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(回答先: Re: 報道の公共性、調査報道とは何かを考えさせる事件 投稿者 南青山 日時 2005 年 3 月 26 日 09:14:38)
http://210.145.168.243/sinboj/%EF%BD%8A-2005/05/0505j0324-00003.htm
〈月間メディア批評〉 信頼できる報道伝達は「謀略」か
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オーマイニュースが5周年
世界最大の独立系インターネット新聞であるオーマイニュースは2月22日夜、ソウルの世宗(セジョン)文化会館で創刊5周年記念式典を開催した。私は海外から唯一人招待され、祝辞を述べた。
会場には市民記者と各界からの参加者を合わせて約600人が集まった。
オ・ヨンホ代表は「韓国を愛する『準備された国民』がいたからこそ、創刊のコンセプトである『全ての市民は記者だ』を実現できた」と述べ、「2005年には市民記者の参画をより多角化し、世界化に力を注ぎたい」と抱負を語った。
盧武鉉(ノムヒョン)大統領と金大中(キムデジュン)元大統領がビデオ・メッセージを寄せた。盧大統領は「これからも韓国の言論界を一層レベルアップさせるのに大きな役割を果たすことを信じている」とあいさつした。金元大統領は「オーマイニュースが成功するとき、韓国の未来も大きな成功に至ることができる」と述べた。
オ代表が著した本の日本語版が3月末、「オーマイニュースの挑戦」(太田出版)という題で出版される。私は同書の長い解説を書いた。
もう一つの安倍氏の疑惑
「開放された進歩主義」をモットーに掲げるオーマイニュースは2月18日午前、「日本のタカ派政治家、安倍晋三の二つの顔−『対北制裁』主張の内幕は−」と題したスクープ記事をアップした。筆者は在日韓国人のルポライター柳在順氏だ。
記事には2枚の写真が付いている。写真説明は、「安倍晋三幹事長(当時)が代理人に対北朝鮮交渉を任せた委任状。右側は安倍幹事長一行の二面外交を批判した朝鮮外務省スポークスマン談話」「安倍幹事長(当時)の代理人井上義行が昨年1月16日に作成した北朝鮮ビザ申請書 富士通産業所属となっている井上氏の訪朝目的は『合営実務協議』と記録されている」だった。
記事は、対朝鮮経済制裁を強く主張している安倍氏が朝鮮を相手に、小泉首相ではなく、「日本の次期首相は間違いなく自分なので拉致被害者家族の日本帰国は小泉首相を通さず次の首相になる自分に任せてくれ」と哀願し、朝鮮側が受け入れれば、「コメと経済援助は要求どおりに聞き入れる」と言ったという事実を写真、文書と共に明らかにした。
一方、講談社発行の「週刊現代」3月12日号も「安倍晋三『北朝鮮への友好$e書』」という見出しで同じ情報源によると見られる記事を掲載した。
この記事によると、安倍氏の代理人、井上氏は現職の国家公務員で、内閣官房の拉致被害者、家族支援室に所属しているという。「週刊現代」は井上氏と安倍氏が並んでいる写真、井上氏が安倍氏の代理人として運んだ文書と井上氏が朝鮮に出したビザ申請書のコピーを載せている。安倍氏にとって致命的な事実だが、ほかのメディアは全く報じていない。完全な報道管制である。
この記事に対して、「週刊新潮」3月19日号は「『安倍潰し』を朝鮮総聯に命じた金正日『ネット謀略』」という見出しで、「週刊現代」を「週刊誌一誌」と仮名にして、朝鮮総聯の甘言に乗って「この奇妙な情報に飛びつき」「北の片棒を担いだ」と非難した。2ページ弱の記事の中に、「謀略」という言葉が6回も出てくる。
「週刊新潮」は、在京キー局の記者の次のようなコメントを引いている。「総聯の金勲国際局部長が外信部の幹部宛てに、日本語訳や画像を添付したメールを送ってきました。同時期に他のテレビや新聞にも一斉に同じメールを送り、取り上げてほしい≠ニ持ちかけていました」。
この記者は、金部長がメディアの朝鮮取材の窓口を務めていることから、「こちらの方が弱い立場にあるので、取り上げてくれると読んだのでしょう」と語っている。また、「この情報は北の謀略です」と重村智計早大教授に言わせている。
「週刊新潮」記事は、安倍氏の二元外交に関する情報について、「大本の情報源が北朝鮮政府であることは間違いない」とも書いている。そうであるならば確認取材が必要ではないか。
「週刊新潮」記事は続けて、「今回の謀略には、実は前段があった」と書いた。英誌「ネイチャー」インターネット版(www.nature.com)が2月、横田めぐみさんの遺骨問題について、DNA鑑定をした吉井富夫帝京大学講師が「分析結果が断定的なものではない」と認めたと報じた際、「総聯はこの記事も翻訳して、各マスコミに送ってきていた」と書いた。
「総聯はこの記事も翻訳して、各マスコミに送ってきていたんです。ただし、細田官房長官が会見で、鑑定に問題はない≠ニ説明したのでどこも取り上げなかったのです」(首相官邸記者)というのだ。
これに対し「週刊現代」は3月19日号で、「安倍晋三『北との二元外交』報道に頬かむり」「『次の総理に阿って大新聞・テレビは沈黙≠フ弱腰」という見出しを掲げて、前号の記事の取材経過を明らかにして、「週刊新潮」記事は「まったくの誤報」と明確に反論した。
安倍番の新聞記者たちは「安倍氏が二元外交の事実を認めないから書けない」と言っているという。同誌編集者は「われわれは2回書いたが、どこもこの問題に触れない。安倍氏担当の新聞記者は安倍氏に不利になることでは取材もできないのだ」と呆れている。
韓国の代表的な通信社「連合ニュース」は3月11日、「専門家は日本の遺骨鑑定を当初から疑問視」という記事を配信した。横田めぐみさんの遺骨鑑定をめぐる信頼性について、韓国の法医学専門家が「ネイチャー」と同じ指摘をしていたと報じた。
日本の政府当局者が言うことを自分で確認もせずに信じてしまうのでは、記者とは言えない。
オーマイニュースは韓国で6番目に影響力のあるメディアである。「ネイチャー」は世界で最も権威のある科学専門誌である。信頼できるメディアの報道を日本語に訳して、ネットで伝達することがなぜ、「謀略」になるのか。
「北朝鮮の言うことは信用できない」という理由で、安倍氏の重大な二元外交疑惑を伝えもしないという姿勢は問題だ。朝日新聞の報道で、安倍氏がNHKの日本軍慰安婦問題を取り上げた番組について、検閲した疑いが濃厚であるが、ほとんどのメディアが安倍氏の行為についてまともな議論を展開していない。
日本の主流メディアは何を恐れているのか。極右政治家を監視するのはジャーナリズムの第一の任務である。安倍氏批判をタブーにしてはならない。
唐突感が否めない朝日
盧武鉉大統領は3月1日、1919年に起きた日本による植民地支配に対する抵抗運動「3.1運動」86周年記念式典で演説し、日本に対して「過去の真実を究明し、真に謝罪、反省し、賠償すべきことは賠償して和解するべきだ。それが世界の歴史清算の普遍的方式だ」と述べた。
大統領は朝鮮による日本人拉致問題について「日本国民の怒りを十分理解する」と同情を示した上で、「日本も、強制徴用から慰安婦問題まで日本支配時代に数千、数万倍の苦痛を受けた我が国民の怒りを理解しなければならない」と強調。「真の自己反省」がなければ「いくら経済力が強く軍備を強化しても隣人の信頼は得られない」と語った。
大統領は65年の日韓条約で日本が経済協力をする代わりに韓国が請求権を放棄した問題に言及し、国民への個人補償問題を前向きに検討する考えを表明した。同時に「日本も法的問題の以前に人類社会の普遍的倫理、隣国間の信頼問題との認識を持ち積極姿勢を示さなければならない」と述べ、日本にも対応を促した。
朝日新聞の3月2日の社説「大統領演説への戸惑い」を読んで、朝日はここまでひどくなったのかと痛感した。朝日系メディアは、朝鮮に対して居丈高になることが多い。朝鮮を属国のように見ている。
社説は「盧武鉉大統領が記念行事で行った演説には唐突感が否めない」「『謝罪』を言い、『賠償』という言葉をいたずらに使うことには、日韓の将来を真剣に考えるわれわれも『戸惑う』」と、「3.1記念式典」での大統領演説に対する「戸惑い」を書き連ねた。
さらに社説は、大統領が朝鮮による日本人拉致問題と日帝の朝鮮支配を並べて論じたことについて次のように論じた。「植民地支配という歴史と北朝鮮による拉致は同じ次元の問題ではない。北朝鮮の対日非難に通ずるかのような物言いは、日韓関係にとって逆効果だ。小泉首相は北朝鮮との過去の清算をめざして2度の訪朝をしたが、交渉の進展を妨げているのはむしろ北朝鮮である。大統領はそこを冷静に見てほしい。北朝鮮問題の解決には、まず日韓の協調である。日本は歴史をもっと見つめなければならないが、韓国がいたずらに違いを強調することも賢明ではない」。
朝日の社説は、「北朝鮮のすりかえ論法に通じる言い方だ。日韓離間工作にも利用されかねない」(3月3日付読売新聞社説)、「日本人拉致問題では日本世論の北朝鮮批判を牽制するような発言さえ出ている。これは明らかに北朝鮮を利するものだ」(同日付産経新聞の「主張」)など反動的な新聞と変わらない。毎日新聞も同様だ。
比較的進歩的な紙面をつくっている東京新聞も3月3日の社説で、「(大統領発言の)『謝罪、賠償』の部分はふに落ちない」と感情的な論評になっている。
そして「とくに両国の為政者、政治家は、未来を見据えて、冷静な言動をするよう努めてほしい」と、韓国側に説教を垂れているのだ。
大統領は人権運動の活動家であり、目先の利害で政策決定をしないと言われる。日帝の過去の侵略と占領に関しては、韓国と朝鮮はほぼ一体である。日本のメディアは南北が融和の道を着実に歩んでいることを認識していない。
島根県議会が3月16日、「竹島の日」条例案を可決したことで、韓国は対日政策の見直しを決めた。
拉致問題と日本の強制占領は確かに次元も罪の重さも違う。日本は40年にわたって、「数万倍の苦痛」を朝鮮民族に与えたのである。
メディアのエリート記者は、「国連安保理常任理事国に入るために憲法を改定して軍隊を正式に持てるようにすべきだ」と考える小泉首相の親友だ。「靖国参拝は中国と韓国がうるさいだけで、国内問題ではない」「アジアカップでの中国人の日本代表へのブーイングは『江沢民の反日教育のせいだ』」「日本だけがなぜいつまでも謝り続けなければならないのか」などと言い放つ日本の若者に歴史を教えるべきだ。日本の軍事大国化への動きに対し、アジア太平洋諸国の側が危機感を強めるのは当然だろう。米軍に基地を提供している日本の政府は、在日米軍基地に核兵器を配置しているかどうかも検査できない。
朝鮮労働党機関紙労働新聞は3月13日付の論評で、「日本は米国への追従外交から脱し、過去を清算してアジア諸国と手を携えるべきだ」と主張、「そうでなければ、日本の常任理事国入りは国連の基本的使命にも背反する」と述べた。
日本のメディアと国民はこの警告に耳を傾けるべきであろう。(浅野健一、同志社大学教授)
[朝鮮新報 2005.3.24]