現在地 HOME > 戦争68 > 206.html ★阿修羅♪ |
|
『週刊現代』2005年3月19日号
175p
「捏造」は、記事か鑑定結果か
めぐみさん「遺骨」めぐり大騒動
イギリスの科学雑誌『ネイチャー』に載った一本の記事が、日朝関係に新たな緊張を生んでいる。記事のタイトルは「DNAは拉致問題で対立する日朝間の焦眉の問題」。同誌2月3日号に掲載された。
この記事のなかで、昨年12月に鑑定結果が出て以来、日本政府が一貫して偽
物だと言ってきた横田めぐみさんのものと称する「遺骨」について、鑑定を担
当した帝京大学医学部の吉井富夫講師がインタビューに答えている。吉井氏の
発言の主なポイントは次の4点である。
@ 自分の「偽物」という鑑定結果は断定的なものではない
A 遺骨は、他人の汗などで汚染されていた可能性がある
B 火葬された遺骨の鑑定経験はなく、初めてだった
C すでに遺骨は鑑定のために使い果たし、再鑑定は不可能
これらが事実ならば、日本に対し、北朝鮮が再三反論していることも無視で
きない。
吉井氏は東邦大学理学部出身で、'91年から帝京大医学部の法医学研究室に勤
務している。同研究室には現在、教授・助教授ともおらず、吉井氏がトップ。
厚労省の「戦没者遺骨のDNA鑑定に関する検討会」に参加するなど、政府と
の関係も深い。
すでに日本政府側は細田博之官房長官が会見で、記事発表後に吉井氏から改
めて話を聞いたことを明かした上で、
「『ネイチャー』の記事は捏造されたものだ。吉井講師は『自分が言っていない
ことを書かれた』と言っていた」
と語り、騒動にケリが付いたと言わんばかりだ。
細田発言に対し、記事を書いた『ネイチャー』のデイビッド・シラノスキー
記者が初めて口を開いた。
「捏造なんてするわけがない。結果的に北朝鮮にとって有利な印象の記事にな
ったかもしれないが、私は火葬された骨をどうやってDNA鑑定するのかに科学
的な関心があり、吉井氏に電話して取材を申し込んだだけだ。彼は私の質問に
対し、科学者として論理的に答えてくれた」
そこで、当の吉井氏を取材したところ――。
「政府からも、警察からも、大学からも、この件についてはコメントするなと
止められている。だから話せないんだ」
記事を「捏造」と決めつけておいて、当事者には口止め工作する。こんなこ
とでは、ますます北朝鮮につけこまれるばかりではないか。