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散歩・周遊の議論:忘れていた、「絵画的思考法」の重要性
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投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2005 年 7 月 25 日 18:08:59: SO0fHq1bYvRzo
 

(回答先: ODA ウォッチャーズの投稿の趣旨を御理解しての、散歩・周遊の議論です、ね 投稿者 ODA ウォッチャーズ 日時 2005 年 7 月 25 日 15:12:29)

散歩・周遊の議論:忘れていた、「絵画的思考法」の重要性


ODAウオッチャーズさん、ありがとうございます。また散歩・周遊の議論になるかもしれませんが、ご投稿(というか貴方のHPの文章)を読みながら、うっかり忘れてしまっていたことを思い出してハッとしました。Mathematicsに「絵画的思考法」とでも言えそうなものがどれほど必須であるか、ということです。

例えば、日本人にも欧米人にも、比例の苦手な子供が多くいます。割合(分数で表されるもの、%などの他に速度や角速度などのいわゆるrateを含む)になると、どこの国の子供でも不得意な子が極めて多くなるようです。

私がピカソの絵を見ていて「この人、数学ができないはずはないのだが、どうして算数が0点だったのか?」と不思議に思ったことがあります。

バルセロナには有名なピカソ美術館があり、彼の幼い頃からの数多くの作品を鑑賞することができます。すごいもので、具象画の世界、つまり観察力と描写力のレベルで言うと、17歳から18歳までにはベラスケスの域に達しています。おそらく「オレはもう、これから先に何をすれば良いのか」と悩んだと思いますが、ここからバルセロナとパリでの苦闘の時代が始まり、「青の時代」を経て「アビニョンの娘たち」(このアビニヨンはフランスのそれではなく、バルセロナ旧市街のアビニョー[これはカタルーニャ語で、スペイン語ではアビニョン]通りに昔あった娼婦街の娼婦たちですが)で、全く新しい世界に入ったわけです。

私がピカソの空間構成力のすごさに驚愕したのは、自らが最も尊敬していた大先輩のベラスケスの大作「ラス・メニナス」が表現する空間の再構成をした作品を見たときです。(大きなピカソ全集には載っているかもしれません。)横・高さ・奥行きの空間が、その比例関係を極めて正確に把握することで隅々まで見事に再構成されている。

だから「この人の比例と割合に対する感覚はずば抜けていたのだな」と感じたわけです。しかし彼はやっぱり数が非常に苦手だったようで、これは上の私の投稿でも申しましたが、教育のまずさだったのでしょう。絵画的感覚と数量的感覚が全く結びつかなかった、というか、具象的思考と抽象的思考を関連付けて理解させる方法論を持たない教育のまずさのせいだと考えます。おそらくこの事情はどこの国でも一緒でしょう。

というのは、比例や割合の苦手な子には2種類いて、絵では正確に大きさの表現ができる子と絵でもできない子がいます。絵がそれなりに正確に描ける子は数量と絵との関連をちょっと示唆してやると、非常に理解が早くなります。絵を描いても不正確な子はやはりなかなか困難で、どうしても公式的に訓練で身に付けさせてやるしかなくなります。しかし一般的には絵と結びつけることで苦手は解消できる傾向があるようです。

速度などではもう一段難しいですね。時間のたち方と移動の大きさを両方イメージしなければなりません。そこで、例えば日本では「ミハジ」というのがあります。これは円を描いて水平方向に直径を引き、下の半円を縦に半分に分けて、まず上の半円に「ミ(これは道のりを表す)」、下の各々の4分の1円に「ハ(これは速さの意味)」「ジ(これは時間)」を書き入れ、文章題で与えられた数値、例えば道のりが50メートル、速さが秒速5メートルなら「ミ」に50、「ハ」に5を入れて、50/5=時間という式を作って時間を求めさせるわけです。

驚いたことに、実は英国の中学でも数学の時間に全く同じことを教えています。というか、ひょっとしたら日本が欧州からこのやり方を導入したのかもしれません。これは一種の非常に便利な機械的な技術で、それはそれでよいのですが、やはり私としては少々違和感を感じるわけです。近年ではコンピューターが発達してきたわけですから、シミュレーション画像を使って具体的なイメージ構成力を発達させてそれと数量関係を関連付けて理解させるほうが、Mathematicsの本道にかなっていると思うのです。静止画面ではありませんが、これも一種の絵画的思考法だと思います。

小学生のうちに掛け算九九や計算を十分に訓練することは必須だと思います。(インドなどでは20×20まで覚えるし、優れた子は99×99まで暗記しているようですが。)しかしそれを具象的な感覚と結び付けてやらないとMathematicsにはならないのではないか、と感じます。中学生でも高校生でも文章題、関数や図形の苦手な子が多く、逆に彼らは機械的に身に付けた計算問題にしか手をつけようとしないですね。文章題でも、文章を読みながら絵画的にイメージしていく思考法方が身に付いていないのです。情けない話です。

フラクタル数学を開発したマンデルブロは数値の計算が苦手で、問題の数量関係をいったん図形に置きなおして解いていた、と聞きます。他の、例えばパスカルにしてもフーリエにしてもガロアにしても、たぶん絵画的思考力(実際に手で絵画を上手に描くかどうかは訓練の問題ですから別にして)も同時に発達していたのではないか、と想像します。一般的にラテン系言語の民族は絵画的な思考方法に優れている場合が多いように感じますので。ピカソも、もし幼い頃に優れた指導者に出会っていたら、ひょっとしたら大数学者になっていたかもしれませんね。

石原都知事の発言に関しては具体的なことは存じませんが(特に知りたいとも思いませんが)、マアあの人のことだから想像はつきます。このようなことを理解したうえで、さらに日本の算数・数学教育の問題を分かった上でモノを言うような人じゃないでしょう。しょせんは低質なプロパガンダ的発言ではないか、と想像します。一言で言えば教養が無いですね。小説家としても限界があったんじゃないですか。

では、失礼いたします。

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