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(回答先: 現地調査でわかった「米国牛肉」はやはり危ない・「米農務省内にBSEの専門家がいない」[フライデー] 投稿者 feel 日時 2005 年 7 月 02 日 10:52:34)
★下記記事中には「表1」、「表2」の2つの表が掲載されています。しかしながら、私の技術不足から表を投稿してうまく表示させることが出来ません。そのため以下の記事では2つの表部分を省いて投稿していますので、この部分についてはオリジナル記事をご確認ください。現在「管理板」で管理人さんに表の投稿方法についてお尋ねしているところです。(シジミ)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/highlight/05070101.htm
05.6.27
米国で国産のBSEのケースが初めて確認された(米国農務省 BSE2例目の出自牛群確認を発表 擬似患畜追跡と感染源調査へ,05.6.30)。それにもかかわらず、農水省は既定方針どおり、検査なし、特定危険部位(SRM)除去を条件に、米国産20ヵ月齢以下の牛の肉・内蔵の輸入再開を急ぐという。早期再開のために、食品安全委員会への諮問は米国の飼料規制の実効性の評価を省いた。昨年10月の日米合意で、「両国は、少数のBSEの確認が市場の閉鎖や科学的根拠のない牛肉貿易パターンの撹乱を生じないような十分に堅固な食品安全システムを設けている」と確認しているから、これは当然のように見える。
しかし、この合意は、「米国は、暫定的期間について一部貿易の再開を可能にする販売プログラム(暫定貿易プログラム)を策定する。USDA農業販売促進局(AMS)が管理する牛肉輸出証明(BEV)プログラムの運用の詳細は、米国と日本の専門家がさらに検討をして案出する」と述べ、、目的は輸入条件緩和であるとはいえ、BEVプログラムは今年7月に見直されるとしていた。そして、「日米両政府担当官によるこの共同の見直しは、OIEとWHOの専門家による科学的再検討を考慮に入れる」と言い、「検討されるべき情報には、上記の共同科学協議により利用可能にされる情報、見直されるべきOIE基準に従っての米国のBSEリスクレベル、米国の強化されたサーベイランス・プログラム、米国飼料規制、米国に設けられている広範なBSE改善措置、BSE検査年齢の区切り、その他の科学的情報が含まれる」としていた(日米牛肉協議合意、BSEリスク評価を無視、政治が独走,04.10.25)。
OIE基準は規制緩和の方向に変わったが、米国産牛のBSE確認で米国のBSEリスクレベルの評価も変わる。最初のBSE確認までの混乱した過程は、米国の強化されたサーベイランス・プログラムに大きな疑問を生じさせた。飼料規制の有効性や、「広範なBSE改善措置」(例えば、擬似患畜の迅速で完全な追跡)の有効性にも改めて疑問が生じている。日米合意に従っても、輸入条件の再検討が要請され、正当化されるのではないか。
そもそも合意された輸入条件自体がOIE基準が定める条件を満たしていない。それは、BSEのケースがなかったか、BSEのすべてのケースが輸入されたもので、完全に廃棄されたことを実証できるリスクを「無視できる」国に対してさえ、「最低8年間、反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすが反芻動物に給餌されていないことを、適切なレベルの監督と監査を通して立証された」という条件を満たすように要求している。米国がリスクを無視できる国であったとしてさえ、飼料規制の有効性が問われねばならないのだ。
まして、今や、米国はリスクを無視できる国ではない。新基準によっても、そうであるためには、最低限、@BSEのケースが存在しなかったか、BSEのどのケースも輸入されたものであり、かつ完全に廃棄されたことが立証されたか、A最後の国産のBSEのケースが7年以上前に報告された、という条件を満たさねばならないからだ。現在の米国は、このどちらの条件も満たさない。
米国は、今や、せいぜい「制御された(contorolled)BSEリスク国」だ。
つまり、「国産のBSEのケースが存在し、第2.3.13.2条の2)から4)までの基準が満たされ、反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすが反芻動物に給餌されなかったことを適切な統制と監査を通して立証できるが、
@)第2.3.13.2条の2)から4)までの基準が7年間にわたって満たされないか、A)反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの給餌に対する統制が8年間にわたり実施されてきたことを証明できないのどちらかであり、かつ、
B)BSEのすべてのケース、及び、病気と診断される前後2年以内に生まれた雌のケースのすべての子、生後1年の間、BSEのケースと一緒に飼育されたすべての牛と、この期間に同一の汚染された可能性のある飼料を食べたことを調査が示すすべての牛、またはこの調査の結果が確定的でない場合にはBSEのケースと同一牛群において、このケースの出生から12ヵ月以内に生まれたすべての牛が、もし国・地域・これら内部の区域で生きていれば永久的に識別され、監督される、と殺されるか死んだときには完全に廃棄される、という条件が満たされる」国である。
ここに、第2.3.13.2条の2)から4)までの基準とは、「@付属書3.8.4に定められる標的集団(BSEに合致する症候を示す牛、へたり牛、死亡牛、通常のと殺牛)内のBSEと合致する症候を示すすべての牛の報告を奨励する獣医、農業者、牛の輸送・販売・と殺に関係する労働者の実施中の啓蒙計画、ABSEと合致する症候を示すすべての牛の義務的通報と調査、Bサーベイランスとモニタリングのシステムの枠内で収集された脳またはその他の組織の承認された試験所での検査のことだ。これらの基準の順守は怪しげでも、制度面では満たされるかもしれない。
しかし、「反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすが反芻動物に給餌されなかったことを適切な統制と監査を通して立証できる」だろうか。上に示された「擬似患畜」が「生きていれば永久的に識別され、監督される、と殺されるか死んだときには完全に廃棄される」という条件が満たされるだろうか。それができなければ、米国はリスクが決定できない最悪のBSEステータスに転落する。
仮に「制御されたリスク」のステータスにとどまったとしても、このような国の牛集団に由来する商品に要求される輸入条件には、このステータスに分類されるための前記の諸条件を満たすことの立証のほかに、
「1)第2.3.13.2条の1)に記されたリスク・アセスメントが歴史的及び既存のリスク要因を確認するために実行されてきたこと、確認されたリスクを管理するための適切な包括的措置が以下に定める期間取られたことを国が立証できる。
2)付属書3.8.4に従うAタイプのサーベイランスが実施されていることを国が実証する」という条件が含まれる。
つまり、米国のリスク・アセスメメントやリスク管理措置(既に述べた擬似患畜の処分、SRM除去などを含む)、サーベイランスのあり方や有効性も問われるのだ。
これらについても、既に様々な疑問が提起されている。サーベイランスについては、米国農務省内部の監査局が昨年の第一次監査報告でその有効性に疑問を提起、現在進行中のの第二次監査では、検査計画の有効性、試験所のパフォーマンス、提出されたサンプルの検査手続、検査結果の報告、第一次監査報告の勧告に対応してUSDAが行った修正などの評価を行なっている。さらに、これも進行中の第三次監査では、SRM禁止や先進的回収肉(AMR)に中枢神経組織が混じることを防止するコントロールのUSDAによる執行が有効に実施されているかどうか、食品安全検査局の疑わしい牛の生前確認手続や検査すべきとされた牛からのサンプル採取手続も評価中という(米国 2例目のBSE確認 出生地・出荷農場も不明 大量の擬似患畜はどこへ,05.6.25)。その結果次第では、要求される輸入条件がすべて満たされないことが「立証」されてしまう可能性さえある。
なお、サーベイランスに関するOIE新基準は、サーベイランスの標的集団を、BSEが発見される可能性が高い順に、BSEと合致する行動的または臨床的兆候を示す30ヵ月齢以上の牛、援助なしでは起立または歩行ができない歩行しない(non-ambulatory)・横臥状態の30ヵ月齢以上の牛(へたり牛)、農場、輸送中、と畜場で死んだ30ヵ月齢以上の牛(死亡牛)と定めた。米国に要求されるAタイプのサーベイランスについては、異なる牛集団の年齢層に応じて定められる収集サンプルのサーベイランス価値を示す点数(表1)に基づいて、サーベイランスは定められた目標点数を満たすことが望ましいとしている。10万頭に最小限1頭(A)、5万頭に最小限1頭(B)のBSEを発見するための目標点数が、国・地域・区域が持つ成牛(24ヵ月齢以上)頭数に応じて定めらた(表2)。
表1
表2
数千万の成牛をもつ国と100万頭を僅かに超す国の目標点数が同じというのは不可解な話しだが、仮に米国の検査対象がすべて4−7歳の「症状牛」(その判定には国によりバラツキがあろう)だとすれば、400頭の検査で済む。2-4歳でも1,153頭だ。すべてが4−7歳の「へたり牛」ならば、18万7500頭で現在の拡大検査計画の対象を下回り、2-4歳ならば75万頭とこれを上回らねばならない。だが、検査対象がどんな・何歳の牛で構成されているのか一切発表がなく、発表しようにも、個体識別不能でできないだろう現状では、こんな数字も無意味だ。米国にとって有利な新基準とはいえ、これさえ達成したかどうか、判定のしようがない。
その上、サーベイランス基準は、各国のサーベイランス戦略のデザインは、サンプルが国の牛群を代表し、生産のタイプや生産地域、文化的にユニークな養畜慣行のあり得る影響などのデモグラフィックな要因の考慮を含めるように保証すべきと言う。どこの農場から出てきたかも分からない牛を拾い集めて検査している現状で、こんなことが「保証」できるはずもない。米国がサーベイランスの有効性を「立証」することだけは、決してありそうもない。少なくとも個体識別システム・トレーサビリティーが確立を見るまでは。
OIE基準は、貿易の利益と安全確保の妥協の産物であり、予防原則の観点からの安全規制を最小限に抑えるものだ。それは決して強制基準ではない(WTOで紛争となった場合にのみ、実際の強制力を持つ)とはいえ、これは最低限の基準として守られるべきものだ。それにも劣る輸入条件は見直しが不可欠だ。日米合意に盛られた見直しを、条件の緩和に向けてではなく、強化に向けて、即刻開始すべきである。
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