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(回答先: 米国 国産2例目のBSEに関する調査を完了 フィードバンの有効性に慢心を強める(農業情報研究所) 投稿者 シジミ 日時 2005 年 9 月 02 日 23:10:51)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05090101.htm
05.9.1
産経新聞によると、「ジョハンズ米農務長官は三十日の電話会見で、米国のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の追加対策として、家畜のエサに関する規制を強化し、牛の危険部位を含まない肉骨粉についても、豚や家禽(かきん)類のエサに使用しない方針を明らかにした。今後、一、二カ月中に実施する。」とのことである(http://www.sankei.co.jp/news/evening/01int001.htm)。
ここに言う「電話会見」とは、昨日紹介した2例目BSEに関する調査完了の発表に伴う電話会見のことであろう(米国 国産2例目のBSEに関する調査を完了 フィードバンの有効性に慢心を強める,05.8.31)。それ以外の電話会見があったという情報はない。しかし、会見内容の発表を見るかぎり、ジョハンズ長官はこのような発言をまったくしていない。記者は何を勘違いしたのだろうか。
あるいは、SUNDLOF博士の、「我々は、2004年7月14日に、提案されたルール作りの事前通知(ANPR)において、すべての動物飼料に特定危険部位(SRM)を禁止する飼料ルールの修正を進めるつもりであると発表した。私は、それに関して大きな前進があった、来月中か2ヵ月以内にルールが現れると期待すると報告できる(We announced July 14 of 2004, in an advanced notice of proposed rulemaking, that we intended to move forward with a modification of the feed rule that would prohibit specified risk materials in all animal feeds. I can report that there's been quite a great deal of progress on that, and that we hope that a rule will be forthcoming within the next month or two)」という発言をこのように勘違いしたのだろうか。しかし、そうならば、これも完全な誤解だ。
ここに言うANPRでは、飼料規制に関して、飼料の製造・流通・農場での交叉汚染のリスクを減らすために、@ペットフードも含むすべての動物飼料からSRMを除去する、A飼料製造・輸送の間に飼料と飼料成分を扱い、貯蔵する設備・施設の専用化を義務付ける、B反芻動物飼料へのすべての哺乳動物・家禽(鳥類)蛋白質の使用を禁止し、またダウナーカウや斃死牛のすべての動物飼料への利用を禁止するとされていた(米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか,04.7.10)。従って、ANPRのとおりにルールが改訂されたとしても、「牛の危険部位を含まない肉骨粉」を「豚や家禽(かきん)類のエサに使用」することが禁止されるわけではなく、「豚や家禽(かきん)類のエサに使用」される牛の肉骨粉からSRMが排除されるだけの話だ。
記事は、さらに、
「米国は一昨年十二月に米国初のBSE感染牛が発見された後、牛の脳や脊髄(せきずい)など感染源の恐れのある特定危険部位を、すべての動物の飼料やペットフードに使うことを禁じた。今年六月に二例目のBSE感染牛が見つかったことで、一段と強化する。
日本は、「豚や家禽類のエサが牛のエサに混入してBSEが感染する危険がある」として、米側に肉骨粉の全面禁止措置を求めていたが、これでエサに関する米側のBSE対策がようやく日本と同様になる。」と言う。
これもまったくのデタラメだ。米国は「一昨年十二月に」、人間の食料へのSRM(当時、30ヵ月以上の牛の頭蓋、脳、三叉神経節、眼、脊柱、背根神経節、及びすべての月齢の牛の小腸とされた)の利用を禁止しただけだ。「すべての動物の飼料やペットフードに使うことを禁じた」というのは、完全な嘘っぱちだ。だからこそ、ANPRが出されたのだ。「一昨年十二月に」に「すべての動物の飼料やペットフードに使うことを禁じた」のならば、昨年7月のANPRで、「ペットフードも含むすべての動物飼料からSRMを除去する」ことを提案する必要はまったくない。
「エサに関する米側のBSE対策がようやく日本と同様になる」と言うに至っては笑止の沙汰だ。ANPRがそのまま最終ルールとなったとしても、「肉骨粉の全面禁止措置」となるわけではない。SRMを含まない肉骨粉(哺乳動物蛋白質)は、相変わらず豚や鶏の飼料やペットフードに使えるからだ。
その上に、ANPRがそのまま最終ルールとなることが決まったわけではない。この記者会見で、このルールには何が含まれることになるのか、それはANPRと違うものになるのかという質問が出たが、SUNDLOF博士は、違うとは言えないが、ANPRで発表されたものと矛盾はしないことは分かると思う(I can't say it will be different, but I think you'll find it's consistent with what we announced in the ANPR)と言を左右するだけだった。ANPRが提案するルールがさらに緩められる可能性がある。
アメリカ飼料産業協会(AFIA、the American Feed Industry Association)の今月17日の電子版ニュースレターは、米国食品医薬局(FDA)のクロフォード・コミッショナーが最近、BSE飼料ルールの修正をまもなく提案すると語ったが、その行間を読むと、「FDAが一定のSRMの除去に傾いていることは明らかだが、[そのSRMの]リストは、必ずしも2004年のANPRに含まれたような”長い”ものではない」と述べている(http://www.afia.org/Industry_News/AFIA_Top_News/BSE819.html)。
このニュースレターの記事は、さらに、主要な問題は、死亡牛とダウナーカウをどう扱うかであり、そのどちらか一方を禁止するのか、それとも両方を禁止すのかは、「独立レンダリング業者に劇的な影響を与え、米国農務省のサーベイランス計画にも影響を与えそうだ」、また、「飼料チェーンからの一部高リスク物質の除去は、飼料工場専用化の義務付けを無用にするかもしれない」と述べている。ダウナーカウの利用禁止や飼料工場の専用化は実現しないかもしれない。
大新聞の記者の能力は地に落ちているようだ。上部のチェック能力もお粗末にすぎる。不明を恥じるならば、この記事は削除し、侘びを入れてもらいたい。それとも、意図的にこんな記事を流したのか。だとすれば、もはやこの国のマスコミにつける薬はない。死んでもらうしかない。
ついでに言っておけば、ロイターまでが、「FDAは、ポールトリーリッター[チキンリッター、糞や食べこぼした餌を含む養鶏場廃棄物]、残飯、牛の血液の飼料への利用の一層広範な禁止や狂牛病を拡散させる最高度のリスクをもつと考えられる品目の利用の一層の制限を考えていると語った(FDA has said it was considering a broader ban on use of poultry litter, table scraps and cattle blood in feed as well as more restrictions on use of items thought to carry the highest risk of spreading mad cow)」と伝えるが(After delays, U.S. to toughen mad-cow safeguard,8.30)、これもとんでもない間違いだ。これは、FDAが2004年1月に出したANPR(米国食品医薬局(FDA)、新BSE対策を発表―飼料規制強化、04.1.27)に含まれたもので、養鶏業界等の猛反対で7月提案ではチキンリッターや血液の禁止は落とされた。記者会見でルール変更が何故こんなに遅れているのかと問われたSUNDLOF博士は、2004年1月のANPRでそういう提案をしたが、その後の情勢変化でこの提案を反故にしたと語ったが、この発言の最初の部分だけをとらえて、それが今提案されようとしているかのごとく書いてしまったのだろう。お粗末だ。これでは世界に名だたるロイターの報道でさえ、よほど用心して読まないと、とんでもない間違いを犯すことになりかねない。
関連情報
米国飼料業界、排除特定危険部位は脳と脊髄に限れ FDA交差汚染防止案に反対,04.8.18http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04081801.htm
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