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(回答先: Re: 「まだ間に合う。憲法は死んでいない」─JANJAN 投稿者 gataro 日時 2005 年 9 月 24 日 00:00:16)
「憲法を決めるのは誰?」の感想文 JANJAN
http://www.janjan.jp/book_review/0509/0509160544/1.php
(衆院選前に書かれたようですから、内容的に時宜を得ない部分もあります)
本書は「表現・報道の危機を考える弁護士の会」の各弁護士の執筆・編集による成果であり、誠に時宜を得たブックレットである。ページ数は少ないが、内容が充実しており、国民の各年齢層で、目に文字のある殆ど総ての方に読んで頂きたい、非常な名著である。以下簡潔に感想を記述する。
はじめに−本書の目的は、改憲の是非を直接的に論ずるのではなく、「国民投票法案」(2004年12月3日に与党協議実務者会議で次の通常国会に提出を合意された「日本国憲法改正国民投票法案」の略)の問題点を広く国民・市民間での検討・理解の促進である。また、積極的に「国民投票法案」の問題点に対する広範な世論形成に資する目的を持っている。
「国民投票法案」はこれまであまり報道がなされず、国民・市民の間でも重大性に気付いていないのが現状である。本書では、詳細に「国民投票法案」の重大な問題点が指摘されている。特に、この「法案」には広範な禁止規定が定められ、不明確な構成要件等で刑罰を科すと言った、国民の基本的権利を侵す重大な欠陥が包含されている事は重大である。
CHAPTER1−私達だって投票したい!
「国民投票法案」では憲法96条で、限定されていないのに、7条で満年齢20歳以上と規定している事に対する批判を行っている。さらに、諸外国並に18歳以上と、引き下げを、日本の普通選挙運動の歴史を始め、自治体での市町村合併等で行われる住民投票が18歳以上(小学校5年生迄と対象拡大のケースもある)と、されている例をあげて議論の補強が行われており、大いに賛成したい内容である。
特に憲法9条2項が大問題などとして「国民投票法案」で採りあげられるのであるから、可能な限り若い年齢層の意見を聞く必要があろう。
その他重要問題としては、公民権停止者や在留外国人の投票権についても、議論を展開しているが、基本的人権の問題等として取り上げるように提案しており判り易い。
CHAPTER2−改憲案の是非について報道できない!議論できない!
ここでは多くの事項に付き触れたいが、最も重要な内容の幾つかを、簡潔に記述する。
「国民投票法案」で最大な問題の一つとして、国民投票運動の定義が不明確である。さらに、多面的に刑事罰を規定している事が判った。これ等によって、本書でも論ずるように、「萎縮的効果」を助長し国民の間で、情報の発信・受信が閉ざされてしまうと確信する。また、国民の知る権利を阻害し、かつ、権力者の権力乱用を抑えるのが困難となる等、極めて危険な事である。
特に公務員と教員に対し、意味の不明確な「地位を利用」という言葉で刑事罰を規定しており、公正で健全な意見を死滅させる惧があろう。その政治意図に付いては、本書では疑問であるとしている。他にも関連し、若干、政治意図に関連して、筆者の意見を最後に述べよう。
勿論、教員である大学教員も処罰の対象になり、専門的に深い研究を長年行ってきた学者達の意見が聞けなくなる。当然、少なくとも投票期間中の研究発表や書籍の発行、さらには講義の内容にも問題が生じ、学ぶ権利も侵害されよう(現在進行中の社会状況から、権力者に有利な情報・学説のみが流通する可能性が大で、真の民意を確実に損う効果を持とう)。
メディアに対する規制は、「国民投票法案」で70条3項に規定され、これも大きな問題を生むであろう。私的立場では犯罪なりとし、公的立場は容認するとの事。権力側の恣意によって如何様にも解釈される条項であって、極めて危険である(今回の衆議院解散後は勿論、選挙公示後の現在に至っても「放送法」違反である、民放各社に対して何等法的規制をしないのは、彼等が極めて権力側に有利な報道姿勢である事による。朝日新聞等が世論操作を、民放同様に現在でも行っており、明白に選挙法違反だが、当局は同じく見逃している社会状況にある)。
CHAPTER3−杞憂でない理由――戒厳令下の日本
本書が、市民団体メンバー3人の2004年2月における逮捕等を挙げて、一般市民の真摯な諸活動にまで、以前に過激派に対して採った捜査方法が用い始められたとの記述には、大問題が存在する。微罪逮捕の頻発にも本書は触れている。かつて、欧米において命懸けで守ってきた、市民の権利に関って来よう。そして、「国民投票法案」の問題のみでなく、国家権力に対する「国民の抵抗権」の問題に関連するものと考える。将に「茶色の朝」が訪れる前夜に、この花の国、日本もなってしまったのか?―数日後(9月11日)の衆議院議員選挙結果が、明確な答えを出してくれるのである。真昼の暗黒時代が始まるのであろうか?―4年余り続いた小泉政権の危険な政治意図につき最後に簡単に纏める。
CHAPTER4−私が決めたとおりには投票できない?!――一括投票か、個別投票か
本書では、レストランでの料理の注文とアナロジーで巧みに、「国民投票法案」の問題点の一つを説明している。要するに憲法条項の問題点毎に分離して投票する事が、必要不可欠な要件である事が判った。ところが現在の所、一括投票になる危険性が残っているとの指摘によって、権力者によって、誤魔化されない様今後も充分注意を払う、必要性の有る事が判った。
おわりに
本書で「憲法が権力に対する制限である」、さらに「自由の砦である」事を真剣に噛締めた上で、「国民投票法案」を絶対に成立させない事を強調している。もしこの法案が可決されるような事が起ったならば、政権側の意図する改憲を防ぐ主要な砦が陥落したのに均しいと筆者も認識している。
最後に、本書の全体と、現在の日本の政治状況を踏まえて、筆者の感想を付け加えて締め括りと致したい。
本書の副題に「戒厳令下の国民投票」とある。これは「はじめ」に触れている国民・市民が主体であるべきに拘らず、その自由な議論の阻害、メデア規制条項、市民の表現規制条項等々が規制されて、懲役刑を含む厳しい罰則が定められ、将にこのサブタイトル通りになる危険性が大である。
それは本年4月(一応、5月連休あけに成立を目指したようだ)、小泉首相が郵政民営化法案を衆議院に提出し、衆院可決、参院否決直後の8月8日衆院解散以来、本日9月7日の現在に至る期間は、日本における政治過程には明瞭な特異性が見られる。現在、小泉政権が政治支配をしている日本が、本書の副題に見られるように、戒厳令下にあるとの感を抱いている人は大勢いるであろう。戦後の日本政治史上かつてない異常な事態にいまや日本は陥っているのである。
各メディアの、多くの方法による、異常な与党擁護と、野党に、中でも民主党に対する嫌がらせが横行している。さらに、明確に与党が圧倒的に優勢であるとする、確率・統計学上、根拠の薄い調査方法に基いた世論調査結果を新聞もTV局、NHKまでも、連日流し続けている。選挙結果が民意を反映したものである、とは決し言い得ない。此れで果たして、現在の日本が民主国家であると、明確に言い得るのであろうか?甚だ疑問である。
後世の史家はきっと、今年の9月11日を持って日本の大きな分岐点であったと記述するであろう。この9月11日の衆院選挙と、それに続く一連の政治過程が吉とでるか凶とでるか、今のところ筆者には明確ではない。しかし、恐るべきメディアの与党に対する支援が継続しているのは事実である。アメリカのウォールストリート・ジャーナル辺りは、この法案の成立を待ち望んでいるとの記事を書いている。その他多くの資料を読むに付けても、いかにアメリカの大金融資本が約350兆円の日本の郵貯・簡保の金を欲しているかが明白である。
小泉政権も日本のメディアも腫れ物に触るように、言明を避けているもので、『年次改革要望書』がある。これは日本の各産業分野等に対してアメリカ政府が、機構改革や規制緩和などの要求事項を通達する文章である。ただの外交文章ではなく、アメリカ政府からの要求である。これは日本の各省庁の各担当部門に割り振られ、この要求の日本での実行状況について、日米の担当官が定期的に会合を持ち、チェックする仕組みになっている。さらに、アメリカの通商代表部は、毎年アメリカ議会から勤務評定を受け、つまり通商代表部としては、日本政府に対して、強力な圧力をかけて、日本政府に実行を求める仕組みに成っている。郵政民営化はその内でも最重要なものと見られている。
小泉政権としてはアメリカの要望を満足する事が政権維持に最善の道であるとの幻想を懐いているのかも知れない。
ともかく、今回の選挙を小泉氏は、郵政民営化法案に対する国民投票であると言う。もし、衆議院選挙に小泉・自民党+公明党が勝った場合、小泉氏がその魔術を及ぼす事の不可能であった参議院が再度否決して、小泉氏の野望を粉砕しない限り、メディアが完全に政権側に取り込まれてしまった今日、なし崩しに、政権側の思うが侭の改憲に衝き進む可能性が大きい。
多分小泉氏や、彼を後ろで操るアメリカ政府は、この衆院選挙を、改憲の予行演習であると思っている事であろう。しかし、今回、衆院解散以来、郵政のみを争点にした小泉氏は、選挙に勝ったと仮定し、全然、争点外の「国民投票法案」の上程に際しては、先ず持ってその信を国民に問う必要がある。
もし、衆院選挙で与党が圧勝し、余勢を駆って憲法改悪をも成功させたならば、日本国には、長い真昼の暗黒時代訪れる可能性大である。今回の郵政民営化法案を先ずもって打ち砕くのが、彼等の恣意的な改憲を阻止する為に、しなくてはならない最重要事であると考えている。
(中村孔治)
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