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レバノン情勢 シリア軍撤退後の対策も
91年の湾岸戦争時、イラクのフセイン元大統領は、クウェート占領への非難に対し「イスラエルのパレスチナ占領」と「シリアのレバノン占領」はどうなんだ、と開き直った。米軍に協力するシリアが憎くて仕方がなかったのだろう。それから14年、まるで元大統領の声がよみがえったように、今度は米仏などがシリアの「占領」を激しく批判している。
レバノンの現状を「占領下」と呼べるかどうかは疑問だが、この国はシリアの強い影響を受け、独立性に重大な疑問があった。アラブ連盟によると、シリアのアサド大統領は約1万5000人のレバノン駐留軍を撤退させる意向を示したという。撤退の時期や規模は明らかでないが、昨年9月に採択された国連安保理決議に沿う動きである。撤退が早期に具体化するよう期待する。
この「撤退表明」の背景にあるのは、ハリリ前首相爆殺事件である。前首相は親シリア派のラフード大統領と対立しており、シリアの関与を指摘する声が強い。だが、「宗教の博物館」と呼ばれるレバノンではキリスト教とイスラム教各派の思惑が絡み合い、イランやイスラエルの影響力も及ぶ。
例えば02年の元電力相爆殺事件について、レバノン当局はイスラエルによる暗殺と見ている。この国では何が起きても不思議ではない。事件の徹底究明を望みたい。
欧州歴訪中のブッシュ米大統領は、イランの核問題解決とともにシリア軍のレバノン撤退を図る意向を示した。イランとシリアは米政府指定の「テロ支援国」であり、中東で最も米国ににらまれている国々だ。「イラン・シリア二重封じ込め」とも言える政策には、イラクへの介入をけん制するとともに、同盟国イスラエルの安全を図る計算もあるだろう。
だが、米側の思惑はともあれ、レバノンはシリアの圧力から解放されるべきである。70年代半ば、シリア軍はアラブ世界の要請によりレバノンに駐留した。シリアの力なしにレバノン内戦の沈静化は不可能だった。その半面、シリアは敵対者を次々に排除してレバノンの「シリア化」を進めていった。「パクス・シリアーナ」(シリアによる平和)の評価は簡単ではないが、確かなのはシリア軍のレバノン駐留の理由が見えなくなって久しいことだ。
レバノンの内戦状態が実質的に終わったのは、「反シリア解放闘争」を掲げるキリスト教徒のアウン将軍が90年10月、シリア軍機による大統領府爆撃を受けて仏大使館に逃げ込んだ時である。この手荒な軍事作戦にも、米国はほぼ沈黙を守った。内戦終結後もシリア軍駐留が可能だったのは、湾岸戦争で米国に「貸し」をつくったことと無関係ではないだろう。
中東にはイスラエルの占領問題もある。シリア軍のレバノン撤退で地域情勢が一気に好転するとは限らない。とりわけ撤退後の「力の空白」が心配だ。国内各派の対立再燃を避けるには、周到な治安対策を立てておく必要がある。アラブ連盟の出番ではないか。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050225k0000m070148000c.html