  日本共産党川鉄委員会委員長  野村 裕
より

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労働者は「弱肉」か、EUの取り組みと「企業の社会的責任」を考える

世界的な視野から「グローバル化」を見てきましたが、いま一つ歴史的な視野から、労働条件の向上、人権、要求とたたかいなどについて考えてみたいと思います。

同じ資本主義でも、欧州ではアメリカや日本とは違う道を模索していると申し上げましたが、昨年の7月、EUの政府にあたる欧州委員会が、企業は株主のためだけにあるのではない、社会的責任を果たしてこそ経済も企業もまともな発展が可能になるという考えに基づいた「企業の社会的責任」についての提言を発表しました。これは「暮らしを守るルールある経済社会を」という日本共産党の提案と共通する方向ですが、提言は、企業が人権を尊重することの重要性を強調し、人材管理、職場の健康と安全、地域社会との関係、供給業者との関係、消費者との関係、そして地球環境や労働の質など多彩な内容です。

數土社長は、「資本主義の原則とは『弱肉強食以外の何ものでもない』」「仲良く、平和にやっていくものでもない」(入社式での講話)と述べていますが、資本主義の歴史はそれほど単純ではなく、もっと豊かな教訓に満ちていると思います。EUには、ドイツ・フランス・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・イギリス・アイルランド・デンマーク・ギリシャ・スペイン・ポルトガル・オーストリア・スウェーデン・フィンランドの15カ国が加盟し、人口は3億7530万人。現在、スイス・ルーマニア・ポーランドなど14カ国が加盟を申請していて、21世紀にはさらなる拡大が予想されています。ですから、EUの大量解雇規制法、労働者保護法、フランスの週35時間労働法など、欧州全域に確立している労働のルールは、文字通りの意味で「グローバル」なものです。問題は、「弱肉強食」と「ルールある資本主義」のどちらに未来があるかということです。

歴史的に見るとEUのルールは、第二次世界大戦の悲惨な教訓――非人間的労働とそれによる貧困、あまりの貧富の差は社会も国家関係もゆがめ、戦争につながる。人間らしい労働の実現はそれを防ぐため不可欠である――という教訓に立ってつくられた「世界人権宣言」の流れにそうものです。宣言前文は、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」と高らかにうたい、「人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要である」という理念に基づいて、労働のルールについても2つの条文で明記しています。

第23条 すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な労働条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。第24条 すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する――というものですが、日本はこの条約を批准していますから、国のルールとして守られなければいけないものです。日本はまた、「家庭責任を持つ労働者保護に関する条約」を批准していますから、夫婦、親子をばらばらにする遠距離配転はやってはいけない条約上の義務があるのです。

「国連人権規約」は、「労働条件にかんする権利」として、「すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利」を有することを認めていますが、国連のルールを発展、具体化させたひとつがILO(国際労働機関)のルールです。たとえば、使用者は解雇理由の証拠を示し、証明できなければ違法、無効というものがあります。ドイツ・フランス・イタリアなどいくつもの国では、さらに強力な国内法になっていて、ドイツの「解雇制限法」は、社会的に合理的な理由のない解雇は無効と定め、訴訟が起きたら解決するまで雇用を続けなければいけないことになっています。

EUでは、経済の「グローバル化」と連動して、90年代半ばから「企業の社会的責任」問題の取り組みが活発化しました。この点では日本の政府と大違いですが、フランスでは、解雇制限を求める労働者・国民のたたかいを背景に、ジョスパン首相が、ルールを破った大企業を「野放しの資本主義」だと怒り、「わが国にはルールがある」「民主主義の国に暮らしているのだということがわかっているのか」と発言。「これを規制することこそ国家の(新しい)役割だ」と強調しました。

「もうかっている企業の解雇禁止」の公約を実現するところまでは至っていませんが、昨年12月、「社会現代化法」の一環として、解雇規制をいっそう強化する法律を可決しました。その中には、解雇を回避する企業の努力要件として、週35時間を超える労働時間の短縮・削減も明記されています。日本共産党は、「サービス残業」をなくすだけで90万人の雇用が増えることを明らかにし、賃下げなしの労働時間短縮で雇用を創出することを提案していますが、EUが進めている方向と一致するものです。

資本主義の長期にわたる構造不況、国際競争の波はEU諸国も襲っています。もちろんEUの労働ルールは天から降ってきたものではなく、逆流に対するたたかいによって勝ち取られたものです。最近の例をあげますと、95年、右翼保守派のシラク政権のもとにあったフランスで、国鉄・郵便・電話・学校・病院などの公務員500万人のゼネスト、パリでも10万人のデモ行進がおこなわれました。今年の3月にはローマで300万人を超える大デモがくりひろげられ、参加者は「労働者は企業の奴隷ではない」「解雇規制に手をつけるな」というプラカードを持って大きな声をあげました。

こういうたたかいで勝ち取られたEUの労働のルールは解雇規制だけではありません。労働時間、賃金、パート労働者、派遣労働者、男女平等など、人間が人間らしく働ける環境、営利活動と社会的責任の両立が追求されています。そして、それに関するルールづくりが、企業、政府、自治体、労働組合、NGOなど関係当事者すべての手で社会的に促進されています。

このなかで一昨年3月、イギリスでは「企業の社会的責任担当相」が任命され、フランスでは企業・労働者・労働組合・投資家などの代表が参加した「企業の社会的責任監視所」という法人格をもった機関がつくられて活動しています。デンマークでは「社会問題省」が、衛生と安全、環境保護、雇用創出などで、企業がどの程度責任を果たしているを測定する指標を出し、0〜100まで点数をつけて周知させる役割を果たしています。

ヨーロッパには多くの日本企業が進出していますが、EU諸国で活動するときにはそのルールに従いながら、日本国内ではできないというのでは理屈が通りません。「グローバル化」を口にする資格も疑われるのではないでしょうか。EUに見られる労働のルールは、戦争という悲惨な経験をへて、労働者、国民のたたかいによってつくられてきたものです。歴史の過去から見ても、また、資本主義の未来という角度から見ても、「弱肉強食」の論理は世界では通用しないということを強調して話を次に進めたいと思います。・・・


http://www3.ocn.ne.jp/~jcp-kc/pages/pol5.html#anchor1

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