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3月7日付・読売社説(1)
[豪イラク増派]「直視すべき自衛隊派遣の問題点」
イラク南部サマワで復興支援活動を続ける自衛隊にとって、心強い存在となるだろう。だが同時に、自衛隊の抱える問題も示している。
オーストラリアが5月から軍隊を増派し、サマワの治安維持任務を引き継ぐ。最終的に、豪州軍450人、英国軍150人の体制になる。豪州軍増派は、小泉首相がハワード豪首相に電話で要請するなど、積極的に動いた結果だ。米英両国も、豪州に働きかけた。
オランダ軍撤収によって治安が悪化すれば、自衛隊の安全を疑問視する声が噴き出す恐れがある。万一、自衛隊に甚大な被害が出れば、小泉政権が厳しい批判にさらされかねない。首相の増派要請の背景にはそうした懸念がうかがえる。
現に、ハワード首相は「自衛隊のための安全確保が増派部隊の第1の任務だ」としている。米英両国には、自衛隊派遣継続の環境を整え、国際社会の協調体制を堅持する狙いもあっただろう。日豪の関係強化は、アジア太平洋地域の安全保障の観点からも望ましい。
それにしても、なぜ、わざわざ豪州軍の増派を働きかけざるを得ないのか。そこに、考えるべき問題点がある。
例えば、武器使用基準の問題だ。国連平和維持活動(PKO)の場合、任務遂行を妨げる行為を排除するための武器使用が認められている。だが、自衛隊は、PKO協力法によって、正当防衛、緊急避難の場合しか使用できない。
自衛隊のイラク派遣の根拠となったイラク復興支援特別措置法も、これを踏襲している。憲法が禁じる「武力行使」に当たる恐れがあるという理由からだ。
しかし、「武力行使」と「武器使用」はまったく異なる問題だ。任務遂行のための武器使用が可能になれば、当然、自衛隊が自らの安全を自分で守る能力は向上する。他国軍の派遣を求める必要性も薄れる。
集団的自衛権の問題もある。豪州に増派を求めながら、豪州軍が攻撃されても集団的自衛権の行使ができないとして、自衛隊が何もしないでいたら、豪州国民はどう思うだろうか。
新防衛計画大綱は国際平和協力活動を国土防衛と並ぶ自衛隊の本来任務と位置づけている。今後、自衛隊の海外派遣を積極的に推進することになるだろう。だが、現状のままでは、今回のようなことを繰り返すことになりかねない。
これでは円滑に国際平和協力活動を行えるかどうか、疑問だ。集団的自衛権の問題は、政府の憲法解釈の変更によって解決しておくべき課題だ。法や政策の不備を放置してはならない。
(2005/3/7/01:42 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050306ig90.htm