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(回答先: 慰霊の旅に波立つ心 両陛下、あすサイパン訪問 【朝日新聞】 投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 26 日 11:52:30)
激戦の二島、生きる サイパン、両陛下を迎えて
サイパン戦で犠牲になった沖縄出身の人たちのために建てられた「おきなわの塔」。花輪や千羽鶴が供えられていた=27日
天皇、皇后両陛下が27日、サイパン島を訪れた。この島に大戦当時住んでいた邦人のうち、半数以上が沖縄の出身者だった。沖縄とサイパン。二つの「激戦の島」を生きた人たちが、両陛下の背中を見つめている。
●サイパン→沖縄 「玉砕」悪夢は今も
「特別なことだと思わないようにしています」。沖縄県うるま市(旧具志川市)の兼島文子さん(73)は、訪問をどう考えていいか、分からない。今でも、死んだ2人の妹や同級生たちが自分の方に歩いてくる夢を見る。
32年に沖縄で生まれ、生後まもなく両親とサイパンへ渡った。本格的な米軍の空襲が始まったのは44年6月11日。2歳の双子の妹を身重の母と1人ずつ背負い、一家7人で山に逃げた。
移動できるのは夜だけだった。すぐに水と食料が手に入らなくなった。洞穴で妹たちが泣くと、銃剣を持った日本兵が「敵に見つかるから殺せ」と迫った。別の日本兵が止めに入った。
米軍に追われるように逃げた島の北端は、地獄だった。おびただしい日本兵の遺体。娘3人を絶壁から突き落とす親、近寄るわが子を海中に沈める親を見た。恐怖は感じなくなっていた。
スーサイドクリフのがけ下、今、日本政府の慰霊碑がある場所で、日本兵からビラを渡された。玉砕命令だった。
「絶壁から飛び込もう」。両親は何度も決心した。だが、そのたびに誰かが止めた。手榴弾(しゅりゅうだん)をもらい、「これで死ねる」と話していると、「妹の家族があっちにいる」と教えられた。
「せめて肉親に会って死のう」。引き返す途中、米軍に見つかった。収容所に入ってすぐ、背負い続けた双子の妹が相次いで死んだ。
日本への送還は46年。母は、埋葬場所を掘り返し、妹たちの遺骨の一部をお守り袋に入れて沖縄に持ち帰った。二度と、この地を踏むまい……。文子さんは思った。
故郷には、何も残っていなかった。苦学をし、夢だった小学校の教員となった。そのかたわら、旧具志川市史の編集に携わり、沖縄戦の聞き取り調査をしたのは、サイパン島での経験があったからだ。
サイパンを再訪する決心がついたのは、戦後40年がたってからだった。沖縄出身者の慰霊碑「おきなわの塔」で手を合わせると、唇が震え、涙が止まらなかった。
戦時中、天皇陛下を崇拝する教育を受けた。戦後の沖縄では、批判的な意見も聞いた。どう考えていいか、今も決めかねている。「今の天皇陛下は神ではなく人間だと思えるし、恨みもないのですが」
●沖縄→サイパン 戦禍を伝えるガイドに
サイパンで戦跡を巡るツアーガイド兼タクシー運転手をしている玉城ヤス子さん(65)は、5歳の時、沖縄戦を体験した。「鉄の暴風」と言われた地上戦を生き延びた両親は、戦後の収容所で相次いで死んだ。
「天皇陛下のために私の家族が死んだわけではないから……。みんなが歓迎しているのだから、それでいい」
45年、米軍の攻撃が始まると、馬小屋や防空壕(ごう)の中に隠れて艦砲射撃を避けた。弟が泣くと口にしゃもじをつっこんで、黙らせた。
その弟は戦後すぐに死んだ。徴兵で体が弱っていた父も収容所で1年後に、母も栄養失調で後を追うように他界した。
70年代、米国人男性と結婚し、サイパンに移住した。十数年前、手のすいている時に「歴史ツアー」のガイドを始めた。
リゾート客や日本の慰霊団をバンザイクリフに連れて行く。戦争の話をすると「遊びに来たのに……」と不満を言う若者がいる。慰霊団の戦争体験を聞くと涙が止まらず、その夜は眠れない。
本格的にガイドを始めたのは5年前。沖縄戦を体験したからこそ、サイパンの戦争を理解し、語れるのだと思う。
両陛下の訪問に思う。「サイパンの人たちは95%は日本の国民に友好的。人を恨まないおおらかさを知ってほしい」
玉城さんは、両陛下が到着した27日も、観光客を連れて戦跡を巡った。(龍沢正之)
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◆キーワード
〈サイパンと沖縄〉 1914年に第1次世界大戦が始まると、日本はサイパン、テニアンなど太平洋諸島のドイツ領を占領。国際連盟発足後、日本の委任統治領となった。日本の会社がサイパン、テニアンでサトウキビの栽培に成功し、製糖事業の島として栄えた。暑さとサトウキビに慣れた沖縄を中心に移民を募集し、多数の沖縄出身者が島に渡った。サイパンには最大時2万5千人以上の在留邦人がいたとされ、6〜7割は沖縄出身者だった。
戦闘による民間人の死者約1万2千人のうち6千人が沖縄出身者だった。
http://www.asahi.com/paper/national.html