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「イラクの思い出」 (中丸薫)
http://www.asyura2.com/0502/war68/msg/812.html
投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 26 日 17:08:13: XZP4hFjFHTtWY

(回答先: 「ネオコンが果たした役割」 (中丸薫) 投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 26 日 16:59:19)

《中丸薫のWORLD REPORT》 Vol.54 2003年4月号
http://www.taiyonokai.co.jp/report_54.html


 『イラクの思い出』

 イラク戦争が開戦してからマスコミ取材が増えた。たいていは「実際にお会いになったフセイン大統領の印象は?」とくる。


 「礼儀正しく頭脳明晰。不遇な境遇から身を起こしてトップにのぼり詰めただけあって、カリスマ性もありますし、やはり類まれな政治家ですね。それは閣僚の方々をみてもわかります。私はイラクのすべての閣僚とお会いしましたが、どの方も高潔で博識。アジズ副首相はイラクでは数少ないクリスチャンですし、こういう方たちが長くフセイン政権を支えていることを考えると、フセイン大統領はリーダーとして優れた資質を持っていらっしゃるのだと思います。私はアラブ諸国の王族とも交流があり、その国民の生活もつぶさに見て歩きましたが、イラク国外のアラブ人やパレスチナ人たちも大衆はみな『フセインはアラブの英雄だ』と賞賛するのです。アラブの人たちにとってフセイン大統領はすでに英雄ですし、死んでも英雄。やがて神格化され伝説となるでしょう」

 こんな具合に話をするとたいていの記者はいぶかしがる。「でも彼は残虐な独裁者ではありませんか」と。だが、地政学的に、あるいは民族的、宗教的に複雑な歴史背景を持つ国の政権と言うものは往々にして独裁的なものである。たとえば、アラブ諸国は王族による長期独裁政権が続いている国が多い。そのような国々が安定を保っていられるのは、石油の権益と引き換えに「親米政権」を樹立し、アメリカの軍事力とロビー活動によって守られているからに他ならない。

 「でも、政敵を殺すなどと言うのは民主主義の国ではあり得ないでしょう」I記者はなおも食い下がる。そう思うのは善良な市民だけである。「先進国」においても政敵の暗殺は行われているのだから。ただし、それらは「事故」や「自殺」や「心臓発作」であるケースがほとんどで、政治とは関係のない一般市民にはわかるはずもないのだが。

 政治家とはたくさんの顔を持つものである。国民に向けた柔和な顔、政敵を追い落とす修羅の顔…。だから私も私が感じたフセイン大統領の印象が彼のすべてだとはもちろん思わない。それでも私がフセイン大統領を類まれなリーダーだと思ったのは、彼が政権に就いてから国と国民を見違えるように生き生きとさせたこと、そして彼の語る国家観が石油ではなく、人間の資質を礎とするものだったからである。

 私がフセイン大統領とお会いした時、イラクはイランとの戦争の只中にあった。さぞや国土も国民も憔悴しているだろうと思って空港に降り立ったが、降りて驚いた。それより五年前、フセイン大統領就任前にイラクを訪れたときには、夢も希望もないといわんばかりに重苦しい空気が国中を覆っていたのが、フセイン政権になって四年足らずで活気に満ちた国に変貌していたからである。その時知り合った夫がアメリカ人、妻がアラブ人という夫妻も「アメリカのマスメディアで知っていたイラクの印象と、実際に住んでみた印象はかなり違います。バグダッドは美しい。生活を向上させるという目標に向かって国が一丸となっているためか、国民の顔も輝いているし、とても一体化された社会ですね」と語っていた。

 イラク国民は「われわれは最後まで戦う!」と拳を振り上げる。そう、人間には尊厳がある。その尊厳はどのような暴力でも決して冒すことができない。たとえ命と引き換えにしても人はその尊厳を守ろうとするものである。そう考えると「力の道」による支配がいかに無意味なものかがわかる。思えばイラン・イラク戦争が勃発した理由のひとつには、イランの革命が周辺諸国に流出するのを恐れたアメリカが、イラクに生物化学兵器を含む大量の武器・兵器を供与し、イラクを革命思想の防波堤にしようとしたことがあった。そのことを誰よりも承知しているフセイン大統領は、私が「イランとの戦争はあなたが起こしたのでしょう」と迫っても嫌な顔ひとつせず、イラクの立場を諄々と説いた。自らの利益のために育てた政権が影響力を発揮し始めた途端、「ならず者」に仕立て上げるアメリカ。クルド人を反乱に駆り立てておいて最後は見殺しにしたアメリカ。彼らに正義を説く資格はあるまい。

 最近、ロックフェラーの総帥が国連にあてた書簡が巷に流出して話題になっている。『終わりの始まり』と題されたその書簡には、これから世界は破壊と暴力を根本とする「大量掃討作戦」によって益々混乱し、米・英・中国が崩壊、やがて世界統一政府が樹立される、と記されている。どうやらイラク戦争は序章に過ぎないようだ。だが、そのような悪魔のシナリオを天が許すはずもない。『終わりの始まり』は実は彼ら自身の『終わりの始まり』であることに彼らは気づくべきであろう。

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 ◆交友録◆ サダム・フセイン大統領(一九三七年〜)

 「大変申し訳ないのですが、一五分ほど遅れます」- そう伝えにきたのはフセイン大統領本人だった。このような伝達はどこの国でも側近の役目である。なんて礼儀正しい方 - それが第一印象であった。

 当時イラクはイランとの戦争の只中にあった。マスメディアでは「シオニストがイランを支援している」と度々伝えられていた。

 「宗教集団としてのユダヤ人と、アラブを犠牲にして領土拡大を図る狂信的なシオニストの区別をしなくてはなりません。シオニストはイランとイラクの対立状況をつくり出すのに積極的な役割を果たしています。アメリカにいるシオニストも同様で、彼らのメディアや財界での勢力、議会への圧力、政府活動における役割は相当なものです」

 その語り口も状況分析も、当事国とは思えないほど冷静だった。イラクの将来像も明確だった。

 「イラクの石油が無尽蔵だとは思いませんし、代替エネルギーの開発が進めば石油の価値は下がるでしょう。だから私たちは国の財産は人間そのもの、つまり人間の資質にあると考えます。イラク国民には高いレベルの科学、技術、文化を身につけてもらいたいのです」

 趣味について語るときはふと表情がゆるんだ。

 「国民に尽くすのが私の責任ですから時間はないのですが、時折釣りをします。二時間くらい釣り糸を垂れると頭の中がすっきりします。もっとも魚はあまり釣り針にかかってくれないのですが」

 気がついたら二時間が経っていた。最後に宗教観について尋ねた。

 「宗教は停滞や後退を受け付けない。常に前進、上昇の過程なのです。キリスト教も同様のことをうたっています。私は国家の発展と精神面での信仰が相反するとは思いません。しかし、何世代にも渡って宗教が誤解され、その精神に反した行動がとられてきました。あたかも精神と現実、宗教と開発とが相反するかのように。でも本当は世界のどの宗教も前進を唱えているのです」

 今イラクの地にあるすべての人の安寧と繁栄を心から祈ります。

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