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(回答先: 庶民の足 警備に限界 『標的化』想定内でも全世界で対策後手 【東京新聞】 投稿者 愚民党 日時 2005 年 7 月 09 日 16:00:55)
意識変えねば防げぬ
地下鉄テロから身は守れるか
英国にとって第二次世界大戦以来の七百人以上の死傷者を出したロンドン同時テロ。狙われた地下鉄は世界最古の歴史を持ち、現地駐在員や家族にとって日常通勤、通学で乗る“山手線”と言える存在だった。網の目のように張り巡らされた路線の警備は難しく、それは日本も同じ。都心の地中を走る動脈で万一の際、身を守る術(すべ)とは。
「9・11の再来だ」
七日朝の事件直後、ロンドンの中心部ピカデリーの飲食店店長のアンディさん(30)は声を震わして叫んだ。「G8(サミット)が始まった日に合わせたテロリストのメッセージなのだろう。米国で起こったことは、まだ終わっていないと言うこと。とにかく怖い」
英国滞在歴八年の市内のすし店で働く日本人女性従業員(28)は「米国に追従するブレア首相がいて、いろんな人種がいる大都市は、いつ狙われてもおかしくないと思っていた」と明かす。「これからもどこではじけても不思議はない。ロシアンルーレットみたいなものだ」
日系旅行会社の幹部(56)は不安にかられながらこうつぶやいた。
「観光業は安全を前提に成り立つ平和産業。打撃は避けられない」
「支局の入ったビルは、テロ現場地域のど真ん中。毎日地下鉄で通っていただけに身の毛もよだつ思いだ」と明かすのは、本紙の沢田敬介前ロンドン特派員(46)だ。
「中心部の地下鉄はサークルラインと呼ばれ東京の山手線と同じ循環線。狙われた地域は、銀行など金融機関が集積する英国経済の心臓部だ。日本で言えば日本橋、大手町、丸ノ内のエリアにあたる」と解説する。
■ロンドンの“山手線”標的
爆弾テロは、この“山手線”に沿って発生。特にキングズクロス、ラッセルスクエア駅近くでは、ロンドン名物の二階建てバスも爆破された。
沢田前特派員は「大英博物館やロンドン大学、ホテルが集まる観光名所。政府にとって最もテロを避けたかった地域では」と分析しながら「特にキングズクロス駅は有名な小説の主人公ハリー・ポッターが魔法学校に行くため列車に乗った駅として知られ、世界中から家族連れが訪れる。テロリストはあらゆる角度から英国のイメージダウンを計算して爆弾を仕掛けたのでは」とみる。
四つある爆発現場から一カ所だけ西に離れたエッジウエアロード駅が狙われている。なぜか。
沢田前特派員は「この辺はイスラム教の信者らが集まる特別な街があり、水たばこが吸えるカフェもある。仮にテロを仕掛けたのが国際テロ組織アルカイダ系の集団なら本来狙わないのだが…」との見方を示しながら、「実は、駅の南側で、最近、ブレア首相が超高級マンションを購入したことが発覚。『引退後を視野に入れて買ったのでは』と騒がれた一件があった。テロ組織が首相の足元に直接揺さぶりを掛けたとみれば合点がいく」と推測する。
そして今回のテロ事件をこう分析する。
「昨年起きたスペインの列車テロ以降、英国はテロ組織に名指しされながら、今年五月の総選挙前にも平穏だった。記者仲間では警戒感を強めていたが、五輪決定とサミットという本当に最も恐れていたタイミングを狙われた」
今回、テロの舞台となったロンドンの地下鉄は、世界最古の地下鉄だ。
日本地下鉄協会によると、日本では江戸時代の一八六三年にパディントン−ファリントン間の六駅六キロが開業。最初は蒸気機関車だった。年間の輸送人員は九億四千七百六十万人に上る。第二次世界大戦時には防空壕(ごう)として使われ、市民をドイツのV2ロケットから守ったという。
「チューブ(管)」と呼ばれるように線路のトンネルが狭く、車両とのスペースがないことから車両にエアコンが取り付けられず、夏の混雑時には蒸し風呂状態になる、ホームと車両のすき間が広いなど、構造的な問題も多いとされる。
■英『チューブ』テロ対策熱心
二〇一二年五輪にむけた国際オリンピック委員会の視察でも、ロンドンは「公共交通機関に課題がある」とされていた。
ただ、イギリスはアメリカと並ぶ対テロ戦争の旗振り役で、テロリストからは狙われる存在だっただけに、地下鉄についてもテロ対策は熱心だった。
公共政策調査会の板橋功氏は「約六千台の監視カメラを駅舎などに設置。一九九五年の地下鉄サリン事件も教訓にしながら、生物化学兵器などによるテロが発生した場合に備え、機材を配備して訓練も行っていた」と解説する。地下鉄車内で化学兵器を使うテロ計画が分かり、警察当局が未然に容疑者を逮捕した事例もあったという。
■不審物見ても届け出ぬ日本
では、日本の地下鉄は大丈夫か。
東京消防庁「地下鉄道火災に関する検討委員会」委員長を務めた早稲田大の長谷見雄二教授(都市防災)は「車両間の移動が禁止されているロンドンの地下鉄と違い、東京の地下鉄には扉もないまま連結されているものもある。一本の筒が走っているのと同じで、爆発や火災が起きた際、被害が拡大しやすい」とし、駅舎の改善についても「古い駅はそう簡単に改造できず、排煙装置も爆発などは想定しておらずうまく作動するか分からない。何よりリストラの流れの中で地下鉄の駅員が減ってきており、いざというとき対応できるのか疑問だ」と指摘する。
長谷見教授によれば、爆発や火災が起きた場合でも走行中の車両内で起きたのか、駅のホームなどで起きたのかで対応の仕方が異なるという。「走行中の車両内で発生した場合、トンネルの幅が狭いため通常の乗降ドアからは出られない。先頭か最後尾の車両まで行き、そこから出るしかない。一方、ホームで発生した場合は階段が煙突状態となる可能性もあり、むしろトンネルに逃げた方がいい場合もある。ケース・バイ・ケースで考えるしかない」
テロを未然に防ぐには乗客側の意識も必要だ。防災システム研究所の山村武彦所長は「イギリスでは地下鉄でたばこを吸う人がいると一般市民が激怒して注意する。一方、電車の中で不審物を見かけたら届け出てくださいとアナウンスがあっても、誰も届け出ようとしないのが今の日本社会だ。不特定多数が出入りする駅、空港では警察がいくら警戒しても完全にテロを防ぐことは不可能で、市民一人一人がセンサーとなり、自分自身で身を守るしかない」と話す。
■同時多発より単発の可能性
前出の板橋氏もこう警告する。「昨年三月にロンドン市長とロンドン警視庁総監が共同会見して『これまではテロを防いできたが、これから先も防げるかは分からない』と述べた。これは市民の協力がなければテロは防げないと広くアピールするためだ。日本ではイスラム過激派などが活動する基盤がないため今回のような同時テロは想定しにくいが、単発のテロはありうる。地下鉄の車内もオフィスの同僚もいわば運命共同体として相互にテロに注意することが求められる」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050709/mng_____tokuho__000.shtml