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(回答先: ハンセン病訴訟:複雑な表情 韓国、台湾の原告ら [毎日新聞] 投稿者 あっしら 日時 2005 年 10 月 25 日 14:39:15)
日本統治時代に、韓国と台湾のハンセン病療養所に強制収容された入所者計142人が、ハンセン病補償法に基づく補償を求めた二つの訴訟の判決が25日、東京地裁であった。台湾訴訟で菅野博之裁判長は、入所者の補償請求を棄却した国の処分は違法として取り消しを命じる原告側勝訴を言い渡した。一方、韓国訴訟では鶴岡稔彦裁判長が、補償請求を棄却した国の処分を適法として、原告側請求を棄却した。争点がほぼ同じだった訴訟の司法判断が大きく割れた。
韓国訴訟の原告は控訴する方針。台湾訴訟については、国が控訴するかどうかが注目される。
韓国訴訟の原告は、朝鮮総督府が1916年に開設した「小鹿島(ソロクト)慈恵医院」(現・小鹿島病院)の入所者117人。台湾訴訟は30年に台湾総督府が開いた「楽生院」(現・楽生療養院)の25人。
ハンセン病補償法は、国籍や居住地を問わず、補償対象者を「国立ハンセン病療養所等に入所していた者」と定義。施設は厚生労働相による厚労省告示に列挙した。しかし、韓国と台湾の両施設は明記されていないため、訴訟ではその入所者が補償対象となるかどうかが争われた。
台湾訴訟の判決は「補償法は広く網羅的にハンセン病の救護・療養施設に入所していた者を救済しようとする特別な立法で、台湾に所在していた施設というだけの理由で補償対象から除外するのは合理的でない」と判断。一方、韓国訴訟は▽法の審議過程で、予算を国内施設入所者に限定して約700億円と見込むなど、国外施設が対象になることが認識されていなかった▽同法は53年制定の「らい予防法」に基づく隔離政策で苦痛を受けた人が対象−−などと指摘、逆の判断を示した。
また、厚労省告示で補償対象と規定された「国立療養所」の解釈について、台湾の施設は、31年施行の旧らい予防法が34年に勅令で台湾でも適用されたことから「国立療養所」と認定。
一方、韓国では旧法が施行されていなかったとして「国立療養所と解釈する余地はない」と判断された。【武本光政】
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判決理由の要旨は26日朝刊に掲載します。
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■解説
◇国は元患者の人権回復を
日本が植民地時代の韓国と台湾に開設したハンセン病療養所を巡る二つの判決は、隔離政策に基づく被害を救済するというハンセン病補償法の「趣旨」をどうとらえるかで、判断が分かれた。隔離政策に植民地政策も加わり、両施設で本土を上回る人権侵害の被害があったのは明らかで、台湾訴訟の判決は被害実態を直視したと言える。一方、韓国訴訟では、法の審議過程で国外施設を認識していなかったことを理由に、補償対象となる施設の範囲を限定した。「木を見て森を見ない判決」との批判は必至だ。
法の成立過程では、海外の施設が補償範囲に含まれるか否かが十分に審議されなかったという問題があったが、この点については、両判決とも認識が一致している。だが、台湾訴訟の判決が、法の平等原則を重視し「(補償対象の国立療養所を列記した)厚生労働省告示を限定解釈するのは合理的ではない」と判断したのに対し、韓国訴訟は、厚労省告示にない以上は補償対象とはならない、という立場を取った。原告側が「国側主張を“丸のみ”し実質判断を避けた」と非難する点だ。
二つの施設を厚労省告示に明記しなかったのは、政府が韓国や台湾だけでなく、旧満州など、戦前統治下にあった地域の施設の入所者から際限なく補償請求が出されることを恐れたためだ。
しかし、第三者機関「ハンセン病問題に関する検証会議」がまとめた報告書によると、戦前の韓国や台湾の施設では、職員による暴力など、本土にない人権侵害が繰り返されている。国は「法解釈が争点」として、この被害実態について最後まで認否を避けたが、その対応は批判を免れないだろう。
韓国、台湾は60年代に強制隔離政策が廃止されたものの、戦前の日本の政策が原因で地域社会に病気への偏見が根強く残っている。戦前に日本が行った政策責任があるのは明確で、国は台湾訴訟の控訴を断念したうえで、海外の元患者の人権回復にも全力を尽くすべきだ。【江刺正嘉】
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■ことば
◇ハンセン病補償法
らい予防法(96年廃止)に基づく国の隔離政策を人権侵害と認めたハンセン病国賠訴訟熊本地裁判決(01年5月)を受け、元患者の被害回復のため01年6月に施行。戦前・戦後の時期や国籍、現在の居住地を問わず、一度でもハンセン病療養所への入所経験があれば補償対象。入所時期に応じて1400万〜800万円が支給され、今年1月1日までに3445人が支給を受けている。
毎日新聞 2005年10月25日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20051025dde001040068000c.html